【石炭紀の生物】メガラクネ – 25年間「史上最大のクモ」とされた化石は、ウミサソリだった

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名前メガラクネ。学名はメガラクネ・セルヴィネイ(Megarachne servinei)。属名はギリシャ語で「大きなクモ」の意味
分類節足動物 鋏角類 ウミサソリ類(広翼類)。スコットランドのウッドワードプテルスと同じ科とされる(クモではない)
時代石炭紀の終わりごろ(約3億年前)。地層の年代はペルム紀のはじめにかかる可能性もある
発見地アルゼンチン・サンルイス州。バホ・デ・ベリス層のパジェロ部層
全長約54cm(2005年の再研究の復元による)。頭胸部を覆う甲羅の長さは約17cm
見つかった化石2点。1980年に記載された標本(甲羅と、その後ろの胴の板)と、同じ地層から新たに見つかった甲羅の標本
標本アルゼンチンのコルドバ国立大学の古生物学博物館が所蔵

メガラクネは、石炭紀の終わりごろに南米の湖や湿地にいたウミサソリのなかまです。1980年に「史上最大のクモ」として記載され、その石膏の複製は世界の博物館で展示されました。2005年の再研究で、クモではなくウミサソリだったことが分かっています。

姿と暮らし

メガラクネの体は、幅の広い丸みのある甲羅で頭胸部が覆われ、その後ろに板を重ねたような胴が続きます。甲羅の表面には、小さな棘(とげ)と三日月形の盛り上がりがびっしり並んでいます。この模様はウミサソリ類に特有のもので、クモの体には見られません。甲羅の中央の小さな盛り上がりには小さな目が1対あり、その両側にはそら豆形の大きな目が1対あります。

化石に残っているのは主に背中側の甲羅と胴の板で、脚の全体は分かっていません。冒頭の画像も、尾や脚は近い仲間をもとに補った復元です。ウミサソリ類は、細長い体で泳ぐ遊泳型と、脚で海底や水底を歩く歩行型に大きく分かれます。メガラクネは後者に属し、近い仲間のウッドワードプテルスやヒベルトプテルスと同じく、水底を歩いて暮らしていたと考えられています。

これらの仲間の脚には、刃のような構造や、くし状の棘が並んでいます。2005年の論文は、メガラクネも同じように脚で水底の泥をかき、中にいる小さな生き物をこし取って食べていた可能性を挙げています。論文の筆頭著者で、マンチェスター大学のポール・セルデンは、今の生き物にたとえるならクモではなく大きなカニかロブスターだ、と説明しています。

ウミサソリという名前ですが、メガラクネが見つかった地層は海ではなく、川や湖の堆積物だったとみられています。同じ地層からは、昆虫の翅、ヒカゲノカズラのなかまやシダ種子植物の化石、そしてクモに近い絶滅した節足動物(ワレイタムシ類)のゴンドワナラクネが見つかっています。当時の南米は南半球の超大陸ゴンドワナの一部で、南極に近い地域には氷床が広がっていました。

ウミサソリ類のなかで、メガラクネはとくに大きいわけではありません。デボン紀のイェーケロプテルスは2.5m前後と推定されています。

「史上最大のクモ」だった25年

メガラクネを記載したのは、アルゼンチンの古生物学者マリオ・ウーニッケンです。1980年の論文で、ウーニッケンはこの化石を、タランチュラと同じトタテグモ類の巨大なクモとしました。体長33.9cm、脚を広げた幅は約50cmと推定され、生きているクモで最大級のルブロンオオツチグモ(脚を広げて約30cm)を大きく上回る、史上最大のクモになりました。

クモと判断した根拠は、甲羅の形、目のある盛り上がりの位置、甲羅の前に突き出た部分を一対の鋏角(きょうかく。クモの牙のある口器)、後ろの丸い部分を腹部と見たことでした。化石の大部分は岩に埋まっていたため、ウーニッケンはX線写真も撮り、そこに写った曲線を、牙、胸板、脚の付け根と読み取りました。こうして巨大なクモの復元図が描かれ、石膏で取った化石の複製が世界中の博物館に引き取られて、展示のもとになりました。

一方で、クモの研究者のあいだでは1989年と1990年に疑問が出ていました。甲羅の表面の模様がクモらしくないこと、甲羅を横切る継ぎ目があること、鋏角とされた部分の前の縁がスコップのような形をしていること、そしてクモであることを示す決定的な特徴が化石に残っていないことです。ところが、確かめようにも標本そのものが手に入りませんでした。原標本は銀行の貸金庫に預けられ、ほかの研究者が調べにくい状態が続いていたからです。

その後、原標本がコルドバ国立大学の古生物学博物館に移され、同じ産地の同じ地層から2つ目の標本も見つかりました。セルデンは、アルゼンチンのクモ研究者ホセ・コロンカ、そして記載者のウーニッケン本人とともに2点を調べ、2005年に英国王立協会の学術誌 Biology Letters に結果を発表しました。

結論は、メガラクネはクモではなく、ウミサソリだというものでした。目は甲羅の中央の小さな1対と両側の大きな1対で、クモのような小さな目の集まりではありませんでした。鋏角とされた前の突き出しは、縁が欠けた甲羅の一部で、表面の模様が切れ目なく続いていました。腹部とされた丸い部分は、胴の2枚目の背板でした。X線写真の牙や胸板に見えた曲線は、岩の厚いところと薄いところの境目にできた割れ目で、体のつくりを表すものではありませんでした。甲羅の棘と三日月形の盛り上がりは、スコットランドの石炭紀の地層から出るウッドワードプテルスと同じ型で、論文は2つを同じ科に置いています。

学名のつけ方の決まりでは、あとで正体が分かっても最初に付けた名前は変わりません。そのため「大きなクモ」という名前のまま、メガラクネはウミサソリとして扱われています。論文はこの化石を、南米の石炭紀の地層から見つかったウミサソリとして最も完全なものとしています。史上最大のクモの座は、生きているルブロンオオツチグモに戻りました。

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出典

Selden, P. A., Corronca, J. A. & Hünicken, M. A. (2005). The true identity of the supposed giant fossil spider Megarachne. Biology Letters 1(1), 44–48. https://doi.org/10.1098/rsbl.2004.0272

Hünicken, M. A. (1980). A giant fossil spider (Megarachne servinei) from Bajo de Véliz, Upper Carboniferous, Argentina. Boletín de la Academia Nacional de Ciencias, Córdoba 53, 317–341.

ScienceDaily(マンチェスター大学の発表)「Biggest Spider In The World – NOT!」(2005年2月23日) https://www.sciencedaily.com/releases/2005/02/050222192426.htm

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