広い宇宙のどこかに、私たち以外の生き物はいるのか——。天文学でもっとも大きな問いのひとつですが、その「探し方」が最近一歩進みました。これまでに見つかった6,000個あまりの系外惑星(けいがいわくせい=太陽系の外にある惑星)の中から、生命を探すなら優先して狙うべき45個を選び出したリストが発表されたのです。宇宙全体をやみくもに見回すのではなく、見込みの高い惑星に的を絞ってから望遠鏡を向ける——そんな考え方への切り替えです。
リストに並ぶのは、だいたいこんな世界です。赤い小さな星のそばを回る、岩でできた惑星——。

系外惑星探索の現状
この30年で、系外惑星は猛烈な勢いで見つかってきました。その数はいまや6,000個を超えます。ところが、数が増えるほど別の難しさが生まれました。巨大なガス惑星もあれば、地球より少し大きい「スーパーアース」もあり、変わった軌道を回るものもある。種類がばらばらで、どれを本気で調べるべきかの優先順位がついていなかったのです。
大きな望遠鏡で惑星を1個ずつ詳しく観測するには、長い時間と順番待ちがかかります。観測できる時間は限られているので、すべてをしらみつぶしに見るわけにはいきません。広い図書館で1冊を探すとき、棚を片端から見て回るより「まずこの棚から」と見当をつけたほうが早いのと同じで、観測する側にも狙い先を絞ったリストが必要でした。
居住可能性の高い45惑星
今回の研究チームは、6,000個あまりの中から、生命をはぐくむ条件がありそうな岩石惑星(地球のように岩でできた惑星)を45個まで絞り込みました。選ぶ基準になったのが「ハビタブルゾーン」です。星からの距離がちょうどよく、暑すぎず寒すぎず、惑星の表面に液体の水がありうる温度帯のことで、「ゴルディロックスゾーン」とも呼ばれます。生命に水は欠かせないため、この帯にある惑星は有力候補とされてきました。
リストには、宇宙に詳しい人なら聞き覚えのある名前も並びます。太陽系にもっとも近い恒星のそばを回るプロキシマ・ケンタウリb(約4光年先)、7つの惑星を持つことで知られるTRAPPIST-1(トラピスト1)の惑星たち、地球サイズで話題になったKepler-186f(ケプラー186f)など。あまり知られていない候補としては、TOI-715 b といった名前も含まれます。
距離でいうと、TRAPPIST-1 は約40光年、LHS 1140 b は約48光年。宇宙のスケールでは「ご近所」と呼べる近さです(光年は、光が1年かけて進む距離。約9兆5千億kmにあたります)。チームは、地球が太陽から受けるのと同じくらいの光を受けている惑星を10個ほど選び出し、そのなかでも当面いちばん調べやすい有力候補として、TRAPPIST-1 e と TOI-715 b の2つを挙げています。どちらも赤色矮星(せきしょくわいせい=小さくて暗い赤い星)を回っており、星が小さいぶん、そばを回る地球サイズの惑星の様子を見分けやすいという利点があります。
つまりこのリストは、ただ生命がいそうな惑星を並べたものではなく、望遠鏡で実際に確かめやすいかどうかまで考えて選ばれた、すぐ使える一覧になっています。そこがこの研究のいちばんの肝です。
選定の基準と手法
基準に私たちの太陽系を使ったところが、この研究の面白い点です。同じ太陽のまわりでも、地球は生命をはぐくみ、金星は灼熱、火星は寒く乾いています。そこで、金星が受ける光の量と火星が受ける光の量のあいだに収まる惑星を、ちょうどよさそうな候補としてふるい分けました。身近な3つの惑星を物差しに使ったわけです。
データには、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の位置測定衛星ガイア(Gaia)の最新の観測と、NASAがまとめている系外惑星のアーカイブを組み合わせました。これで星や惑星の素性——大きさや受けている光の量など——をより正確に捉え直したうえで、まずガス惑星ではなく岩石惑星らしいものに限定し、そこからハビタブルゾーンに入るものを選んでいます。惑星が星の手前を横切るのを捉える方法(トランジット)で見つかったものと、惑星の重みで星がわずかに揺れるのを捉える方法(視線速度)で見つかったものを、観測のしやすさに応じて使い分けているのも特徴です。
研究を率いたのは、コーネル大学カール・セーガン研究所のリサ・カルテネガー教授。学部生のチームとともに進めた研究でもあります。
今後の観測への影響
このリストがあると、これからの望遠鏡が「どこを優先して見るか」を決めやすくなります。すでに動いているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)に加えて、2027年に打ち上げ予定のナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡、2029年にも初観測が見込まれる超大型望遠鏡ELT、さらに先のハビタブル・ワールズ・オブザーバトリー(2040年代の予定)など、今後の観測の共通の狙い先として使えます。限られた観測時間を、各望遠鏡で手分けして効率よく使えるようになるわけです。
惑星まで行けない私たちが生命の気配をどう探るかというと、鍵になるのは大気の成分です。惑星の大気を通り抜けてきた星の光を分光(ぶんこう=光を成分ごとに分けて調べる手法)で分析すると、そこにどんな気体があるかが読み取れます。生命がいる手がかりになりうる物質を、バイオシグネチャーと呼びます。ただし、たとえば酸素が1種類見つかるだけでは決め手になりません。生き物がいなくても自然にできる場合があるからです。注目されているのは、酸素とメタンのように、本来なら互いに反応して消え合うはずの気体が同時にそろっている状態です。何かがたえず補充し続けていないと両立しない組み合わせなので、生命の存在を強く示す手がかりになると考えられています。
このリストは、地球外の知的生命を探すSETIのような取り組みにも役立ちます。生命がいそうな惑星があると分かっている星に的を絞れるので、やみくもに探すより効率がよくなるからです。
解釈上の留意点
勢いのある話ですが、押さえておきたい点があります。今回の研究は「ここに生命が見つかった」というものではありません。あくまで「探すならまずここ」という狙い先のリストです。リストに入った惑星が実際に液体の水を保てるかどうかは、そもそも大気をしっかりまとっていられるかなどに左右され、まだ確かめられていません。
研究チーム自身も、生命探しは「ある日いきなり見つかった/見つからなかった」と白黒がつくものではなく、データを積み重ねながら確からしさが少しずつ固まっていくものだ、という見方を示しています。期待を先走らせず、ここから一つずつ確かめていく長い作業の出発点として受け止めるのが、ちょうどよさそうです。それでも、次にどこを見ればよいかがはっきりした意味は大きく、楽しみな一歩であることは確かです。
余談ですが、この研究はライアン・ゴズリング主演で映画化もされた『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(地球を救うために恒星間を旅する物語)になぞらえて紹介されました。もし“ヘイル・メアリー号”を仕立てて生命を探しに行くなら、どこへ向かえばよいかを示した地図のようなもの、というわけです。
出典
この記事は、英国王立天文学会のプレスリリースをもとにした解説と、研究チームが発表した論文を参考にしています。元の論文は査読を経て学術誌に掲載されたものです。
ScienceDaily(英国王立天文学会のリリースより/45個の全リストも掲載)
SETI Institute による解説記事
論文:Bohl, Lawrence, Lowry & Kaltenegger (2026) “Probing the limits of habitability: a catalogue of rocky exoplanets in the habitable zone”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, 547(3). DOI: 10.1093/mnras/stag028


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