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| 名前 | ティタノコリス・ガイネシ(Titanokorys gainesi)。ギリシャ神話の巨人ティタンと、ギリシャ語の「兜」を合わせた名前。種名は、化石の新しい産地の発見に関わった地質学者ロバート・ゲインズにちなむ |
| 分類 | 節足動物の初期の系統 ラディオドンタ類 フルディア科 |
| 時代 | カンブリア紀中期(約5億600万年前) |
| 発見地 | カナダ・ブリティッシュコロンビア州、クートニー国立公園のマーブル・キャニオン(バージェス頁岩) |
| 全長 | 約50cm(推定。頭の甲羅の大きさと、近縁種の体の比率から計算) |
| 頭の甲羅の長さ | 最大約27cm(中央の甲羅1枚の長さ) |
ティタノコリスは、カンブリア紀の海にいたラディオドンタ類のなかまです。アノマロカリスの親戚にあたり、全長約50cmと推定されています。動物のほとんどが指先ほどの大きさだった時代に、カンブリア紀のフルディア科としては、知られているなかで最大です。体の大部分を平たい巨大な頭の甲羅が覆い、記載した研究者は「泳ぐ頭とほとんど変わらない」と表現しています。
姿と暮らし
ラディオドンタ類は、エビやカニ、昆虫などの節足動物につながる系統の初期のなかまです。頭の前に一対の大きな付属肢を持ち、その付け根の下側に、歯の並んだ板が輪になった口があります。胴体の両脇には、泳ぐためのひれが並びます。
フルディア科は、そのなかでも頭が特に長いグループです。頭は3枚の甲羅で覆われていて、背中側の中央に1枚、左右に1枚ずつがあります。ティタノコリスの中央の甲羅は、幅の広い卵形で、前の端にとげが1本、後ろの両角に短い突起があります。これまでに見つかった最大の中央の甲羅は長さ約27cmです。甲羅が平たく横に広いことから、海底のすぐ上をゆっくり泳いでいたと考えられています。
頭の前の付属肢は、短い節が並んだ柄から、長い枝が5本、内側へ曲がって伸びています。それぞれの枝には、細長いとげがびっしりと並びます。記載したロイヤル・オンタリオ博物館のジャン=ベルナール・キャロンは、これを「熊手を何本も重ねたよう」と表現しました。この熊手で海底の泥をすくってふるい、泥の中や表面にいる小さな動物をこし取って口に運んでいたというのが現在の見方です。キャロンは、大きな甲羅が泥をかき分ける鋤のような役目をした可能性にも触れています。
化石が出るマーブル・キャニオンは、1909年に見つかった有名なバージェス頁岩の採掘場から約40km離れた場所で、2012年に新しく見つかった産地です。ここでは、同じフルディア科で、より小さく、ずっと数の多いカンブロラスターが同じ地層の面から見つかります。2種の付属肢はほとんど見分けがつかないほど似ていて、同じ海底で同じような獲物を取り合っていた可能性があります。ティタノコリスは、より大きな獲物を狙うことで競争を避けていたとする見方もあります。
「泳ぐ頭」が見せた、もう一つのラディオドンタ像
ラディオドンタ類の代表とされてきたアノマロカリスは、流線形の体で泳ぎ回り、とげのある付属肢で獲物を捕らえる頂点の捕食者として描かれてきました。ラディオドンタ類といえば、長いあいだこの「泳ぐ狩人」の姿が基本でした。
この見方を変えたのが、2010年代以降に詳しく分かってきたフルディア科です。2019年にマーブル・キャニオンから記載されたカンブロラスターは、保存のよい化石が数多く見つかり、馬蹄形の巨大な甲羅が頭から胴の前半まで覆い、胴は短く、付属肢が熊手の形をしていることがはっきりしました。泳ぎ回るより海底に張りつき、泥をふるって食べる動物だったことになります。
マーブル・キャニオンの調査では、カンブロラスターによく似た、ずっと大きな甲羅も見つかっていました。研究者たちは当初これをカンブロラスターの大きな個体と考え、「母艦」というあだ名で呼んでいたといいます。調べると甲羅の形が違い、2021年9月、トロント大学のジョゼフ・モイシュクとキャロンは、12点の標本をもとに新しい属と種、ティタノコリスとして記載しました。基準になった標本は、脱皮した殻の集まりとみられています。
見つかっているのは甲羅と付属肢、口の板で、胴の化石はありません。全長約50cmという推定は、最大の甲羅の大きさを、全身の分かっているカンブロラスターの体の比率に当てはめて出したものです。カンブロラスターと同じく、頭が体の大部分を占めていたことが前提になっています。モイシュクはこの比率について、「頭が体に比べてあまりに長く、泳ぐ頭とほとんど変わらない」と述べています。
この記載では、フルディア科の甲羅の形の比較も行われました。その結果、甲羅の形は種ごとに大きく違う一方で、形が似ていても食べ方が同じとは限らず、甲羅の形から暮らし方を決めることはできないとされています。ティタノコリスとカンブロラスターは、甲羅の形が違っていても、ほぼ同じ熊手を持っていました。カンブリア紀の海には、アノマロカリスのような泳ぐ狩人と並んで、巨大な頭で海底を探る大型の動物が何種もいたことになります。




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出典
Caron, J.-B. & Moysiuk, J. (2021). A giant nektobenthic radiodont from the Burgess Shale and the significance of hurdiid carapace diversity. Royal Society Open Science 8, 210664. https://doi.org/10.1098/rsos.210664
Moysiuk, J. & Caron, J.-B. (2019). A new hurdiid radiodont from the Burgess Shale evinces the exploitation of Cambrian infaunal food sources. Proceedings of the Royal Society B 286, 20191079. https://doi.org/10.1098/rspb.2019.1079
Caron, J.-B. et al. (2014). A new phyllopod bed-like assemblage from the Burgess Shale of the Canadian Rockies. Nature Communications 5, 3210. https://doi.org/10.1038/ncomms4210
Royal Ontario Museum (2021年9月8日). Massive new animal species discovered in half-billion-year-old Burgess Shale. https://www.rom.on.ca/news-releases/massive-new-animal-species-discovered-half-billion-year-old-burgess-shale


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