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月は、生まれたばかりの地球に火星くらいの大きさの天体がぶつかって、飛び散った破片が集まってできた、と考えられています。太陽ができてから1億年ほど後の出来事です。こういう「惑星どうしが砕け合う現場」は、ほかの若い星のまわりでも起きているはずで、そのときは大量の温かい塵が星の近くに漂うはずです。NASA のスピッツァー宇宙望遠鏡は、そうした星をいくつか見つけ、「極端なデブリ円盤」と名づけていました。理論的には、若い星を見ればいくらでも見つかるはずのものでした。ところが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でまとめて調べてみると、そうではなかった。2026年10月1日の The Astrophysical Journal に出た論文の話です。
ありふれているはずの現場が、1%しかない
星のまわりの円盤には段階があります。生まれてすぐの星はガスの多い原始惑星系円盤に包まれ、そこで惑星が作られます。ガスがなくなると、残った小天体どうしの衝突で出る塵だけの「デブリ円盤」になります。ベガやフォーマルハウトのまわりで知られている冷たい円盤がその代表です。極端なデブリ円盤はその中の変わり種で、太陽系でいえば岩石惑星が回っている距離に、大量の温かい塵が集まっています。
宇宙科学研究所(SSI)の Kate Y. L. Su さんらは、スピッツァーのアーカイブにあった5件に、ウェッブで新たに観測した12件と、スピッツァーの対象を追観測した4件を足して、21件の標本を作りました。中間赤外線の分光で見ると、どの円盤も共通して、ふつうのデブリ円盤より塵の粒が小さく、温かい塵の密度が高く、明るさが不規則に変わります。そして、集めてみて分かったのは、こうした兆候を示す若い星が全体の1%ほどしかないことでした。Su さんは NASA の発表で、この型を本当に理解できるだけの数が初めてそろった、と話しています。
塵の成分が、何がぶつかったかを教える
21件の塵の鉱物組成を調べると、2つのグループに分かれました。シリカ(二酸化ケイ素)に富むものと、乏しいものです。NASA の発表は前者を黒曜石のような火山ガラス、後者をハワイの緑色の砂浜を作るかんらん石に例えています。
シリカに富む円盤は、標本の3分の1ほどを占め、火星サイズの天体どうしが正面からぶつかって岩石のかなりの部分が蒸発するような、高いエネルギーの衝突でできたと解釈できます。こうした円盤は、年齢が3億年より若い星のまわりにしか見つかりませんでした。一方シリカに乏しい円盤は残りの3分の2で、月サイズの天体がかすめるようにぶつかる、より穏やかなかすめ合いに対応します。こちらは星の年齢を問わず現れ、明るさの変動も大きめです。できたばかりの破片が軌道を変えながらさらにぶつかり合っているため、と研究チームは見ています。共著者でコンコリ天文台の Ágnes Kóspál さんは、惑星の卵にあたる小さな天体は小さすぎて直接は見えないので、こうして調べるしかないと話しています。


太陽系の昔と重ねる
この2つのグループは、太陽系の歴史と重ね合わせることができます。シミュレーションでは、地球のような岩石惑星は星が生まれてから数億年のうちにできあがります。シリカに富む円盤が3億年より若い星にしかないことは、この時期に当たります。地球と月を生んだ巨大衝突は太陽ができて約1億年後とされていて、まさにこの枠に入ります。つまりシリカに富む円盤は、よその星で「月ができる瞬間」の名残を見ている可能性があります。
もう一方の、年老いた星にもあるシリカに乏しい円盤は、太陽系でいえば「後期重爆撃」に対応するかもしれません。木星や土星のような巨大惑星が大きく軌道を変え、小天体の軌道をかき乱してぶつかり合いを引き起こしたとされる時期です。古い円盤の明るさの変動が軌道の不安定を映しているなら、この見立てと合います。ただし標本の中でこれを確かめられるほど古い星は3件しかなく、共著者の Attila Moór さんは、古い極端なデブリ円盤にはシリカに富むものは無いはずだ、という予想を今後の観測への宿題として残しています。
標本はまだ増えていく途中で、ウェッブの観測に加えて、ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡や、NASA が最近選んだ遠赤外線のミッション PRIMA でも調べられる予定です。岩石惑星がどう作られ、巨大惑星がどう動いたかは別々の話ではなく一つの物語だ、と Su さんは言います。1%しか見つからない現場を集めることが、その物語の筋を確かめる手段になっています。
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出典
- Su, K. Y. L. et al. (2026) Extreme Debris Disks: Insights into Violent Collisions in Planet Formation and Destruction. The Astrophysical Journal
- NASA: NASA’s Webb Provides Crash Course on Planet-Shattering Collisions(2026年10月1日)
- Universe Today: Webb Observes “Extreme Debris Disks,” Providing a Window into the Early Solar System(2026年10月9日)


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