「AI時代の仕事はヘルメットと作業靴で」――業界の大物たちが語る意外な雇用論

AI・テクノロジー
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AIで消える仕事の話というと、まず思い浮かぶのはデスクワークだ。事務、調査、コーディング——画面の前で完結する仕事ほど危ない、というイメージがある。ところが、その流れに真っ向から逆らうような発言が、業界のトップたちから相次いでいる。これから伸びるのは、むしろヘルメットをかぶって現場に立つ仕事だ、というのだ。

言い出しているのが小さな声ではない。NVIDIAのジェンスン・フアン、マイクロソフトのサティア・ナデラ、パランティアのアレックス・カープといった面々が、2026年1月にスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム(通称ダボス会議)で、それぞれの雇用観を語った。

ダボス会議という舞台

毎年この時期のダボスには、政治・経済のトップが顔をそろえる。2026年はAI業界の主役たちが集まり、「AIは雇用をどう変えるのか」「いま起きている巨額投資はバブルなのか」をめぐって、それぞれの見立てをぶつけ合った。雇用の話は、その中の一場面だ。

「職人技」を推すフアンとカープ

口火を切ったのはフアン。彼はブラックロックのCEOラリー・フィンクとの対談で、いまのAI投資はバブルではないと断言したうえで、雇用についてこんな見方を示した。AIで失われる仕事が話題になるなか、フアンが挙げたのは「職人技(tradecraft)」だった。配管工、電気工、建設作業員——AIを動かすデータセンターや、その中の設備をつくる人たちのことだ。

背景にあるのは、AIを支える「物理的な土台」をいまから大量に建てなければならない、という事情だ。チップを動かすには、土地と電力と建屋がいる。冷却の配管も、膨大な配線も人の手でつなぐ。フアンはこれを「人類史上最大のインフラ建設」と呼び、エネルギー産業もチップ産業も、その土台の層も雇用を生んでいる、と語った。しかもその多くは職人の仕事で、チップ工場やAI工場を建てる人には10万ドル超の給与もありうる、と続けた。

近い見方を示したのがカープだ。当面、安定した雇用の中心になるのは肉体労働と専門技能だと述べ、職業訓練を受けた技術者の価値が上がっていく、とした。自身が哲学専攻だったことを引き合いに、「エリート校で哲学を学んだ人より、技能を持つ技術者のほうが、これからは引く手あまただ」という趣旨を語っている。

「本当の試練は先」とするナデラ

一方、ナデラは少し冷静な角度から釘を刺した。データセンター建設で生まれる仕事は確かにある。だがそれは一度きりの設備投資にともなうもので、AIが社会のすみずみに広がって生産性を底上げする、という本来の話とは分けて考えるべきだ、というのだ。建設で増える雇用を「一時点の、狭い計算にすぎない」と表現している。

ナデラが本当に問題にしているのは、その先だ。AIが医療や教育、行政や企業の競争力を実際にどれだけ改善できるか。エネルギーという限られた資源を使ってAIの計算を回す以上、それが暮らしの役に立たなければ、社会はいずれその使用を認めなくなる、という。つまり「現場の建設ラッシュ」より、「普及して成果を出せるか」のほうが本丸だ、という立場だ。

個人のスキルについても具体的だった。かつてExcelやWordを覚えることが就職に直結したように、「このAIスキルを身につければ稼ぐ力が上がる」という関係を取り戻す必要がある、と語っている。

雇用予測の振れ幅

そもそも、AIが雇用に与える影響は、見積もりそのものが大きく割れている。調査会社フォレスターは、2030年までに約6%、人数にして約1040万の仕事が置き換わりうると見る。一方、米上院のある委員会の少数党スタッフがまとめた報告は、今後10年で最大9700万の仕事が危うい、とずっと強い数字を出した。ただし後者は、連邦政府の職務記述をChatGPTに分析させて見積もるなどしており、根拠の確かさには注意がいる。

これだけ幅があるということは、誰も正確には読めていない、ということでもある。大物たちの言い分が割れているのも、同じ事情の裏返しだ。

解釈上の留意点

「現場仕事が増える」という話は、短期的にはかなり確からしい。データセンターは世界各地で建設が続いており、その間は人手が要る。ただ、冷静に見ておきたい点もいくつかある。

まず、建設の仕事は建てている間が中心で、建て終わったあとも同じだけ必要とは限らない。次に、投じられる資金の多くはGPUなどの半導体に向かい、電気や配管の工事費はその一部にとどまる、という指摘がある。さらに、職人の給与が高いのは人手不足ゆえで、みんながその道を目指せば下がりうる、という見方もある。フアンの「6桁の給与」も、需給次第で変わる前提の数字だ。

つまり「AIが仕事を奪う」と一括りにするのではなく、どんな仕事が、いつ、どれだけ動くのかを分けて見るのが現実的だ。デスクワークが減る話と、現場仕事が増える話は、別々に進む。大物たちの見立てが食い違っていること自体が、その必要を物語っている。

出典

Future jobs in AI will come with a hardhat and boots, tech bigshots argue(The Register)

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