夜中に先に動くのは、イヌではなく人だった。ハスキー38匹と飼い主に加速度計を着けたら、同じベッドでなくても動きが連動していた

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米国では成人の半数近くがペットと同じベッドで眠るといいます。イヌと寝たことのある人なら、夜中に立ち上がって円を描いて歩き、どさりと寝直すあの動きに起こされた覚えがあるでしょう。「イヌは人の眠りを乱す」という研究はいくつもあります。ところが、その逆、人のほうがイヌの眠りを乱しているのではないか、と問いを立てた研究はほとんどありませんでした。カナダのトロント大学の人類学者たちが、その逆向きの問いを、人とイヌの両方に動きのセンサーを着けて調べました。論文の題名は「誰が誰を乱しているのか」。2026年10月7日に PLOS One に掲載された、誰でも読めるオープンアクセスの論文です。

38組の人とイヌに、4週間センサーを着けた

参加したのはオンタリオ州南部の飼い主25人と、そのイヌ38匹です。犬種はハスキーとマラミュートに限り、年齢は2〜12歳にそろえました。犬種による活動の差が結果に混ざらないようにするためです。人は利き手でないほうの手首に、イヌはナイロンの首輪に、腕時計のような小さな加速度計を着けて、2021年11月から12月にかけて4週間ほど、1分ごとの動きを記録しました。人の睡眠のデータは777夜分、イヌの夜間活動のデータは1,093夜分です。最後に飼い主は、自分の睡眠の質を自己評価する標準的な質問票にも答えました。

イヌとの寝方は三通りに分かれました。いつも同じベッドで寝る人が4人、ときどきの人が10人、まったく寝ない人が11人です。

一緒に寝ても、睡眠の数字は変わらなかった

まず、測った睡眠の数字のほうです。参加者の睡眠時間は平均6.2時間、横になっていた時間のうち実際に眠っていた割合は約79%でした。この数字に対して、イヌと同じベッドで寝るかどうか、イヌが部屋のどこで寝るか、家にほかのイヌがいるか、ほかの人と寝ているか、年齢や性別は、どれも統計的に意味のある差を生みませんでした。イヌの側も同じで、寝る場所や家族の人数、食事の回数、年齢や体重は、夜間の活動量を変えていません。「イヌと寝ると睡眠が削られる」という結果は、少なくともこの38組の加速度計からは出てこなかったことになります。

ただ、一つだけ差が出た項目があります。家に複数のイヌがいる人は、質問票で自分の睡眠の質を低く評価していました。センサーで測った睡眠時間や効率は変わっていないのに、本人の感じ方だけが悪くなっていたのです。測った眠りと感じた眠りが食い違う、という結果は、睡眠の研究でよく顔を出すものだと論文は書いています。

先に動くのは、人のほうが多かった

本題はここからです。人とイヌの夜の動きを時間を追って並べると、2つは連動していました。片方の夜間の活動量が多いと、もう片方も多い。効果の大きさは小さいものの、統計的にはっきりした相関です。

そこで、どちらが先に動くのかを調べました。片方の動きから5分以内にもう片方が動く、という時間のずれを組ごとに探す方法です。データのそろった36組のうち22組、61%で、こうした連動が見つかりました。その22組の内訳は、人が先に動いてイヌが続く組が10組(45%)、同じ1分のうちに両方が動く組が8組(36%)、イヌが先に動いて人が続く組が4組(18%)です。寝床を共にしていない組でも、この連動は見られました。

「イヌに起こされる」という印象とは反対に、先に動いているのは人のほうが多かった、というのがこの研究の答えです。著者の一人、Lavania Nagendran さんは、人とイヌは空間と生活の習慣を分け合っていて、たいていは人のほうがイヌの習慣を作っている、だから夜のあいだも互いに同調しているのだと ScienceAlert に話しています。

とはいえ、「誰が誰を乱しているのか」の答えは一方向ではありません。人が先の組が多いとはいえ、イヌが先の組もあり、同じ1分のうちに動く組は、1分という記録の区切りではどちらが先か決められません。両者が互いの夜の活動に影響している、というのが論文の結論で、著者たちはそれを人とイヌの「切り離せない、互いに向き合った関係」と表現しています。イヌと人は1万5,000年以上を一緒に暮らしてきました。眠りと目覚めの周期は種として違うのに、夜のあいだも互いの合図を読んでいるわけです。

小さな研究で分かること

論文は自分の限界を細かく挙げています。参加者はオンタリオ州南部の25人で、女性のほうが多く、記録した時期は新型コロナの行動制限の最中でした。生活の時間割が普段と違っていた可能性があります。犬種は2つだけで、ほかの犬種にそのまま当てはまるとは限りません。家の中のほかの人の動きは記録されておらず、イヌの動きがわずかでもあれば「活動中」と数えたので、活動量は多めに出ているかもしれません。何が動きのきっかけだったかは、観察していないので分かりません。

それでも、イヌの側から夜を測った研究はこれが数少ない例です。「イヌが眠りを乱す」と感じたとき、その夜に最初に寝返ったのは自分だったかもしれない。この研究が差し出すのは、そういう見方の切り替えです。研究の資金はカナダ自然科学・工学研究会議の助成で、資金提供者は研究の内容に関わっていません。

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