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| 名前 | 肺魚(はいぎょ、lungfish)。肺で空気を吸うことから。グループの学名ディプノイ(Dipnoi)は、ギリシャ語で「二つの呼吸」の意味。えらと肺の両方で呼吸することにちなむ |
| 分類 | 脊椎動物 硬骨魚類 肉鰭類 肺魚類(現生はオーストラリアの1種、南アメリカの1種、アフリカの4種の計6種) |
| 時代 | デボン紀(約4億年前)から現在 |
| 発見地 | 化石は世界各地。代表的な化石の属ディプテルス(Dipterus)は、スコットランド北部のデボン紀中期の湖の地層から出る。現生種はオーストラリア東部クイーンズランド州南東部の川、南アメリカのアマゾン川・パラグアイ川・パラナ川下流の流域、アフリカの熱帯域の川や湖、沼地 |
| 全長 | 最大はアフリカのマーブルハイギョ(Protopterus aethiopicus)で約2m。オーストラリアハイギョ(Neoceratodus forsteri)は約1.5m、ミナミアメリカハイギョ(Lepidosiren paradoxa)は約1.25m |
| 体重 | オーストラリアハイギョで40kg超。マーブルハイギョで最大約17kg |
| 寿命 | オーストラリアハイギョで少なくとも20〜25年。水族館で80年以上生きた個体がいる |
| ゲノムの大きさ | ミナミアメリカハイギョで約910億塩基対(ヒトの約30倍)。これまでに解読された動物のゲノムで最大 |
肺魚は、えらのほかに肺をもち、水面で空気を吸う肉鰭(にくき)類の魚です。デボン紀に現れて各地の水辺に広がり、いまはオーストラリア、南アメリカ、アフリカの淡水に6種が残っています。アフリカの種は、川や沼が干上がると泥の中にもぐり、体を薄い繭で包んで、水が戻るまで何か月も、ときには何年も眠ります。
姿と暮らし
現生の肺魚は、2つの姿に分かれます。オーストラリアハイギョは、大きく硬いうろこに覆われた太い胴と、肉厚の櫂のような胸びれ・腹びれをもちます。背びれ、尾びれ、しりびれは一続きになって、体の後ろ半分を縁取ります。アフリカと南アメリカの5種はウナギのように細長く、うろこは皮膚に埋もれ、胸びれと腹びれは糸のように細くなっています。
口の中には、ふつうの魚のような歯の列はありません。上あごと下あごに、歯が融合してできた板(歯板)があり、貝や甲殻類をかみ砕きます。アフリカの種は貝やカエル、魚のほか、植物の根や種子も食べます。
肺は、ほかの魚の浮き袋と起源を同じくする器官で、喉の奥とつながっています。オーストラリアハイギョの肺は1つ、ほかの5種は左右1対です。オーストラリアハイギョはふだんえらだけで呼吸し、川がよどんで水中の酸素が減ったときに水面へ上がって空気を吸います。アフリカと南アメリカの種は大人になるとえらが小さくなり、呼吸の大部分を空気に頼ります。南アメリカの種は、水面に上がれないと溺れてしまいます。
肺魚は、陸に上がった四足動物にいちばん近い現生の魚です。2021年に解読されたオーストラリアハイギョのゲノムでも、シーラカンスよりも肺魚のほうが四足動物に近いことが確かめられました。このゲノムはヒトの約14倍の大きさがあり、その約9割が繰り返し配列で占められています。2024年に全6種のゲノムが解読されると、ミナミアメリカハイギョのゲノムは約910億塩基対と、さらにその2倍以上ありました。
化石の肺魚は、デボン紀の海や湖に数多くいました。スコットランドのデボン紀中期の湖の地層から出るディプテルスは、二つの背びれをもつ紡錘形の魚で、すでに歯板をそなえています。中生代の地層からは、ケラトドゥス(Ceratodus)の仲間の歯板の化石が各地で見つかります。クイーンズランドの川にすむオーストラリアハイギョは、1870年に、この化石の属と同じ Ceratodus forsteri の名で記載されました。
干上がった沼の泥の中の、生きた繭
アフリカの肺魚がすむ沼や川べりには、乾季になると水が消える場所があります。水が引き始めると、肺魚は柔らかい泥にもぐって体を曲げ、皮膚から大量の粘液を出します。西アフリカの種(Protopterus annectens)では、この粘液が6〜8日で固まり、体を包む茶色く薄い繭になります。繭の中の肺魚は何も食べず、ほとんど動かず、空気だけで呼吸を続けます。
この状態を「夏眠」と呼びます。野生ではふつう7〜8か月、乾燥が長引くと最長で約4年続くとされ、飼育下では7年後に繭から出てきた例が報告されています。体の働きは大きく落ちます。体内で出る有毒なアンモニアは、毒性の低い尿素に変えて体内にためておき、雨が戻って水に浸かると一気に排出します。
繭そのものは、長く「乾いて固まった粘液の膜」と考えられてきました。2021年、ニューメキシコ大学のライアン・ハイムロスとイレーネ・サリナスらは、アフリカの肺魚の一種(Protopterus dolloi)を実験室で夏眠させ、できた繭を顕微鏡と遺伝子の発現解析で調べました。繭の厚さは0.35〜0.9mm。皮膚の表面がはがれては再生することを繰り返してできた何層もの膜で、その中には生きた細胞が詰まっていました。死んでいた細胞は全体の7%ほどしかありません。
繭の中には、体内から移ってきた白血球の一種(顆粒球)も入り込んでいました。顆粒球は自分のDNAを網のように放出して細菌を絡め取る「細胞外トラップ」をつくります。繭の中では、この網に細菌が捕まっていました。研究チームが、DNAを分解する酵素を夏眠中の肺魚の皮膚に吹きつけて網を壊すと、繭の形は保たれていたのに細菌が繭を通り抜けて皮膚に届き、肺魚には皮膚の傷や出血が出て、血液中にも細菌が入りました。チームは、繭は生きた組織で、泥の中の細菌から体を守る働きをもつと結論しています。ただし調べたのは夏眠の最初の2週間で、数年に及ぶ夏眠のあいだ繭がどこまで守り続けるのかは分かっていません。
