深さ45km ですでに700℃、90km より深くても800℃。沈み込みの「前半が熱く後半が冷たい」岩がパプアニューギニアで見つかった

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地球の表面を覆うプレートがぶつかると、一方がもう一方の下へ沈み込みます。沈み込む岩は冷たいまま深く運ばれ、周囲の熱い岩にゆっくり温められていく。沈み込み帯の温度の構造は、おおむねそう考えられてきました。ところが、パプアニューギニア東部の島で採れた1個の岩が、その順番とは逆の記録を残していました。深さ45km の時点ですでに予想より熱く、そこから90km より深くまで沈んでも、温度はほとんど上がらなかったのです。ドイツ・ゲッティンゲン大学の Jan Schönig さんらは、この岩の分析結果を Nature Geoscience に報告しました。

440万年前に90km の深さにあった岩

岩が採れたのは、パプアニューギニア東端のダントルカストー諸島にあるグッドイナフ島の露頭です。岩の種類はエクロジャイトという、赤いザクロ石と緑の輝石が目立つ高圧でできる岩で、この地域のものは地球上でもっとも新しい時代に超高圧を経験した岩として知られています。

研究チームは、ザクロ石の結晶の中に、1マイクロメートル以下のコース石(コーサイト)の包有物を見つけました。コース石は石英と同じ成分ですが、深さ90km 以上に相当する高い圧力でしか生じません。つまりこの岩は、少なくとも90km の深さまで沈み込んでいたことになります。一緒に含まれていたジルコンのウラン・鉛年代から、その時期はおよそ440万年前と分かりました。地質の時間感覚では、ごく最近のことです。

浅いところが熱く、深いところが冷たい

岩の鉱物の組み合わせと組織からは、沈み込みの途中でどんな温度と圧力を通ってきたかが読み取れます。その結果が予想外でした。深さ45km までの道のりでは、圧力1GPa あたり約470℃という高い温度勾配で温まっていて、およそ700℃に達していました。ところが、そこから90km 以上の最深部に至るまでに上がった温度は100℃ほどで、最深部でも約800℃です。沈み込みの前半が熱く、後半が冷たい。しかも後半は、鉛直方向で年に60mm を超える速さで沈んでいました。

この順番は、いまの沈み込み帯の熱モデルと食い違います。モデルでは、沈み込む岩は浅いところでは冷たく、深く行くほど周囲に温められて熱くなるはずです。超高圧の変成岩が「冷たい沈み込み」の証拠とされてきたのも、最深部で記録された温度と圧力の組み合わせが、1GPa あたり330℃を下回る低い勾配を示すからでした。今回の岩は、最深部の記録だけを見れば確かに「冷たい沈み込み」です。でも、そこに至る途中は熱かった。最深部の記録だけで沈み込み帯の温度構造を推し量ることには無理がある、というのが著者らの主張です。

擦れ合う熱か、まだ若い沈み込み帯か

なぜ浅いところが熱かったのか。論文は2つの説明を挙げています。ひとつは、プレートどうしが擦れ合う境界で生じる「せん断発熱」です。2枚の板を強く押しつけながらずらすと摩擦で熱が出るのと同じで、浅い部分の岩が圧力のわりに強く温められた可能性があります。もうひとつは、この沈み込み帯が若く、まだ定常状態の低い温度まで冷え切っていなかったという説明です。どちらか一方か、両方が組み合わさっていたのかは、まだ決められません。

浅いところで高い温度勾配が記録される岩はこれまでにもありましたが、浅部から深部への道のりで熱い勾配から冷たい勾配へ切り替わる様子がこれほどはっきり示されたのは初めてだと、ゲッティンゲン大学のリリースは述べています。

1個の岩が問い直すもの

沈み込み帯は地震と火山の舞台であり、二酸化炭素を地球内部へ送り込んで長い時間をかけて気候を安定させる「弁」の役目も担っています。その温度構造は、どの深さで岩が脱水して火山のもとになるマグマができるか、どれだけの炭素が深部へ運ばれるかに直結します。著者らは、深い沈み込みの浅い部分で高い温度勾配が生じることは珍しくないのかもしれない、と提案しています。もしそうなら、過去の沈み込み帯の温度を超高圧変成岩の最深部の記録だけから復元してきたやり方は、見直しが要ることになります。手のひらに乗る大きさの岩の包有物から、プレートの沈み込みという地球規模の現象の見方が動く。そういう研究です。

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