【白亜紀の生物】フタバスズキリュウ – 高校生が見つけた首長竜に、学名が付くまで38年かかった

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名前フタバスズキリュウ(双葉鈴木竜)。学名はフタバサウルス・スズキイ(Futabasaurus suzukii)。化石が出た地層「双葉層群」と、発見者の鈴木直(ただし)さんの名字にちなむ
分類爬虫類 首長竜類 エラスモサウルス科(恐竜ではない)
時代白亜紀後期(サントニアン期の前半、約8500万年前)
発見地福島県いわき市大久町。大久川沿いの崖に出ていた、双葉層群玉山層の入間沢部層
全長約6.4〜9.2mとする推定(2006年の記載論文)。首の大部分と尾が失われているため、近い仲間の体つきから見積もった値
見つかった骨1個体の全身の約7割。頭骨の前半と下あご、首の後ろ寄りから腰までの背骨、肋骨、肩と腰の骨、4本のひれ足
標本国立科学博物館(東京・上野)が所蔵。いわき市石炭・化石館などに復元骨格がある

フタバスズキリュウは、白亜紀後期の海にいた首長竜のなかまです。1968年、福島県いわき市で当時高校2年生だった鈴木直さんが化石を見つけました。1970年の最初の報告で「既知の種とは異なる首長竜」とされながら、正式な学名が付いたのは発見から38年後の2006年です。

姿と暮らし

フタバスズキリュウは、首長竜のなかでも首がとくに長いエラスモサウルス科に属します。小さな頭、長い首、平たく幅の広い胴、櫂(かい)のような4本のひれ足、短い尾という体つきで、4本のひれ足を羽ばたくように動かして泳いだと考えられています。ただし、この個体の首は、胴に近い付け根の部分しか残っていません。復元骨格の長い首は、同じ科のほかの首長竜の首の骨の数と長さをもとに補ったものです。

口には細長く尖った歯が並び、大きな歯は根元まで含めて長さ7cmあります。1970年の報告によると、上あごの歯より下あごの歯のほうが大きく、歯の多くは頭骨から外れた状態で見つかりました。

2006年の記載論文は、ほかのエラスモサウルス科と見分ける特徴として、目と鼻の穴のあいだが広いこと、左右の鎖骨をつなぐ骨(間鎖骨)が後ろへ張り出していること、前あしの上腕骨が比較的長いこと、太ももの骨に筋肉が付く大きな跡があることを挙げています。

フタバスズキリュウが暮らしていたのは、浅い海だったとみられています。同じ地層からは三角貝のなかま(アピオトリゴニア)やタマキガイのなかまとみられる二枚貝、陸から流れてきた琥珀が出ています。

骨格のまわりからは、サメ(オドンタスピス属)の歯が採集分だけで十数本見つかりました。歯は背骨の下側、つまり生きていたときの背中の側に集まっていました。骨盤と左の後ろあしは腹側を上に向け、頭骨と右の後ろあしはふつうの向きで見つかりました。この並び方から1970年の報告は、死体が腐っていくあいだに波などで腹側と背側が逆向きに動かされたと推定しています。2006年の記載論文は、骨にサメに襲われたか、死後に食べられた跡があるとしています。

学名が付くまでの38年

双葉層群からは、1926年に首長竜や魚竜のものとされる骨のかけらが報告されていました。しかしその標本は東京の空襲で焼け、その後、この地層から爬虫類の化石の報告はありませんでした。双葉層群を調べていた国立科学博物館の小畠郁生(おばた・いくお)が1967年に発表した論文を、独自に化石を集めていた鈴木さんが読み、小畠に連絡を取ります。1968年の秋、鈴木さんは大久川沿いの崖で、さらに背骨の化石を見つけました。

そこに国立科学博物館の長谷川善和が加わり、3人は十数回に分けて崖を掘り、1個体分の骨格を岩ごと切り出しました。骨は母岩より柔らかくてもろく、一見すると植物の破片と見誤るような状態でした。首の大部分と尾は、川に削られてすでに失われていました。

1970年3月、3人は地質学雑誌に最初の報告を出しました。報告は、頭骨や腰の骨の形が北米のアルザダサウルス(Alzadasaurus)やヒドロテロサウルス(Hydrotherosaurus)に近いとしたうえで、「それらの既知種とは異なった種類の首長竜である」と書いています。それでも学名は付けませんでした。外国の既知の種と比べるには胸の骨格と前あしが必要で、それがまだ見つかっていないため、分類上の位置を決めるには難点がある、という理由でした。報告は、胸と前あしがまだ岩の中に残っているとすれば、背骨の北東側がいちばん有望だとも書いています。

標本は国立科学博物館に収められ、「フタバスズキリュウ」という呼び名だけが広まっていきました。1980年の映画『ドラえもん のび太の恐竜』で、のび太が卵から育てる首長竜ピー助も、このフタバスズキリュウです。日本の白亜紀の首長竜のなかでいちばん骨格がそろっていた標本でしたが、環太平洋のエラスモサウルス科には、比べる相手になる「種まで見分けられる標本」が乏しく、日本国内には比較に使える標本も文献も多くありませんでした。

この標本を記載したのは、アメリカの大学院を経て、カナダで首長竜の研究により博士号を取った佐藤たまきです。佐藤は長谷川、国立科学博物館の真鍋真とともに、2006年5月、イギリスの古生物学誌 Palaeontology にフタバスズキリュウを新属新種として記載しました。記載に使われた標本には、肩の骨格と4本のひれ足がそろっています。そして他の種と見分ける決め手として挙げられた4つの特徴のうち、2つは胸と前あしのもの、つまり間鎖骨の張り出しと上腕骨の長さでした。1970年の報告が、学名を付けるのに足りないとした部分です。

記載論文は、フタバスズキリュウを、北太平洋で種まで見分けられるエラスモサウルス科として最初で、かつ最古の例と位置づけています。2006年は、映画『のび太の恐竜』のリメイク版が公開された年でもありました。

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出典

Sato, T., Hasegawa, Y. & Manabe, M. (2006). A new elasmosaurid plesiosaur from the Upper Cretaceous of Fukushima, Japan. Palaeontology 49(3), 467–484. https://doi.org/10.1111/j.1475-4983.2006.00554.x

小畠郁生・長谷川善和・鈴木直(1970)白亜系双葉層群より首長竜の発見.地質学雑誌 76(3), 161–164. https://doi.org/10.5575/geosoc.76.161

いわきデジタルミュージアム「フタバサウルス・スズキイ(フタバスズキリュウ)」 https://iwaki-museum.com/3d/5/

いわき市石炭・化石館 ほるる「フタバサウルス(フタバスズキリュウ)」 https://www.sekitankasekikan.or.jp/%E6%9C%AA%E5%88%86%E9%A1%9E/3829.html

academist Journal「日本で見つかった首長竜『フタバスズキリュウ』の研究秘話」 https://academist-cf.com/journal/?p=3434

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