中国の宇宙往還機、軌道で「謎の物体」を放出か

宇宙・天文
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中国の宇宙往還機が、軌道上でなにかを切り離した――。そんな観測が、宇宙を見張る民間企業から報告されました。放たれた物体が何なのかは、いまのところ分かっていません。淡々とした観測報告ですが、相手が「中身を一切公表しない」謎多き機体だけに、いろいろと想像をかき立てる話です。

「神竜(シェンロン)」という宇宙往還機

今回の主役は、中国の再使用型スペースプレーン「シェンロン」です。中国語の「神龍」、つまり「神の竜」という意味の名前で呼ばれています。ロケットの先端に載って打ち上げられ、任務を終えると飛行機のように滑走路へ降りてくる――そういうタイプの宇宙機です。

イメージとしては、アメリカ宇宙軍が運用しているボーイング製の「X-37B」に近い機体だと考えられています。かつてのスペースシャトルを、無人で小さくしたような姿、と言うとつかみやすいかもしれません。ただ、シェンロンについて中国は徹底して情報を出しておらず、正確な大きさや能力すらよく分かっていません。これまでに出回っている画像も、ほとんどが地上の望遠鏡でかろうじてとらえたものです。

このシェンロンは、2026年2月初め、中国・ゴビ砂漠の酒泉(しゅせん)衛星発射センターから長征2Fロケットで打ち上げられ、これが4回目の軌道ミッションになります。今回も、何をするための飛行なのかは公表されていません。

民間企業がとらえた放出

その異変に気づいたのは、軌道上の物体を追跡している民間の宇宙監視企業「LeoLabs(レオラボ)」でした。同社によると、協定世界時で2026年6月22日の午前2時30分ごろ、シェンロンのすぐ近くに、カタログにない未知の物体を検出したといいます。日本時間にすると6月22日の昼前にあたります。

この物体は、同社が持っているどの登録物体とも一致しませんでした。さらに世界中の観測網で追加のデータを集めて分析した結果、「シェンロンから放出されたものだと高い確度で判断した」と同社は説明しています。つまり、宇宙往還機が軌道上で、何かを切り離したらしい、ということです。

放出物の正体までは分かっていません。小型の衛星(サブサテライト)なのか、不要になった部品なのか、それとも別の役割を持つものなのか。中国側はこうした放出について、これまでも認めも否定もしてきませんでした。

観測の手順と確認のしかた

では、地上からどうやって「放出」と分かるのでしょうか。LeoLabsはレーダーで軌道上の物体を継続的に追っていて、今回の物体を最初にとらえたのはニュージーランドのレーダーでした。そこに、これまで存在しなかった反射が新たに現れた――それが手がかりです。

新しく見つかった反射が、既知のどの物体とも一致せず、しかもシェンロンのすぐそばに現れた。複数の観測所のデータを突き合わせて軌道を割り出すと、母機から分離されたと考えるのが自然だった、という流れです。天文学者のジョナサン・マクダウェル氏も、この物体がアメリカ宇宙軍のカタログに登録されたことをSNS上で指摘しています。複数の独立した目が同じものを確認している、というわけです。

過去のミッションとの共通点

シェンロンが軌道上で物体を放出したように見えたのは、これが初めてではありません。2024年6月にも、ミッション終盤に小型衛星らしきものを放出した、あるいは不要な機材を捨てたと観測者が報告しています。その半年前には、6個の物体を一度に放出したと見られましたが、こちらはのちに打ち上げ時に出たごみだろうと判断されました。

さらに過去のミッションでは、シェンロンが「ランデブー・近接運用(RPO)」と呼ばれる動きをしていた形跡もあります。これは、軌道上で別の物体にそっと近づき、距離を保ちながら寄り添うように動く技術のことです。LeoLabsも今回の放出について、過去のミッションで見られたサブサテライトの放出と一貫している、という見方を示しています。要するに、シェンロンにとっては毎度おなじみの動き、ということです。

注目される理由

軌道上で物体に近づいたり寄り添ったりする技術そのものは、平和的にも使えます。たとえば、故障した衛星を点検したり、燃料を補給したり、修理したりするには、まさにこの「近づく」能力が要ります。宇宙でのメンテナンス時代に欠かせない技術です。

一方で、同じ能力は、相手国の衛星に近づいて干渉する用途にも転用できる、という指摘もあります。実際、宇宙開発を競う各国がこうした「近づく」技術を熱心に試しているのは事実で、2026年5月にはロシアの2機の衛星が軌道上でわずか約3メートルまで接近したと報じられました。アメリカも同種の能力を開発しているとみられています。シェンロンの放出が世界の注目を集めるのは、こうした背景があるからです。とはいえ、今回の物体が何のためのものかは確認されておらず、用途を決めつけられる段階ではありません。

解釈上の留意点

ここまでの話は、あくまで民間企業や独立した観測者による「外から見た」推測が中心です。中国の公式発表ではありません。物体の正体も、ミッションの目的も、現時点では分かっていないことばかりです。今後、シェンロンがこの物体に近づくような動きを見せれば、用途の手がかりになるかもしれませんが、それも観測してみないと分かりません。

過去には「6個放出か」と見られたものが、結局は打ち上げ時のごみだったという例もありました。最初の観測がそのまま正解とは限らない、という点は頭の片隅に置いておくとよさそうです。続報が出たら、それも追っていきたいテーマです。

出典・もっと知りたい人へ

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