AIで作った曲は誰のもの? ―― 商用利用と著作権の違い

AI・テクノロジー
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AIで作った曲を配信に出したり、SNSで公開したりすることは、いまでは特別なことではなくなった。ただ、「配信してよい」ことと「その曲の著作権を持っている」ことは、法律上は別々に扱われる。この二つを同じものだと考えると、商用で使う場面でずれが出る。この記事では、ライセンス(利用の許可)と著作権の違いを軸に、いまのAI音楽まわりの状況を整理する。

ライセンスと著作権は別物

プラットフォームが与えるのは「使ってよい」という許可(ライセンス)であって、著作権そのものではない。SunoやUdioのようなAI作曲サービスでは、有料プランに入っている間に作った曲について「商用利用してよい」という権利が付与される。無料プランで作った曲は非商用にとどまり、あとから有料プランに入っても、無料時代に作った曲がさかのぼって商用利用できるようになるわけではない、というのが基本の線だ。

ここで見落とされやすいのが、商用利用権が付いても著作権が発生するとは限らない、という点。Sunoは有料ユーザーに対して、自社が持つ権利の範囲で生成物を譲渡するとしつつ、機械学習の性質上、生成物に著作権が生じることは保証しないと規約に明記している。2026年にワーナーとの提携を受けて規約を見直した際にも、「所有」という言い回しは弱まり、著作者はSuno側に残したまま、ユーザーには商用利用のための恒久的なライセンスを与える、という整理に近づいたと報じられている。いずれにせよ、「売ってよい」と「著作権を持っている」は契約上はっきり切り分けられている。詳しい線引きはSunoの権利・所有に関するヘルプで確認できる。

AIが単独で作った曲の著作権

なぜ商用利用権と著作権が切り離されるのか。背景にあるのが、AIが単独で生成したものには著作権が認められにくい、という各国の整理だ。

米国著作権局は2025年1月の報告書で、著作権保護には人間による創作が不可欠であり、プロンプトを入力しただけの生成物は人間が表現をコントロールしているとは言えない、とした。指示がどれほど詳細でも、それだけでは著作者性は生まれないという立場だ。一方で、人間が生成物に創作的な修正・編集を加えた部分や、素材を創作的に選択・配列した部分については保護されうる、という切り分けになっている。米連邦控訴裁も2025年に、著作権法は人間の著作者を要求すると確認した。詳細は米国著作権局のAI特設ページにまとまっている。

日本の文化庁も方向性は近い。2024年の「AIと著作権に関する考え方」では、AI生成物が著作物と認められるには人間の「創作意図」と「創作的寄与」が必要で、単純な指示だけの生成物には著作物性が認められにくい、とされている。ただし判断は個別のケースごと、という点は米国と同じだ。こちらは文化庁のAIと著作権のページで読める。

実務的な意味はシンプルだ。AIが出した曲をほぼそのまま出す場合、その曲は著作権で守られていない可能性が高い。誰かが勝手にコピーして使っても、著作権を根拠に止めるのは難しい。守りたいなら、歌詞を自分で書く、ボーカルを録り直す、演奏や編集を大きく加えるなど、人間の関与を残す必要がある。

レーベルとの和解と「オプトイン」への動き

学習データをめぐる状況も動いている。2024年6月、米レコード業界団体RIAAは大手レーベルを代表して、SunoとUdioを著作権侵害で提訴した。無断でレーベルの楽曲を学習に使った、という主張だ。

そこから流れが分かれた。2025年10月にユニバーサル ミュージック(UMG)がUdioと和解し、ライセンス契約と、アーティストが「オプトイン」できる新しいAI音楽サービスを共同で立ち上げる方向で合意した。11月にはワーナーがSunoと和解している。オプトインとは、アーティスト側が「自分の楽曲や声を学習・生成に使ってよい」と自分で選んで参加する仕組みで、参加すれば学習や生成での利用に対して対価が支払われる。無断で吸い上げる形から、参加する人だけを対象にする形への切り替え、と言える。

ただし、これで全部が片づいたわけではない。ソニー ミュージックは和解しておらず、Sunoとの訴訟を続けている。学習がフェアユース(公正利用)にあたるかを問う重要な審理が2026年7月に予定されており、その結論はこの分野全体の前提を左右しうる。独立系(インディー)のアーティストは大手レーベルの和解の枠の外にいて、別途、集団訴訟を起こしている。オプトインの仕組みも、いまのところ参加したレーベル・アーティストの範囲にとどまる、という理解でよさそうだ。

もう一つ、UMGとUdioが作る新サービスは「壁に囲まれた庭(ウォールドガーデン)」型になると報じられている。そこで作った曲はサービス内で共有・再生する前提で、Spotifyなど外部の配信へ自由に持ち出せるとは限らない。作れる場所と出せる場所が一致しない可能性がある、という話だ。

AIスロップと配信プラットフォームの審査

権利の話とは別に、実際に配信へ出す段階のリスクもある。

一つは「AIスロップ」と呼ばれる、大量生成された質の低いAIコンテンツの氾濫だ。プラットフォーム側はこれへの対応を強めている。SpotifyやApple Musicは2025年後半から、DDEXというAI開示の業界標準に沿って、AI関与の表示を求める動きを進めている。配信代行(ディストリビューター)側も対応が分かれていて、AIコンテンツを受け付けるところと、100%AIの曲は受け付けないところがある。受け付ける場合も、AI関与の申告を必須にしているサービスがある。

もう一つが、審査でアカウントごと止められるリスクだ。既存アーティストの声や特定の楽曲に似せた曲、AI関与を申告しないアップロード、スパム的な大量投稿などは、削除やアカウント停止の対象になりうる。加えてSunoは、生成物が既存曲を侵害していた場合の法的責任をユーザーに肩代わりしない(免責しない)としている。似すぎた曲を出して権利者から指摘された場合、その対応は自分で負うことになる。

曲を出す前の確認点

まとめると、有料プランで得られるのは「商用利用してよい」という許可であって、著作権そのものではない。AIが単独で作った部分は、いまの整理では著作権で守られにくい。だから、商用で本気で使うなら、有料プランを維持したまま作る、作成日時やプラン状況の記録を残す、歌詞やボーカルなど人間の関与を残す、AI対応をうたう配信代行を選んで関与を正しく申告する、あたりが現実的な線になる。

訴訟も規約もまだ動いている最中で、2026年7月の審理の結果次第では前提が変わる部分もある。曲を出す前に、使っているサービスの最新の規約と、配信先のAIポリシーをそのつど確認しておくのが無難だ。

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