「存在しない花の種」がネット通販にあふれる——生成AIが生んだ“タネ詐欺”

AI・テクノロジー
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虹色に輝くバラ。猫の顔の形に花びらが広がる植物。人の背丈を超える紫色のヒマワリ。どれも実在しない植物だが、その「種」がeBayやAmazon、Etsyといった大手ネット通販で、いくつも売られている。テクノロジー系メディアの404 Mediaが6月30日に報じた。商品ページに並ぶあざやかな写真は、どれも生成AIで作られた偽物だ。ある偽物のバラの種は、eBayが出品者を追い出すまでに37,271回も売れていたという。

実在しない花の種

「珍しい品種の種を、写真つきで売る」こと自体は、生成AIが広まる前からある古い手口だ。そのへんで拾い集めた種を、めったに見ない植物の種だと偽って売る。ただ、以前は“それらしい写真”を用意するのが手間だった。いまは生成AIに指示すれば、鮮やかな花の画像が数秒でできてしまう。おかげで偽の出品が一気に増え、通販側の削除が追いつかなくなっている、というのが今回の話だ。

画像の作り込み具合はさまざまで、少し盛った程度のものから、ひと目で合成とわかる派手なものまである。共通しているのは、実物にはあり得ない色や形をしている点だ。

本物のテディベア・ヒマワリとの落差

よく使われる題材のひとつが、「テディベア」という名前のヒマワリだ。これは実在する品種で、花びらがもこもこして見えることからその名がついている。英国王立園芸協会(RHS)のページで本物の姿を見られる。じゅうぶん愛らしいが、通販に並ぶAI画像はその比ではない。人の背丈を超える巨大な紫色のヒマワリとして描かれ、なぜか隣に見知らぬおばあさんが立っている(大きさ比べのつもりだろうか)。

もっとあからさまな例もある。悲鳴を上げるエビの群れのように見える植物、チョウの形をした花、赤・白・青の“愛国カラー”に染まった茂み——いずれも現実には存在しない。とくに売れ筋なのが「バラの種」と「レインボー(虹色)の種」で、色が派手で目を引くぶん、つい手が伸びてしまうのだろう。ユーザーレビューには「詐欺だ」という声が並ぶが、それでもeBayに表示される販売個数を見ると、こうした種が何千回も買われていることがわかる。先ほどの偽バラは37,271回、巨大なテディベア・ヒマワリの種も1,301回売れていた。

元手のいらない商売

なぜこの手口が長く続くのか。植物やキノコの愛好家が集まる掲示板の管理人が、以前このからくりを説明していた。封筒と切手、ビニール袋、そして種を適当に集める数時間——かかる元手はそれくらいで、あとはほとんどコストがかからない。単価は安くても、数がまとまれば利益になる。だから同じ出品が何年も放置されたまま残る、というわけだ。

買い手の損失と外来種のリスク

買った人がまず失うのはお金だ。届いた種をまいても、写真とはまるで違う植物が生えてくるか、そもそも芽が出ない。欲しかったものは手に入らず、代金だけが消える。

影響はそれだけにとどまらない。こうした偽画像が検索結果を埋めると、「その植物が本当はどんな姿なのか」がネット上でわかりにくくなる。実際、珍しいバラの種を画像検索すると、一時はAIや加工で作られた偽物ばかりが並ぶ状態になっていたという。

より根の深い問題として、外来種の持ち込みがある。注文したものと違う植物だと気づかないままその種をまくと、その土地にいなかった植物が入り込み、在来の生態系を乱すおそれがある。アメリカでは昨年、複数の州が「郵送で届いた素性のわからない種はまかないように」と注意を呼びかけた。これは2020年ごろに広まった別の詐欺とも関係している。注文していない人に勝手に種を送りつけ、その配送記録を使ってサクラのレビューを書く——「ブラッシング」と呼ばれる手口だ。海外の出品者から素性のわからない種を取り寄せることには、こうしたリスクがついて回る。

プラットフォーム側の対応

404 Mediaの取材に対し、eBayは「信頼が市場の土台だ」として、規約に反するAI画像を含む不正な出品を検知・排除する仕組みを持っていると答えた。出品者の監査、フィルタリング、社内の専門チームによるAIを使った監視などで対処し、利用者にも不審な出品の報告を呼びかけているという。一方、EtsyとAmazonは取材に応じなかった。取り締まる側も手は打っているものの、安く大量に作れる偽画像の勢いに追いつけていない、というのが今の状況だ。

見分けるための手がかり

ここで名前が挙がっているのはeBay・Amazon・Etsyという海外の通販だが、「生成AIで作った“うますぎる”画像で釣る」という仕組み自体は、どの売り場でも起こりうる。自衛の目安をいくつか挙げておく。

まず、色や形が現実離れしている花はいったん疑う。虹色のバラや、動物の形に咲く花のように、自然界でまず見ない姿のものは注意したい。気になったら、その植物の名前で調べてみる。まともな園芸サイトや図鑑に載っていない、あるいはAIっぽい画像しか出てこないなら、実在しない可能性が高い。出品者の評価やレビューの中身——具体的な栽培報告があるのか、それとも中身のない絶賛ばかりなのか——も手がかりになる。支払いは、あとで返金を求めやすいカード決済などを選んでおくと安心だ。

出典・もっと知りたい人へ

Scammers Sell Seeds for Exotic AI-Generated Flowers That Don’t Exist(404 Media、Emanuel Maiberg、2026年6月30日)

本物の「テディベア」ヒマワリ(英国王立園芸協会 / RHS)

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