太陽嵐の数時間後に降水が減る——67年分のデータが示した新発見

宇宙・天文
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太陽の表面で大きな爆発が起きて、その「嵐」が地球に届く。すると数時間後から、北米の一部で雨や雪が減っていた——。そんな研究が学術誌『Geophysical Research Letters』に発表されました。太陽の活動が、地上の天気を短い時間でこれほどはっきり動かしているらしい、という話です。

太陽と天気をめぐる長年の謎

太陽が地球の気候に影響していること自体は、昔から知られていました。太陽の活動は約11年の周期で強まったり弱まったりを繰り返していて、その波に合わせて、気温や雨の量がうっすら変わることは過去の研究でも見えていました。ただ、それはあくまで「うっすら」の話。十年単位でならした、ゆるやかな相関です。

わかっていなかったのは、もっと短い時間の反応です。たった一回の太陽の爆発に対して、地球の天気が速く・強く応えるのかどうか。ここがずっと埋められていませんでした。

嵐のあとに減る雨と雪

今回の研究は、その空白に踏み込んだものです。著者はニューハンプシャー大学の物理学名誉教授ヨアヒム・レーダー(Joachim Raeder)氏で、論文は単著。地磁気嵐(太陽から飛んできた電気を帯びた粒子や放射が地球の磁場を乱す現象)が起きたあと、数時間から数日のあいだに、北米の一部で降水——つまり雨と雪——がはっきり減る傾向を見つけました。

しかも、嵐が強いほど減り方も大きい。効果がとくに目立ったのは、カナダのハドソン湾の周辺と、アメリカ西部のロッキー山脈でした。地理的になぜそこに集中するのかはまだ説明がついていませんが、データの上ではパターンがくっきり出ているといいます。さらに、夏や冬にやってくる大きな嵐のほうが、春や秋の嵐よりも降水を抑えやすい、という季節の偏りも見えました。

レーダー氏自身、「太陽が大気に与える影響を11年周期で見てきたが、それは控えめなものだった。今回おもしろいのは、太陽嵐から1日以内という、ずっと強くて短期的な効果が見えてきたことだ」と話しています。

67年分のデータが示したパターン

この発見を可能にしたのは、データの組み合わせ方でした。67年分という長い宇宙天気の記録と、新しく使えるようになった大気の観測データを突き合わせ、コンピュータモデルと「異常マッピング」(平均からのズレを地図にして可視化する手法)で解析しています。

ポイントは、時間の細かさです。1日単位や1か月単位で平均してしまうと、嵐の直後に起きる短い変化は埋もれて消えてしまいます。逆に、時間を細かく刻んで見ることで、大陸規模で広がる降水減少のパターンが初めて浮かび上がった、というわけです。

降水以外の要素——風速、気温、放射、地表の気圧——についても、有意な変化は出ました。ただしこちらは場所がばらけていて局所的で、降水のようにすっきりした結論を引き出すのは難しかったとされています。

考えられるしくみ

では、なぜ太陽の嵐が雨や雪を減らすのか。ここがいちばん肝心なところですが、まだ確定していません。論文で挙げられている可能性の一つは、太陽フレアの電磁放射が「極渦(きょくうず)」を通り道にして、地球の下層の大気まで届く、という経路です。極渦は、北極・南極の上空にできる低気圧と冷たい空気の大きな渦のこと。レーダー氏は、この経路のほうが、「太陽が宇宙線(宇宙からの高エネルギー粒子)の量を変え、それが雲のでき方に影響する」という別の仮説よりも、ありそうだと見ています。

ただし、これも一つの見立てです。地球の大気はものすごく多くの要素が絡み合う複雑なしくみで、太陽からの影響を「これが原因で、これが結果」とたどり切るのは簡単ではありません。

天気予報と気候モデルへの示唆

注意したいのは、この研究で明日の天気予報が変わるわけではない、という点です。そもそも太陽嵐がいつ来るかを予測すること自体がまだ難しく、すぐ実用の予報に組み込めるものではありません。

それでも、長い目で見ると意味は小さくありません。太陽嵐という要素を気候モデルに組み込めれば、長期的な気候の予測の精度を上げられるかもしれない。地球のはるか外側にある力が、地上の暮らしにどうつながっているのかを理解する手がかりにもなります。

解釈上の留意点

この研究は、査読を経て学術誌に載ったものですが、単著で、いまの段階で見つかっているのは「相関」です。嵐のあとに降水が減るという結びつきは見えても、その因果のしくみまでは確定していません。レーダー氏も「他の同種の研究と同じく、私も最終的な答えは出せない。ただ、私の結果は考えられる物理プロセスの候補を絞り込み、とくに、この太陽の影響を大気モデルが再現できるかという課題を突きつけるものだ」と、慎重に位置づけています。

ちなみに、北米だけでなくユーラシア大陸を対象にした過去の研究でも、太陽嵐と降水のあいだに似た相関が報告されています。どちらも、北半球の冬にいちばん大きな変化が出て、大陸スケールで地域差がある、という共通点を持っているそうです。複数の地域で似た傾向が出ていること自体は、この現象が「たまたま」ではなさそうだと考える材料になります。

出典

Powerful Solar Storms May Change Weather Patterns Across North America(ニューハンプシャー大学プレスリリース)

Regional and Seasonal Effects of Geomagnetic Storms on Terrestrial Weather(Geophysical Research Letters・原論文)

Powerful Solar Storms Can Change Precipitation for Parts of North America(Universe Today)

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