9万ドルの人型ロボット「Futurist」——ファラデー・フューチャーが“フィジカルAI”へ軸足

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EV(電気自動車)ブランドを軌道に乗せようと10年以上もがいてきたファラデー・フューチャー(Faraday Future、以下FF)が、事業の主役を「ロボット」へ切り替えると発表しました。目玉は約9万ドル(日本円で1,000万円を超える価格帯)の人型ロボット。それも1機種だけでなく、四足歩行型やロボットアームまで含む6つのシリーズを、ほぼ一気に並べてみせました。

車づくりで何度もつまずいてきた会社が、いま最も競争の激しい「ヒューマノイド(人型ロボット)」の分野へ飛び込む——という構図です。EVからロボットへ手を広げているテスラと、方向性としてはよく似ています。

EVでの苦戦と、ロボットへの転身

FFは2014年に設立された米カリフォルニアの会社です。一時は数十億ドル規模の評価額がつきながら、資金繰りの悪化や大手メーカーとの提携の白紙化が続き、この12年ほどで実際に出荷できた車はごくわずかにとどまりました。創業者の賈躍亭(ジア・ユエティン)氏は2019年に巨額の負債を抱えて経営を離れ、昨年になって立て直しのために復帰しています。

その立て直しの軸として打ち出したのが、「フィジカルAI(physical AI)」と呼ばれる分野です。ソフトの中だけで完結するAIではなく、センサーで周囲を感じ取り、体を動かして実世界のモノに触れて働くAIを指します。自動運転車やドローン、そしてロボットがこれにあたります。FFはこれを「EAI(Embodied AI=身体を持つAI)」とも呼んでいます。

ただしEVから完全に手を引くわけではなく、ハイパーカー「FF 91」や高級ミニバン「FX Super One」といった車種は引き続き手がけるとしています。

一度に公開された6シリーズのロボット

今回そろえたのは、大きく3タイプ・計6シリーズのロボットです。発表は6月16日(前半)と、北米最大のロボット見本市「Automate」(シカゴ)に合わせた6月下旬(後半)の二段構えで行われました。

内訳は、人型ロボットが「Futurist」「Master」「Nova」、四足歩行型が「Aegis」「Navi」、そして台車の上に腕を載せた可動式アーム「Faber」。子ども向けの教育用ロボット犬Naviは約2,000ドルで、すでに販売が始まっています。施設の見回りや警備を想定した上位の四足型は4,000ドル前後から。工場や倉庫での荷下ろし・仕分けを狙うFaberも本体の販売が始まっていますが、価格は明らかにされていません。

FFがこのラインアップで掲げているのが、「一つの頭脳、複数の体(One Brain, Multiple Forms)」という考え方です。ロボットごとに別々のAIを作るのではなく、共通の“頭脳”を用意して、形の違う複数のロボットに載せる。あるロボットで覚えさせた動きを、別のロボットにも移せる——担当者はこれを「ロボット版のアプリストアのようなもの」と表現しています。この共通の頭脳は、見たもの・言葉・動きを結びつけて次の動作を決める仕組み(VLA=視覚・言語・行動モデル)をベースにしているといいます。

看板の人型ロボット「Futurist」

ラインアップの主役が、全身を動かせる大型の人型ロボット「Futurist(フューチャリスト)」です。価格は89,900ドルで、ここには1万ドル分の機能パッケージ(Skills package)が含まれています。FFはこれを、まず大学などの研究用途に向けた“多能なプロ向け機”と位置づけています。

体格は身長およそ172cm(5フィート8インチ)で、先代より約14%軽くなったとのこと。手を除いて31の関節(自由度)を持ち、ひざ関節は最大320ニュートンメートルのトルクを出せます。電源は1,152ワット時の2系統バッテリーで、連続でおよそ6時間動くとされます。全身の動きの制御にはNVIDIAの「SONIC」というシステムを使い、FFは「米国で初めてこれを標準対応した大型人型ロボット」だと説明しています。

用途として挙げているのは、研究のほか、施設での案内や来客対応、倉庫作業、家事、家庭での健康サポートなど。年内には、自動で充電に戻れてNVIDIAの新しい計算基盤「Jetson Thor」を積んだ上位版「Ultra」も出す予定としています。

9万ドルという価格の位置づけ

人型ロボットの世界でも、9万ドルは決して安い値づけではありません。テスラは自社の「Optimus」を2万〜3万ドルで売りたいとしており、中国のUnitree(ユニツリー)は6,000〜1万6,000ドルほどの二足歩行ロボットを複数そろえています。米国の1Xも、家庭向けロボット「Neo」を2万ドルで予約受付中です。こうして並べると、Futuristが高価格帯に位置することがわかります。

FF側は、同等のスペックを持つ大型人型ロボットの中では価格性能比を塗り替える水準だ、という言い方をしています。とはいえ、研究機関や企業がこの価格をどう受け止めるかは、これからの話です。

量産と出荷という最大の関門

発表されたロボットは数も種類も多いのですが、いちばんの焦点は「本当に出荷できるか」です。FFはロボットの商用納入を始めたばかりで、直近の四半期の売上は約51万ドル。2026年通年では当初1,000台としていた出荷目標を1,500台へ引き上げたものの、現時点ではまだ規模の小さい段階にあります。

さらに、米国だけでも人型ロボットを手がける企業は数多く、競争は激しさを増しています。新技術を派手に披露する会社は多くても、量産して実際に客先へ届けるところまで行き着けるかどうかは別問題です。EVで苦杯をなめてきたFFにとって、今度こそ“発表した製品をきちんと出荷する”ことが、何より重い宿題になりそうです。

FFはこのほか、遊んでいるロボットを企業同士で貸し借りできる「ロボットのシェアリング」サービス(robotshare.com)も打ち出すなど、ハードの販売だけにとどまらない構想も描いています。大きく広げた構想と、足元の出荷実績との差をどう詰めていくか。ヒューマノイド競争に、EVで苦戦してきたメーカーが加わった今回の動きは、その意味でも見どころがあります。

出典

・New Atlas「Disastrous EV startup pivots to $90K humanoid to stop the pain」:https://newatlas.com/ai-humanoids/faraday-future-robot-humanoid-futurist-price/

・Faraday Future 公式プレスリリース(FF EAI Robot World 後半発表):https://investors.ff.com/news-releases/news-release-details/faraday-future-unveils-its-second-half-launch-ff-eai-robot-world

・Futurist 製品ページ(Faraday Future):https://futurist.ff.com/us/

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