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| 名前 | クラウディナ(Cloudina。地質学者プレストン・クラウドにちなむ。基準種はクラウディナ・ハートマンナエ Cloudina hartmannae) |
| 分類 | クラウディナ科(所属する門は未確定。左右相称動物とする説が有力) |
| 時代 | エディアカラ紀末(約5億5000万〜5億3900万年前) |
| 発見地 | ナミビア(ナマ層群)のほか、中国、ブラジル、スペイン、オマーン、カナダ、アメリカなど南極以外の全大陸 |
| 大きさ | 管の太さ0.3〜6.5ミリ、長さ1.5ミリ〜15センチ。多くは長さ1〜2センチほど |
クラウディナは、エディアカラ紀の終わりごろの浅い海にいた、細い管の中で暮らす動物です。炭酸カルシウムでできた管は、動物が自分の体で鉱物を作った最古級の例で、いわば地球で最初の「殻」にあたります。そしてその殻には、何者かに丸くかじられた穴の開いた化石が残っています。
姿と暮らし
化石として残っているのは管だけです。管は円錐形の部品を次々に重ねてできていて、漏斗を何個も上に積み上げたような構造をしています。動物は一番上の漏斗の中に体を入れ、成長するたびに新しい漏斗を上に足していったと考えられています。管の壁はごく薄く、厚さは0.01ミリから0.05ミリほどしかありません。材質は方解石かアラゴナイトで、生きているあいだに体が分泌した有機物の層を土台にして石灰化していたことが分かっています。
管の主はどんな生き物だったのか、長いあいだ手がかりがありませんでした。管の形だけを根拠に、ゴカイに近い環形動物とする説、サンゴやイソギンチャクに近い刺胞動物とする説などが並び立っていました。2020年に、アメリカ・ネバダ州の地層から出たクラウディナに近い管の化石をCTで調べた研究が、管の内側に細長い筒状の構造が残っていることを報告しました。研究チームはこれを口から肛門まで一本につながった消化管と解釈し、クラウディナの仲間を左右相称動物、それも環形動物に近いものと位置づけています。この解釈が正しければ、消化管の化石としても最古の記録になります。
クラウディナが暮らしていたのは、光が届く浅い海の炭酸塩の海底です。同じ地層からは、酒杯のような形のナマカラトゥスや、板状の骨格を作るナマポイキアといった、やはり石灰質の殻を持つ生き物が一緒に見つかります。海底の微生物マットの上に密集して立っていた場所もあり、ナミビアでは微生物が作った礁の隙間を埋めるように大量に産出します。かつてはクラウディナ自身が礁を築いたとする説が出ましたが、2018年に岩石を薄く削っては撮影する方法で密集部を立体復元した研究は、管どうしがつながっておらず、流されて集まった死骸の吹きだまりだったと結論づけています。
殻に開いた丸い穴
1992年、スウェーデンのステファン・ベングトソンと中国の趙岳は、中国・陝西省の地層から取り出した500本あまりのクラウディナの管を調べ、そのうち2.7パーセントに直径0.04〜0.4ミリの丸い穴が開いていることを報告しました。穴は縁がきれいな円形で、割れや溶けた跡とは違います。しかも穴の大きさは管の太さに比例していました。小さな管には小さな穴、大きな管には大きな穴が開いていたということで、穴を開けた側が相手の大きさを見て狙いを定めていたことになります。二人はこれを殻に穴を開けて中身を食べる捕食の跡だと解釈し、化石記録に残る最古の捕食の証拠として発表しました。
2003年には同じ陝西省の別の地点から、より多くの標本が報告されました。ここでは調べた約100本のクラウディナのうち5本に1本近い割合で直径0.015〜0.085ミリの穴が開いており、しかも穴の位置は管の開口部からほぼ一定の距離にそろっていました。一方、同じ地層から一緒に出る別の管状生物シノツブライトには、穴がまったく開いていませんでした。獲物の種類まで選んでいたことになり、報告した研究者はシノツブライトの側に有機質の覆いや毒のような防御があった可能性を挙げています。穴を開けた張本人の化石はまだ見つかっていません。現生の巻貝が同じように貝殻に穴を開けて中身を食べる習性を持つことから、それに似た軟体動物ではないかとする案がありますが、決め手はありません。
この発見が注目されたのは、穴が開いていた時期のためです。動物が硬い殻を持ちはじめた時期と、その殻を破る捕食者が現れた時期が、同じ地層の中で重なっていました。守る側の殻が先にあって、そこへ破る側が追いついたのか、逆に食べられる圧力があったからこそ殻を持つ動物が生き残ったのかは、化石からは決められません。ただ、この時代の直後にあたるカンブリア紀には、殻や棘を持つ動物が一斉に現れます。クラウディナの穴は、その動きが始まる前の海に、すでに食う側と食われる側のやりとりがあったことを示す、いまのところ最も古い痕跡です。
クラウディナはカンブリア紀に入ると姿を消し、地層の中でこの管が見つかる範囲がエディアカラ紀の終わりを区切る目印として使われています。


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出典
Germs, G. J. B. (1972). New shelly fossils from Nama Group, South West Africa. American Journal of Science.
https://doi.org/10.2475/ajs.272.8.752
Bengtson, S. & Zhao, Y. (1992). Predatorial borings in late Precambrian mineralized exoskeletons. Science.
https://doi.org/10.1126/science.257.5068.367
Hua, H., Pratt, B. R. & Zhang, L.-Y. (2003). Borings in Cloudina shells: Complex predator-prey dynamics in the terminal Neoproterozoic. Palaios.
Palaios(BioOne)の掲載ページ
Mehra, A. & Maloof, A. (2018). Multiscale approach reveals that Cloudina aggregates are detritus and not in situ reef constructions. PNAS.
https://doi.org/10.1073/pnas.1719911115
Schiffbauer, J. D. et al. (2020). Discovery of bilaterian-type through-guts in cloudinomorphs from the terminal Ediacaran Period. Nature Communications.
https://doi.org/10.1038/s41467-019-13882-z


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