Googleがフィンランドの原発と22年契約を結んだ理由

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Googleが9月9日、フィンランドに今後2年(2027〜2028年)で少なくとも130億ユーロ(約150億ドル)を投じると発表しました。中身はデータセンターの拡張と新設で、Googleにとってヨーロッパでは過去最大の単独投資になるそうです。ただ、この話で目を引くのは金額そのものより電気の調達のほうです。フィンランドの電力会社Fortum(フォータム)と、ロヴィーサ原子力発電所の電気を22年間にわたって買う契約を結んでいます。22年というのは、企業が電力会社と結ぶ契約としてはかなり長い期間です。

フィンランドへの130億ユーロ投資の中身

Googleは2009年、フィンランド南岸のハミナで製紙工場の跡地を買い取り、データセンターに改装しました。それから15年以上、海水冷却や、排熱を地域の暖房に回す仕組みを試してきた場所です。The Registerによると、現在のハミナには7棟のデータホールがあります。

今回の投資では、このハミナを拡張するのに加えて、北部・中部のカヤーニ、ムホス、ヴァーラの近郊に新しいデータセンターを建てます。ただし、施設をいくつ建てるのか、計算能力がどれだけ増えるのかは公表されていません。The Registerが問い合わせても、その部分は答えなかったそうです。

Googleの発表では、建設期間の2027〜2028年に年平均36億ユーロがフィンランドのGDPに上乗せされ、全国で37,000人以上の雇用を支えるとしています。稼働後は年7,000人の雇用を見込むという数字も出ていますが、これはGoogle側の試算です。

北部を選んだ理由と送電網の事情

新しい拠点がなぜ北のほうに散らばっているのか。Googleは送電会社のFingrid(フィングリッド)と政府系のBusiness Finlandに相談して場所を決めたと説明しています。フィンランドは北部に発電所が多く、送電網の容量に余裕があります。そこに建てれば、送電線を新しく引く投資が少なくて済み、電力システム全体のコストを抑えられる、という理屈です。Fingridの社長も「北部には消費のための系統容量が十分にある」とコメントしています。

一方で「なぜフィンランドなのか」という根本の質問には、Googleは答えていません。The Registerは、国内の発電のほぼ96%がカーボンニュートラルとされている点や、選んだ場所の近くに送電網が整っている点を、記事側の推測として挙げています。

ロヴィーサ原発と22年契約の条件

ロヴィーサ原発はフィンランドで最初の原子力発電所で、1号機は1977年から動いています。加圧水型の原子炉が2基あり、出力は各507MWと報じられています(この数字はGoogleやFortumの発表には載っておらず、専門メディアのData Center Dynamicsなどによるものです)。ハミナのデータセンターからは海岸沿いに近い位置にあります。

この発電所はフィンランドの電力のおよそ10%を賄っていて、年間の発電量は約8TWh、働いている人は約580人。Fortumにとっては看板の設備です。

Googleとの契約は22年間。2028年に少ない量から始まり、2030年から2049年までは発電容量の最大50%をGoogleが買います。単純に計算すると、2基あわせて約1,000MWの半分ですから、およそ500MW。フィンランド全体の電気のざっと5%をGoogleが引き取る勘定になります。原子力発電所からの電力購入契約をGoogleがアメリカ国外で結ぶのは、これが初めてです。契約の価格は公表されていません。

新設ではなく延命への出資

ここが今回の話のいちばん変わったところです。Googleが買ったのは、新しく生まれる電気ではありません。

ロヴィーサ原発は、2023年2月にフィンランド政府から2050年末までの運転許可を受けています。つまり許可のうえでは、あと四半世紀動かせる状態です。ところが許可があることと、実際に動かし続けられることは別の話でした。50年近く動いている設備を2050年まで安全に運転するには、機器やシステムの更新が大量に必要で、Fortumはそのための投資計画を進めています。総額は2050年までにおよそ10億ユーロ、10の分野に分かれた300以上の個別プロジェクトからなる大がかりなものです。

