アメリカ・バージニア州のヘンリコ郡が、7月から電気料金が約25%上がる見込みだとして、郡の職員に「使わないパソコンは切ってほしい」「窓のブラインドを下ろして日差しの熱を抑えてほしい」と節電を呼びかけました。オフィスの一人ひとりに、日々の細かな我慢をお願いする通知です。そしてこの郡は、全米でも最大級のデータセンターが集まる場所でもあります。膨らみ続けるデータセンターの電力需要と、自治体が払う電気代の値上げ。この二つが同じ土地で起きている、という一件です。

25%の値上げと節電の呼びかけ
きっかけは、ヘンリコ郡マネージャーのジョン・ヴィソルカス氏が6月26日に全職員へ送ったメールでした。宛先は教員や消防・救急の担当者も含む数千人規模。内容は、7月1日から郡の施設で払う電気料金が約25%上がり、郡の年間の電気代は約500万ドル(日本円でおよそ7〜8億円)増える見込みだ、というものです。しかも「今後もさらなる値上げが続くとみている」と、この先も一度きりでは終わらない前提が添えられていました。
そのうえで求められた節電は、どれも身近なものです。退勤時や席を離れるときは照明を消す、一日の終わりにはパソコンやノートPCの電源を落とす、窓のある部屋ではブラインドを調整して日射による室温上昇を抑える、使っていない機器や充電器はコンセントから抜く、電気ヒーターの使用は控える——といった内容でした。電気ヒーターは1台あたり年間150〜300ドルほど郡の電気代を押し上げうる、という具体的な数字まで示されています。ヴィソルカス氏は「一つひとつは小さく見えても、積み重なれば効く」「節約できた1ドルは、職員や住民サービスに再投資できる1ドルになる」と説明しました。
データセンター集積地という舞台
ヘンリコ郡は、州都リッチモンドのすぐ外側に広がる、人口35万人あまりの地域です。首都ワシントンに近く広い土地があることから、近年になってデータセンターが一気に集まり、いまでは全米でも指折りの集積地になりました。2017年にはメタ(旧フェイスブック)がここに施設を建てています。さらに増設の計画も進んでおり、ある事業者は1,100エーカー超の敷地に最大17棟の新設を予定していると報じられています。
データセンターは大量の電力を必要とします。事業者は「自前で電力インフラを整えるので、周辺住民に負担は回さない」と約束することが多いのですが、送電網や発電の設備を新しく作るには時間がかかります。その間のつなぎとして、ガスやディーゼルの発電機に頼るケースが目立ちます。ヘンリコ郡でも、新しいデータセンターの一部が一時的に300台を超えるディーゼル発電機で電力をまかなう可能性がある、と当局が説明しています。それでも施設は地域の送電網につながざるをえず、インフラが追いつくまでの間は、そのコストの一部を一般の電気利用者が負担する構図になりやすい、という指摘があります。
電気代に跳ね返る仕組み
データセンターが増えると、なぜ周りの電気代まで上がるのか。ざっくり言えば、短期間に巨大な需要が生まれ、それを支える送電網の増強費用が、利用者全体に薄く広く乗ってくるためです。バージニア州は昨年、電力料金の引き上げを承認しており、その中にはデータセンターに起因する値上げから一般利用者を守るための措置も含まれていました。それでも実際には、住民の電気代は上がってきています。
州はさらに手を打とうとしています。新しい州予算では、データセンターが使う電力に1キロワット時あたり0.011ドルの税を課すことが決まりました。また、大手電力会社ドミニオン・エナジーは、25メガワットを超える大口利用者(データセンターを含む)を対象にした新しい料金区分を2027年1月から適用します。誰がインフラのコストを負担するのか——家庭か、自治体か、それともテック企業か。その線引きをめぐる綱引きが、制度の面でも続いているわけです。
原因の切り分けと留意点
ここは慎重に見ておきたいところです。今回の25%という値上げを、そのまま「データセンターのせい」と言い切ることはできません。ヴィソルカス氏のメール自体は、データセンターに一言も触れていないからです。この25%は、リッチモンド周辺の複数の自治体が加盟する電力購買団体が交渉したレートで、ヘンリコ郡だけでなく近隣の郡や市も同じ値上げに直面します。郡の当局者は非公式には「値上げの少なくとも一部は燃料費の上昇による」と説明しており、公的にデータセンターと結びつけてはいません。
つまり、「データセンター集積地で電気代が25%上がり、職員に節電が求められた」という事実は確かでも、その二つが直接の原因と結果で結ばれているかどうかは、公には示されていません。データセンターが地域の電気代を押し上げる傾向そのものは各地で確認されていますが、この郡のこの値上げについては、あくまで404 Mediaがデータセンターという文脈の中で報じた、という距離感で受け取るのが正確です。
日本の暮らしとの接点
これはアメリカだけの話ではありません。生成AIの普及を背景にしたデータセンターの建設ラッシュは世界的な流れで、日本でも各地で大型施設の計画が進んでいます。電力を大量に使う施設が増えるとき、その送電網や発電のコストを最終的に誰が負担するのか、という問いは、これからどの国でも避けて通れなくなりそうです。
ヘンリコ郡のメールが妙に印象に残るのは、そこに立つ構図がはっきりしているからかもしれません。「ブラインドを閉めて」「パソコンを切って」と求められたのは、教員や消防・救急といった、日々地域を支える人たちでした。その足元で、桁違いに電気を食う施設のほうは増え続けている——。派手な数字ではなく、こうした地味な節電のお願いのほうに、時代の変わり目がにじんでいるようにも見えます。
出典
元記事:County With 37 Data Centers Asks Schools to ‘Conserve Electricity’(404 Media)
地元紙による続報:Henrico’s electric bill is going up by $5M; the county is asking employees to help(Henrico Citizen)


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