生物

遺伝子から生き物の姿はどこまで読めるか【2026年版】。タンパク質の形までは届き、体全体はまだ描けない

DNA の配列を渡されて、そこからどんな生き物ができるかを言い当てられるか。2026年の時点で、答えは「途中までなら」です。「読める」にはいくつか段階があります。どの生き物の DNA かを当てること、タンパク質の形を当てること、遺伝子がどこ...
古生物学

【デボン紀の生物】シーラカンス – 「絶滅した魚」は、コモロの漁師が毎年釣っていた

名前シーラカンス(coelacanth)。ギリシャ語の「中空の」と「棘」を合わせた化石の属名コエラカントゥス(Coelacanthus)から。ひれの骨が中空になっていることにちなむ。現生種の属名ラティメリア(Latimeria)は、1938...
生物

ゲノム23万8,000塩基対、遺伝子189個。代謝を捨てて「複製の仕組み」だけを残した古細菌が、下田沖のプランクトンの中から見つかった

静岡県の下田沖で採った海水の中に、探していなかったものが入っていました。筑波大学の原田亮さんと中山卓郎さんらの研究チームは、渦鞭毛藻(うずべんもうそう)という単細胞プランクトンの一種 Citharistes regius を1個ずつ取り出し...
生物

ミツバチの針は、切り離されたあとも「つぶれるピストン2本」で毒を送り続ける。1910年から知られていた弁の動きを、高速度撮影で初めて見た

ミツバチに刺されると、ハチが飛び去ったあとも針が皮膚に残り、しばらく毒を送り続けます。針の根元には毒嚢(どくのう)と筋肉、神経節が付いたままで、本体から切り離されても自分で動くからです。この針の中に「弁のついたポンプ室」があることは1910...
宇宙・天文

「ハイパーノバ」は存在しないかもしれない。超新星の放出物が均一に混ざらないと考えると、証拠だった金属欠乏星がふつうの超新星で説明できた

太陽の30倍を超える重い星が一生の最後に起こす爆発の中に、「ハイパーノバ」と呼ばれる格別に激しいものがあると考えられてきました。ふつうの重力崩壊型超新星の10倍ほど明るく、爆発のエネルギーも10倍、10の52乗エルグに達するとされます。ただ...
物理

40年前の予言どおりの「エネルギーの梯子」。ストロンチウム35原子の鎖を臨界点に置き、共形場理論のスペクトルを初めて測った

水が沸騰する瞬間や、磁石が熱で磁力を失う瞬間には、材料の細かい違いが消えて、まるで違う物質が同じ数学に従って振る舞うようになります。物理学ではこれを「普遍性」と呼び、その数学を書き表す枠組みが共形場理論(CFT)です。1984年、物理学者の...
化学・生命の起源

金の電極のすき間0.5ナノメートルを1個ずつ通して、アミノ酸の「右手・左手」を電流で読む。隕石と砂漠の土で試した、宇宙生命探査のための1分子分析

アミノ酸の多くには、右手と左手のように鏡に映した形でありながら重ね合わせることのできない「L型」と「D型」があります。地球の生き物がタンパク質を作るときに使うアミノ酸は、ほぼ L型に偏っています。一方、生き物が関わらない化学反応でアミノ酸が...
動物行動・生物学

イヌも「ブーバ」は丸く、「キキ」はとがっていると思っている。70頭の視線を追った実験で、人間だけと思われていた音と形の結びつきが別の種に見つかった

「ブーバ」という名前の図形と、「キキ」という名前の図形を思い浮かべてください。どちらが丸くて、どちらがとがっているでしょうか。言葉はどちらも作りものなので正解はないはずですが、こう聞かれた人の大半は、言語や文字の種類に関係なく、ブーバは丸く...
気候・環境

「世界最大のペンギンのコロニー」の看板が外れた。火山島のヒゲペンギンは15年で巣が63%減り、隣で魚も食べるマカロニペンギンに追い越された

南米の南端と南極大陸の間、嵐の海に弧を描いて並ぶ南サンドウィッチ諸島の北端に、ザボドフスキー島という火山島があります。活火山のカリー山の斜面をヒゲペンギンとマカロニペンギンが埋め尽くし、2011年の英国南極調査所(BAS)の調査では、ヒゲペ...
動物行動・生物学

人を守るために飛ばしていたドローンが、サメを守る地図を描いた。豪州の2つのビーチに毎年集まる、若いアカシュモクザメ最大100匹の群れ

オーストラリアのクイーンズランド州には、海水浴客の安全のために、砂浜の上空でドローンを飛ばしてサメを見張る SharkSmart という仕組みがあります。見張りのための映像ですが、海岸を通る生き物の記録にもなっていて、サメを捕まえたり触った...
物理

