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肝臓に脂肪がたまる「脂肪肝」は、いまは代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)という名前で呼ばれています。以前の非アルコール性脂肪肝(NAFLD)とほぼ同じ病気です。世界の人口の約3割、米国では38%がこれに当たるとされ、ありふれた状態である一方、人によって進み方がまるで違います。何十年も変わらない人もいれば、肝臓が硬くなる線維化や肝硬変、肝がんに進む人もいて、心臓病や腎臓病との結びつきも強い。これだけ幅のある状態を1つの病名でまとめていることが、治療の計画を立てにくくしてきました。
米国のメイヨークリニックとバージニア工科大学の Tahmina Sultana Priya と Shulan Tian らの研究グループは、MASLD を5つの型に分けられることを、診療記録と遺伝子データをつないだ解析で示しました。論文は2026年9月2日に Nature Communications に載っています。
13の項目で、1,532人を分ける
使ったのは、メイヨークリニックのバイオバンクに登録された患者の電子カルテと遺伝子の情報です。MASLD と診断された人の中から、必要な項目がそろっている2,042人を取り出し、その75%にあたる1,532人を分類を作るための集団にしました。分類に使った項目は13個で、性別、BMI(体格指数)、肝臓の酵素である ALT・AST・ALP、善玉コレステロールの HDL、肥満、高脂血症、メタボリック症候群、高血圧、うつ病、片頭痛、腎臓病です。
分け方には潜在クラス分析という統計の方法を使いました。あらかじめ「こういう型があるはず」と決めるのではなく、項目の組み合わせの偏りから、データの中に隠れているグループを探す方法です。グループの数を変えながら当てはまりの良さを比べたところ、5つに分けたときがもっとも適切でした。
分類が偶然の産物でないことを確かめるため、残りの25%の510人と、別の研究で集められた2,560人(Tapestry 研究)にも同じ分け方を当てました。すると86〜88%、80〜82%の精度で同じ5つの群に振り分けられ、各群の特徴も再現されました。

5つの群の顔つき
5つの群は、研究グループが C1 から C5 と呼んでいます。いちばん大きい C1(30.5%)は平均74歳と高齢で、BMI は平均27.8と肥満には当たらず、肝臓の酵素の値はふつうです。それでも高脂血症の人が7割を超え、心臓病の人が6割近くいて、2型糖尿病の遺伝的リスクが高い人の割合がもっとも多い群でした。肥満ではないのに代謝の問題を抱えた群、という位置づけです。
C2(26.8%)は男性が多く、HbA1c(血糖の指標)と中性脂肪が高く、腎臓病が35.6%、睡眠時無呼吸が73.4%、心臓病が68%と、心臓と腎臓の合併症が重い群です。C3(24.1%)は女性が多く、BMI が高く、肥満の遺伝的リスクも高い。うつ病などの気分障害が多く、片頭痛や変形性関節症、胃食道逆流症も目立ちました。
残る2つは小さい群です。C4(9.1%)は若い人が多く、メタボリック症候群や糖尿病はもっとも少なく、ALT も低い。一見いちばん軽そうな群ですが、MASLD の多遺伝子リスクが高い人が集まっていました。C5(9.5%)は ALT と AST が対照群の4〜5倍と肝臓の障害が目立ち、MASLD の遺伝的リスクが5群でもっとも高く、肝臓の硬さの測定でも線維化や肝硬変の範囲にある人がいちばん多い群でした。
いちばん「軽い」群が、肝臓ではいちばん重かった
研究グループは、各群の患者をその後10年まで追い、どんな病気が増えたかを比べました。ここで目を引くのが C4 です。心臓の虚血性疾患も、急性腎不全も、睡眠時無呼吸も、うつ病も、C4 は5群の中でいちばん少なかった。ところが肝硬変に進むリスクは5群でいちばん高く、線維化も2番目に高く、肝移植を受けた割合はもっとも多かったのです。
代謝の面では健康に見える人たちが、肝臓だけは重い経過をたどる。研究グループは、この群に TM6SF2 と MBOAT7 という遺伝子のリスク型が多く、HSD17B13 という遺伝子の守り型が少ないことを挙げ、こうした遺伝子の組み合わせが肝臓の経過を押しているのではないかと見ています。「代謝が整っていれば肝臓も大丈夫」とは言えない群がある、ということです。
ほかの群にも、それぞれの経過がありました。C5 は脂肪肝炎(MASH)に進むリスクが C1 の2.2倍、急性腎不全が2.1倍、線維化が2.1倍と、肝臓と腎臓の両方で重い。C2 は睡眠時無呼吸が2.6倍で心臓の病気も多い。C3 は肝がんのリスクが C1 の3分の1ほどと低い代わりに、うつ病が1.9倍、睡眠時無呼吸が2.5倍でした。同じ MASLD でも、気をつけるべき先が群ごとに違っていたことになります。

分類の先にあるもの
研究グループの Eric Klee は ScienceAlert の取材に、複雑な病気の中から意味のある部分集団を系統的に見つける方法が見えてきた、と話しています。群ごとに進み方が違うなら、どの検査をいつ受けるべきか、どの薬が効きやすいかも群ごとに変わる可能性があり、論文はそこに「個別化した治療」の余地があると書いています。
ただし、これはメイヨークリニックという一つの医療機関の、比較的高齢で米国中西部に偏った集団のデータから出た分類です。別の国や人種構成の集団でも同じ5つに分かれるのか、群ごとに治療を変えると本当に経過が変わるのかは、まだ確かめられていません。研究グループ自身も、より大きく多様な集団での検証が要ると述べています。脂肪肝と言われた人がこの記事を読んで自分の群を当てられるものでもありません。それでも、「脂肪肝」という一つの言葉の下に、少なくとも5通りの病気の進み方が隠れていた、という知見は、この病気の見方を変えるものだと思います。
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出典
- Tahmina Sultana Priya, Huihuang Yan, Kirk J. Wangensteen et al., “Subtyping metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease using electronic health record-linked genomic cohorts reveals diverse etiologies and progression”, Nature Communications(2026年9月2日):https://doi.org/10.1038/s41467-026-77410-6
- ScienceAlert “Common Liver Disease May Actually Have 5 Distinct Types With Different Health Risks”(2026年10月24日、David Nield):https://www.sciencealert.com/common-liver-disease-may-actually-have-5-distinct-types-with-different-health-risks


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