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夜空で明るさを変える天体はたくさんあります。パルサーはミリ秒単位で点滅し、新星は数日で燃え上がって数週間から数か月で消えていきます。天文学者はこうした変化の目録をかなり整えてきましたが、まだ埋まっていない欄がありました。カリフォルニア工科大学の Jessie M. Miller らが報告した VT J1906+0849 は、20年にわたって電波で光り続け、しかもその20年のあいだ変わり続けている天体です。論文は2026年10月14日に The Astrophysical Journal に載りました。
1996年には何も無かった場所
この天体が目に留まったのは、カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡(VLA)で全天を調べる VLA Sky Survey(VLASS)の、2017年の1回目の観測でした。天の川のノルマ・はくちょう腕の外側、少なくとも1万5,000パーセク(約4万9,000光年)の距離にあり、約70ミリジャンスキーという、これほど遠い天体としては異例に明るい電波源でした。VLASS がそれまでに見つけた電波トランジェントの中で、いちばん明るいものです。
そこで研究グループは、同じ場所を写した過去の観測をさかのぼりました。1996年の NRAO VLA Sky Survey には、この位置に何も写っていません。初めて検出されたのは2005年で、その後の複数のサーベイで明るくなり続け、2014年に200ミリジャンスキー以上で極大に達していました。2017年の VLASS は、その極大から暗くなっていく途中を捉えていたことになります。

暗くなったと思ったら、また明るくなった
ここまでなら「ゆっくりした爆発の余韻」とも読めます。研究グループは2019年と2024年に追観測を行い、さらに2025年と2026年にも観測を重ねました。2019年と2024年の観測では、天体は順調に暗くなっていきました。ところが2025年の終わりになって、VLA のデータの中で VT J1906+0849 は再び明るくなり始めていました。
電波の明るさを波長ごとに並べたスペクトルも、ふつうではありません。この天体の電波は、ある周波数で明るさが頂点になり、それより高くても低くても暗くなります。その頂点の周波数が、2019年には約1.9ギガヘルツだったのに、2024年には約0.8ギガヘルツまで下がっていました。ふつう、こうしたスペクトルの変化は、電波を出しているガスの塊が膨らむことで起きます。ところが超長基線干渉計で大きさを測ると、電波を出している領域は5年間でほとんど、あるいはまったく広がっていませんでした。
X線も見えません。これだけ明るい電波を出すには、コンパクト天体へガスが流れ込み続けている必要があると考えられますが、スウィフト衛星のX線望遠鏡では検出されず、天の川のX線連星と比べてX線が弱すぎます。時間変化の仕方も、電波スペクトルの形も、既知のX線連星とは違っていました。
濃い風の中にジェットを撃ち込み続ける天体
手がかりになったのは、近赤外線の分光でした。VT J1906+0849 からは幅の広い輝線が1本だけ見え、その中心の波長は安定しているのに、幅と明るさが変わります。研究グループはこれを、水素のブラケットγ線が青方偏移したもの、つまり秒速約2,000キロメートルで手前に向かって吹き出し続ける、片寄った流れの印だと解釈しました。
そこで持ち出されたのが、SS 433 というよく知られた天体です。SS 433 は中性子星かブラックホールが伴星からガスを引きはがしている連星で、引きはがされたガスの一部はコンパクト天体に落ちますが、多くはジェットと円盤からの濃い風として宇宙へ吹き飛ばされます。その濃い風は、中心で起きている降着のX線を覆い隠してもいます。
VT J1906+0849 でも似たことが起きているのかもしれない、というのが研究グループの見立てです。コンパクト天体が高エネルギー粒子のジェットを撃ち込み続け、それが周囲の濃い風とぶつかると、電波を出す領域は自由に広がれず、小さいまま明るさとスペクトルだけを変えていきます。濃い風はX線も隠します。研究グループはこの天体を「若い SS 433」のような存在かもしれないとしつつ、確定した同定ではなく、さらに観測が要ると書いています。

目録に増えた「数十年」の欄
天文学者が見つける変光天体の多くは、ミリ秒から数か月の時間尺度で変わります。これは観測の仕方と、詳しい観測を始めてからまだ日が浅いことにもよります。全天を繰り返し写す大規模なサーベイが本格化したのは1990年代以降で、VT J1906+0849 のように数十年かけて変わる天体は、何度も同じ場所を見比べて初めて浮かび上がります。
研究グループは、広い視野の電波サーベイが、他の波長では見つけにくい「隠れた降着天体」の一群を掘り起こせる可能性を指摘しています。濃い風に包まれてX線では静かに見えても、電波では20年ものあいだ光り続ける天体が、天の川の中にまだ眠っているのかもしれません。
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出典
- Jessie M. Miller et al., “VLASS Discovery of a Luminous Galactic Radio Transient Evolving on Decade Timescales”, The Astrophysical Journal 1010(2): 163(2026年10月14日):https://doi.org/10.3847/1538-4357/aea0d5
- ScienceAlert “A Strange Radio Signal in The Far Reaches of The Milky Way Is Behaving Like Nothing Else in The Galaxy”(2026年10月22日、Michelle Starr):https://www.sciencealert.com/a-strange-radio-signal-in-the-far-reaches-of-the-milky-way-is-behaving-like-nothing-else-in-the-galaxy


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