ブラックホール着想の量子テレポーテーションに「量子の魔法」は要らなかった。平均の忠実度は同じで、ばらつきだけが違う

ブラックホールに落ちた情報は、どうなるのでしょうか。事象の地平線の内側では、量子情報はほとんど判別できないほどかき混ぜられ、無数の量子的な相互作用のもつれの中に散らばると考えられています。それでも量子力学では、情報が消えてなくなることは許さ...
テクノロジー

引き出しの古いスマホが、二足歩行ロボットの「目と脳」になる。UCLA の PhoneBot は本体およそ400ドルで、2017年の機種でも歩いた

引き出しの奥で眠っている古いスマートフォンには、カメラも、傾きや動きを感じ取るセンサーも、無線も、画面も、そこそこの計算機も入っています。小さなヒューマノイドロボットを作ろうとすると、ふつうはこれらを別々に買って配線しなければなりません。カ...
宇宙開発

小惑星には後ろから追いつくより、正面からぶつかるほうが速い。太陽の光で逆回りする「回折セイル」なら秒速100キロで衝突できる、という計算

2022年9月26日、NASA の探査機 DART が小惑星ディモルフォスに体当たりしました。直径160メートルほどの小さな天体に、秒速6キロあまりで後ろから追いついてぶつかり、親の小惑星をまわる周期を11時間55分から32分縮めた、人類が...
古生物学

【デボン紀の生物】イェーケロプテルス – 「史上最大の節足動物」の全長は、ハサミ1本から計算された

名前イェーケロプテルス(Jaekelopterus)。ジェケロプテルスとも表記される。ドイツの古生物学者オットー・イェーケルの名と、ギリシャ語の「翼」を合わせた名前分類節足動物 鋏角類 ウミサソリ類 プテリゴトゥス科時代デボン紀前期(エムス...
物理

配管の端に差し込むだけで、こだまが消える。3Dプリンターで作った「音のブラックホール」は、入った音を奥へ奥へと遅らせて返さない

空調のダクトや工場の排気管に向かって声を出すと、少し遅れてこだまが返ってきます。管の端や曲がり角で音が跳ね返るからです。この反射は、換気や排気の騒音がなかなか消えない理由のひとつで、消音器の設計でも厄介な相手になっています。スペインのラモン...
宇宙・天文

1855年に「惑星がある」と言われた16光年先の連星。100年ぶんの観測で木星級の惑星は消え、地球サイズなら居続けられる場所が残った

太陽から約16光年、へびつかい座の方向に、70 Oph AB(へびつかい座70番星)という連星があります。太陽よりひと回り小さい橙色の星が2つ、互いのまわりを回っている系で、250年ほど前にウィリアム・ハーシェルが連星だと見抜きました。そし...
医学・健康

閉経は坂ではなく崖だった。100万人・3億件の検査値を最終月経の日に並べ直すと、骨も肝臓も脂質も同じ時点で段差を作っていた

閉経にともなう体の変化は、何年もかけてゆっくり進む「移行」だと考えられてきました。そう見えていたのは、追いかけた人数が少なかったからかもしれません。イスラエルのワイツマン科学研究所のGlen PridhamさんとUri Alonさんらは、米...
テクノロジー

歩き方は変えない、重さの置き場所だけ変える。頭と尾の水風船で300グラムの水を前後に送り、坂も段差も水も越えるミミズ型ロボット

海岸線や冠水した道路を点検するロボットには、やっかいな相手が待っています。硬い地面、土手の斜面、縁石や段差、そして水。それが数メートルのあいだに次々と入れ替わります。ヘビやミミズの形をしたロボットはこうした場所を這うのが得意なはずですが、実...
宇宙・天文

星が作ったヘリウムを引き算する。大型双眼望遠鏡が金属の乏しい銀河54か所で測り直した「宇宙の最初のヘリウム」は質量の24.58%で、プランクの予言と小数点以下3桁で合った

宇宙が生まれて最初の数分間に作られた元素は、ほぼ水素とヘリウムだけです。質量で見ると水素がおよそ4分の3、ヘリウムが4分の1。この「4分の1」が正確にいくつだったかは、ビッグバンの物理を確かめるうえで、宇宙マイクロ波背景放射と並ぶ数少ない手...
物理

硬いものは熱を通す、という常識を層で崩す。鍋つかみのシリコーンより5倍熱を遮り、700倍から1万倍硬い薄膜

熱を通しにくい材料は、たいてい柔らかい。発泡スチロールもエアロゲルも、中に空気を抱え込むことで熱を遮っていて、押せばつぶれます。逆に硬い材料、たとえば金属は熱をよく通します。鍋つかみに使われるシリコーンのように、ほどほどに硬くて熱を通しにく...
宇宙・天文