2024年には、カリフォルニア大学バークレー校のフェルナンダ・パロミノスらが、西アフリカの種で繭を調べた結果をプレプリント(査読前の論文)として公開しました。繭の内側と外側の層が主に生きた細胞でできていることは、ここでも確かめられています。一方で、繭の組織には大腸菌を抑える働きが見られず、どの個体でも2〜3週間ほどで繭の外側にカビが生えました。カビは繭の内側の肺魚の体までは届いていませんでした。繭が生きた組織であることは2つの研究で一致し、その役目が細菌を殺すことなのか、物理的な壁なのかは決着していません。
泥にもぐって乾季をやり過ごす習性は、化石にも残っています。アメリカのテキサス州とオクラホマ州のペルム紀前期の地層からは、垂直に掘られた円筒形の巣穴の跡が多数見つかり、その中には夏眠の姿勢のままの肺魚グナトリザ(Gnathorhiza)の骨が収まっていました。巣穴の内側の空洞は直径1.5〜10cm、長さは最大50cmほどです。一方、現生のオーストラリアハイギョは夏眠ができず、水がなくなると生き延びられません。同じ肺魚でも、泥の中の繭で乾季を越えるのはアフリカの4種で、南アメリカの種は泥の巣穴にこもって代謝を落とします。




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出典
Heimroth, R. D., Casadei, E., Benedicenti, O. et al. (2021). The lungfish cocoon is a living tissue with antimicrobial functions. Science Advances 7, eabj0829. https://doi.org/10.1126/sciadv.abj0829
Palominos, M. F. et al. (2024). The West African lungfish secretes a living cocoon during aestivation with uncertain antimicrobial function. bioRxiv(プレプリント). https://doi.org/10.1101/2024.07.05.602297
Chng, Y. R., Ong, J. L. Y., Ching, B. et al. (2016). Molecular Characterization of Aquaporin 1 and Aquaporin 3 from the Gills of the African Lungfish, Protopterus annectens, and Changes in Their Branchial mRNA Expression Levels and Protein Abundance during Three Phases of Aestivation. Frontiers in Physiology 7, 532. https://doi.org/10.3389/fphys.2016.00532
Hiong, K. C., Ip, Y. K., Wong, W. P. & Chew, S. F. (2013). Differential Gene Expression in the Brain of the African Lungfish, Protopterus annectens, after Six Days or Six Months of Aestivation in Air. PLoS ONE 8, e71205. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0071205
Meyer, A., Schloissnig, S., Franchini, P. et al. (2021). Giant lungfish genome elucidates the conquest of land by vertebrates. Nature 590, 284–289. https://doi.org/10.1038/s41586-021-03198-8
Schartl, M., Woltering, J. M., Irisarri, I. et al. (2024). The genomes of all lungfish inform on genome expansion and tetrapod evolution. Nature 634, 96–103. https://doi.org/10.1038/s41586-024-07830-1
Olson, E. C. & Bolles, K. (1975). Permo-Carboniferous Fresh Water Burrows. Fieldiana: Geology 33(15). https://archive.org/details/permocarbonifero3315olso
Australian Museum. Australian Lungfish, Neoceratodus forsteri (Krefft, 1870). https://australian.museum/learn/animals/fishes/australian-lungfish-neoceratodus-forsteri-krefft-1870/
FishBase. Lepidosiren paradoxa. https://www.fishbase.se/summary/Lepidosiren-paradoxa.html
FishBase. Protopterus aethiopicus. https://www.fishbase.se/summary/Protopterus-aethiopicus.html
FishBase. Neoceratodus forsteri. https://www.fishbase.se/summary/Neoceratodus-forsteri.html


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