問題は、その投資のうち約80%、金額にして7億ユーロ分が、まだ実行の決定に至っていなかったことです。電気の値段が先の読めない状態で、何十年もかけて回収する投資に踏み切るのは簡単ではありません。Fortumは「延命のための大きな投資がなければ、この発電所は2030年以降、発電を続けられなかった」とはっきり書いています。

Googleの22年契約は、ここに効きます。2049年まで発電容量の半分を買い続ける相手がいれば、Fortumには安定した収入の見込みが立ち、残りの投資に決断を下せる。つまりGoogleが払っているのは電気代であると同時に、「この発電所を止めさせないための裏付け」でもあるわけです。あわせて、2028年完成予定の低圧タービン更新による38MWの出力向上に加えて、新たに10MWの増強もこの契約で可能になるとされています。

データセンターと原子力の組み合わせは、ここ数年ずっと話題になってきました。ただ、これまで報じられてきたのは、小型モジュール炉を新しく建てる約束や、閉鎖済みの発電所を再稼働させる話が中心でした。今回はそのどちらでもありません。いま普通に動いている大型の原発が、投資が決まらなければ数年後に止まる。その「止まる」を止めるためにお金を出す、という型です。作るのでも、蘇らせるのでもなく、消えるのを防ぐ。データセンターの電源をめぐる話に、新しい種類の契約が加わったことになります。

風力629MWと94MWの蓄電池

原発だけに寄りかかっているわけでもありません。Googleは同時に、ValoremとSuomen Hyötytuuliという2社との陸上風力の購入契約も追加していて、フィンランドで新たに系統につながる風力のうちGoogleが支える分は合計629MWになりました。この風力をFingridの調整力市場に参加させて、系統の安定化にも使う予定だそうです。

さらにカヤーニの拠点の近くに、94MWの蓄電池システムを置きます。2027年後半に系統接続の見込みで、運用の最適化はFortumが担当します。寒くて風のない日に電気の供給と価格を安定させるのが役目です。

GoogleとFortumは覚書も交わしていて、新しい原子力、再生可能エネルギー、調整力について協力を進めるとしています。その中には、ロヴィーサに新しい原子炉を建てる場合の事業モデルを一緒に検討する、という項目も入っています。ただしこれは「検討する」段階で、何かが決まったわけではありません。

見えていることと見えていないこと

「AIの電気は誰が用意するのか」という問いに、Googleは今回、既にある発電所の残り20年分を引き受けるという形で答えました。データセンターの増設と、それに見合う電源の確保を同時に発表するやり方は、Google自身が「責任ある成長の設計図」と呼んでいるものです。Fortumの社長も、値段の変動が激しいいまの電力市場では、長期の契約があってはじめて新しい発電への投資が動く、と話しています。

とはいえ、分かっていないことも多く残っています。データセンターの棟数も、追加される計算能力も、それがどれだけ電気を食うのかも、Googleは明かしていません。契約の価格も非公開です。原発の延命がフィンランドの電気料金を安定させるという説明は、GoogleとFortumの両社が述べていることであって、第三者が検証した話ではありません。ロヴィーサへの新しい原子炉も、覚書で検討が始まった段階です。

ひとつ確かなのは、2030年に止まるかもしれなかった発電所が、少なくとも計画のうえでは2050年まで動く前提に変わったことです。データセンターが電力会社の投資判断を左右する時代になった、という見方もできそうです。この種の契約がほかの国でも出てくるのか、引き続き追いかけていくつもりです。

出典

Google Cloud Press Corner: Google Deepens Commitment to Finland with Two-Year €13 Billion investment in AI Infrastructure(2026年9月9日)

The Register: Google takes the nuclear option for €13B Finland expansion(2026年9月9日、Dan Robinson)

World Nuclear News: Google signs up for electricity from Finnish nuclear power plant(2026年9月9日)

Fortum: Lifetime extension of the Loviisa Nuclear Power Plant

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