夜空に見える星のほとんどに、惑星が一つはあると考えられている。実際、すでに6,000個を超える系外惑星(太陽系の外にある惑星)が見つかっていて、確認待ちのものを合わせるとさらに増える。ただ、その一つひとつを巨大望遠鏡でじっくり調べるには、時間も費用もまったく足りない。そこでスタンフォード大学の研究者が、生命がいそうな惑星を先回りして絞り込むための新しいモデルを作った。手がかりにしたのは、その惑星が「大気を長く保っていられるか」という一点だ。

「大気の保ちやすさ」で選ぶという発想
これまで生命探しの目印として重視されてきたのは「ハビタブルゾーン」――恒星から近すぎず遠すぎず、液体の水が表面にありうる距離のことだ。だが、ちょうどよい距離にあるだけでは足りない。大気がなければ表面の温度は安定せず、宇宙からの放射線も防げず、水も保てない。生命の兆候を探すには、まずその惑星が大気をまとっていることが前提になる――というのが今回の出発点だ。
開発者のミシェル・ヒル氏(スタンフォード大学)は、こう話している。「私たちが生命の痕跡を見つけられるとしたら、その方法は惑星の大気を観測することだけです」。遠くの惑星に探査機を送ることはできない以上、大気を遠くから読み取るのが現実的な唯一の手段だ、という見立てがモデルの根っこにある。
分かれ目は地球の8割の大きさ
新しいモデルは「STEHM(地球より小さい惑星のための居住可能性モデル)」と名づけられた。岩石でできた惑星が、その大きさに応じてどれだけ大気を作り、保ち続けられるかを見積もる。
結果はこうだ。太陽に似た恒星のハビタブルゾーンにある岩石惑星なら、地球の半径の8割以上の大きさがあれば、100億年以上にわたって大気を保てる。これは太陽系の年齢(約46億年)の倍を超える長さだ。一方、それより小さい惑星は10億年ほどで大気を失いやすい。ただし地球半径の7割ほどでも、ほかの条件がそろえば大気を保てる見込みはあるという。つまり、大気を保てるかどうかには大きさのおおよその下限がある、ということになる。
金星と火星で確かめたモデル
モデルづくりには「ExoPlex」というプログラム(惑星の半径と内部の圧力から、質量や内部のつくりを計算するPython製のコード)を使った。地球半径の半分から地球サイズまで、6種類の岩石惑星のプロファイルを用意し、内部構造・火山活動・内部の熱・恒星からの放射が、大気の生き残りにどう効くかを一つずつ調べている。
ここで対象にしたのは、地球のように地殻(地面の岩の殻)が動く惑星ではなく、固い一枚の殻でおおわれた「動かない蓋(スタグナントリッド)」型の岩石惑星だ。
モデルが当てになるかどうかは、身近な金星と火星で確かめた。STEHMは、金星の分厚い二酸化炭素の大気と、火星が時間とともに大気を失っていったことの両方を、きちんと言い当てた。じつはこのモデルは、火星の薄い大気がそもそものきっかけだったという。火星を住めるように作り変える「テラフォーミング」が話題になるなか、火星に大気を保てる見込みが過去にでもあったのかを調べようとしたのが始まりだった。モデルの答えは、もっとも有利な初期条件でも、火星の小ささとプレートの動きのなさゆえに、最初から分が悪かった、というものだった。
大気を保つカギは最初の炭素
モデルが浮かび上がらせた最大のカギは、惑星が生まれたときにどれだけ炭素を持っていたか、だった。二酸化炭素は温室効果ガスで、惑星をくるんで熱を逃がしにくくする。その二酸化炭素を供給するのが火山活動だ。
そして火山を動かし続けるのが、マントル(惑星内部の岩石の層)に含まれる「熱を出す元素」――トリウムやウラン、カリウムといった、壊れるときに熱を放つ放射性の物質だ。これらが熱を出しているあいだは、加熱と大気の補充が続く。だが使い果たされるとマントルが冷え、火山が止まり、二酸化炭素の供給が途絶えて、やがて大気が失われていく。
小さな核と厚いマントルを持つ惑星ほど、炭素と熱を出す元素を多く抱えられ、長く大気を補充できる。逆に、生まれたときから内部が熱すぎる「ホットスタート」の惑星は、熱を調整するしくみが早くに溶けてしまい、恒星の放射が強い時期に大気がむき出しになりやすい。強い放射は二酸化炭素の分子を、より軽い酸素と炭素に分解してしまい、軽くなったぶん宇宙へ逃げやすくなる。こうした逃げ出す分子が、ほかの分子まで道連れにして大気を削っていく。
観測の優先順位づけへの活用
このモデルがあれば、望遠鏡を向ける前の段階で「見込みの薄い惑星」を外し、有望な候補に観測時間を集中できる。これから稼働する次世代のミッション――たとえば欧州宇宙機関(ESA)が近くの恒星をまわる岩石惑星を多数調べる「PLATO(プラトー)」など――でカタログがさらに増えるほど、この絞り込みの価値は上がっていく。
ヒル氏は、生命がまだ見つからない理由についても一つの見方を添えている。「星の生と死をとおして作られてきたものの壮大な流れのなかで、私たちはまだとても早い時期にいるのかもしれません。私たちは最初の方なのかもしれない」。宇宙でまだ生命に出会えていないのは、生命を保てる惑星が育つのに必要な長い時間が、多くの惑星でまだ十分にたっていないからかもしれない――そんな可能性だ。
解釈上の留意点
このモデルが今のところ対象にしているのは、地殻が動かない「動かない蓋」型の惑星にかぎられる。地球のようにプレートが動く惑星は別の振る舞いをするとみられ、ヒル氏は次の段階で、そうした惑星のモデルを作って比べる予定だという。
もう一点。このモデルが示すのは「大気を保てそうか」までで、実際にそこに生命がいるかどうかは、まったく別の話だ。大気があることは生命の前提の一つにすぎず、それ自体が生命の証拠ではない。あくまで、膨大な候補のなかから次に詳しく調べるべき惑星を絞り込むための、ふるいの一つと考えるのがちょうどよさそうだ。
出典・参考リンク
- Space.com「Searching for alien life: New model could help scientists home in on habitable exoplanets」(2026年6月23日)
https://www.space.com/space-exploration/search-for-life/searching-for-alien-life-new-model-could-help-scientists-home-in-on-habitable-exoplanets - スタンフォード大学プレス「New model refines search for habitable planets」(2026年6月4日)
https://news.stanford.edu/stories/2026/06/model-search-life-supporting-planets - 論文:The Planetary Science Journal(2026年6月4日掲載)
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/PSJ/ae6804


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