月の重力では、水は地球ほど自由に流れない。ロケットを回して作った2分間の「月面」で、18個の小部屋の液面を測った

月に基地を作るなら、食べ物は現地で育てたい。植物は食料になるだけでなく、酸素を出し、水を浄化し、廃棄物を循環させます。国際宇宙ステーションでは何年も前から植物を育てる装置が動いていて、アポロが持ち帰った月の土でシロイヌナズナの種を発芽させた...
宇宙・天文

ブラックホールがX線で「食べた」300日後に、電波で「げっぷ」した。スウィフトの20年のデータから掘り出した、ペルセウス座銀河団の中心の時間差

ペルセウス座銀河団の中心には、NGC 1275という銀河があります。地球から約2億3,000万光年。その中心の超大質量ブラックホールは、強く変動する電波ジェットを吹き出し、銀河団を満たす高温のガスに巨大な泡を押し広げていることで知られていま...
歴史・考古学

9世紀のラトビアで、父と息子を含む6人が同じ墓に。3人は刃物で死に、それでも一人ひとり作法どおりに葬られていた

ラトビア西部、リガ湾に近いゼムガレ地方に、チュンカーニ=ドレンゲリという墓地があります。1924年に見つかった遺跡で、川沿いの段丘に7世紀から11世紀にかけて何百人もが葬られました。この地方の墓はふつう、1つの墓に1人です。ところがその中に...
医学・健康

症状が消えても、腸の細胞は死にかけたままだった。80人・900点の生検が示した、炎症性腸疾患が再燃する理由の一部

クローン病と潰瘍性大腸炎をまとめて炎症性腸疾患(IBD)と呼びます。消化管に慢性の炎症が起きる病気で、治療で症状が落ち着く「寛解」に入っても、多くの人がいずれ再燃します。腹痛も下痢も収まっているのに、なぜまた燃え上がるのか。オーストラリアの...
宇宙・天文

ジェットの中の明るい塊は、衝撃波ではなかった。27年・116回の観測を1本の動画にして分かった、ブレーザー 3C 345 のプラズマの速さ

ヘルクレス座の方向、約55億光年先に 3C 345 というクエーサーがあります。中心の超大質量ブラックホールから吹き出すプラズマのジェットが、ほぼ地球の方を向いている天体で、この向きのものはブレーザーと呼ばれます。電波望遠鏡で見ると、ジェッ...
生物

金を「作る」細菌の正体は解毒だった。鉱山で本当に働いている微生物は別にいる

砂金の粒の表面に細菌がびっしり住みついている。カビの菌糸に金の粒がくっついている。木の葉の中から、金のナノ粒子が見つかる。「金を作る生物」と呼ばれるものの研究は、20年ほど前からこうした発見を少しずつ積み上げてきました。ただし、金という元素...
古生物学

【デボン紀の生物】ダンクルオステウス – 「全長10メートル」が3〜4メートルに縮んだ理由

名前ダンクルオステウス(Dunkleosteus terrelli)。属名は「ダンクルの骨」。クリーブランド自然史博物館の学芸員デイビッド・ダンクルにちなみ、1956年に付けられた。種小名は1867年に最初の化石を見つけたジェイ・テレルにち...
物理

原子核で時を刻む時計が、初めて自分で針を合わせた。室温の結晶で丸1日動いたトリウム時計は、ついでに暗黒物質も探した

時計の歴史は、「振り子」をどんどん小さくしてきた歴史です。振り子時計の振り子は水晶の振動に代わり、水晶はセシウム原子の中の電子の振動に代わり、いまは光の周波数で電子を揺らす光時計が最高精度を競っています。その次の候補として20年以上前から名...
地球科学

深海から持ち帰った岩が、実験室でひとりでに燃えた。海底採掘が始まる前に見つかった、鉱物の「自己発熱」

深海の熱水噴出孔のまわりには、銅や亜鉛、金や銀を含む硫化鉱物の塊がたまっています。「海底塊状硫化物」と呼ばれるこの鉱床は、深海採掘の有力な候補として各国が探査を進めています。米国地質調査所(USGS)のAmy Gartmanさんらは、202...
生物

イカの皮膚一面に、人の耳と同じ細胞が並んでいた。毛の長さを変えて水の動きを聞き分ける「側線フィールド」

人の耳の奥には、音の波を電気信号に変える「有毛細胞」が並んでいます。細胞のてっぺんから毛の束が生えていて、その毛が揺れると神経に信号が送られます。魚は同じ種類の細胞を体の表面にも持っていて、「側線」と呼ばれる感覚器で水の動きを感じ取ります。...