ひろゆら

古生物学

人は混ざり、ウシは混ざらなかった。デニソワ洞窟の骨片のDNAから出てきた未知の絶滅種「ヤク X」

シベリア南部、アルタイ山脈のふもとにあるデニソワ洞窟は、2010年に小指の骨1本からデニソワ人という未知の人類が見つかった場所として知られています。この洞窟からは25万点を超える骨のかけらが出ていますが、その95%ほどは小さすぎて、形を見た...
化学

塩を減らさず、舌に「もっと塩辛い」と思わせる。ブナシメジのタンパク質から出てきた3つの小さな分子

減塩は、味との戦いです。塩を減らせば血圧にはよいけれど、料理はぼんやりする。カリウム塩で置き換える、うま味で補う、といった工夫はすでにありますが、もうひとつ別の考え方があります。入っている塩を減らすのではなく、同じ量の塩を「もっと塩辛く感じ...
テクノロジー

バネをやめたら、跳ぶ高さを自由に決められた。モーターで自分を引き上げる重さ1グラムのロボット

ノミは体長の何十倍も跳びます。筋肉の力そのものでは足りないので、脚にあるバネのような組織に力を少しずつためて、一気に放します。虫ほどの大きさの跳躍ロボットも、ほとんどがこの「ためて放す」方式でした。小さなモーターでバネを巻き、ラッチを外して...
医学・健康

砂糖の2,000倍甘いタンパク質でアイスクリームを作ったら、食後の血糖の山が半分になった

砂糖を減らしたいが、甘いものはやめたくない。この当たり前の願いに、タンパク質で応えようという研究があります。ブラゼインは、西アフリカの果実から見つかった小さなタンパク質で、重さあたり砂糖の500〜2,000倍甘く、体の中ではふつうのタンパク...
医学・健康

菜食でも筋トレの効果は同じだった。ただし筋肉の「量」だけは、肉を食べる人のほうが多く増えた

年をとると筋肉は減ります。減らさないために効くのは筋力トレーニングとタンパク質で、しかも高齢になるほど多めのタンパク質が要るとされています。ここで菜食の人には気がかりがあります。肉や魚を食べない人はタンパク質の摂取量が少なくなりがちで、筋ト...
セキュリティ

たった2文字で、Chrome の「偽ドメイン検出」をすり抜ける。一覧に載っていない文字が、検査を丸ごと無効にしていた

偽サイトの古典的な手口に、見た目が似た別の文字で本物そっくりのドメイン名を作る「ホモグリフ攻撃」があります。たとえばキリル文字の「а」はラテン文字の「a」と見分けがつきません。2017年にキリル文字だけで組んだ apple.com のそっく...
AI

開発者の3割は1日4時間以上 AI を使い、重要な判断で AI を信じるのは7%。3万人の調査が示した「使うが、任せない」

プログラマー向けの質問サイト Stack Overflow が、2026年の開発者調査の結果を公開しました。169か国の開発者・技術者30,903人が答えた大きな調査で、今年の読みどころは AI との距離感です。毎日 AI を使う人の3割は...
物理

ニュートリノ・レーザーは作れない。「原子をそろえる」技術を作ったノーベル賞受賞者が、2本の論文で提案を閉じた

2025年9月、「ニュートリノ・レーザー」という提案が物理学の専門誌に載りました。放射性の原子を極低温まで冷やして一つの量子状態にそろえると、86日かかるはずの崩壊が1分で終わり、そのときに出るニュートリノが一方向にそろった束になる、という...
作曲・DTM

作曲をゼロから学ぶロードマップ――最初の1曲からプロの仕事まで

楽器も楽譜も触ったことがない状態から、依頼を受けて曲を納められる段階まで、作曲を学ぶ道筋をひとつのページにまとめました。各段階の中身は個別の記事で詳しく書いていて、このページは記事が増えるたびに更新します。作曲は「ひらめき」より「工程」でで...
古生物学

【シルル紀の生物】クックソニア – 「最初の陸上植物」の名前は、一つの植物を指していない

名前クックソニア(Cooksonia)。1937年にイギリスの植物学者ウィリアム・ヘンリー・ラングが、標本を集めたオーストラリアの植物学者イザベル・クックソンにちなんで名づけた。基準種は C. pertoni分類陸上植物。維管束植物の最初期...
テクノロジー

紫外線で現れ、日光で消える入れ墨。色素を減らさずに「絵だけ」を点けたり消したりできるインクができた

入れ墨は、入れたら消えない。消すなら、レーザーで何度も焼くしかない。その前提を少しずらす研究が、2026年10月9日に Cell Press の学術誌 Matter & Light に出ました。コロラド大学ボルダー校の Carson J. ...
宇宙・天文

中性子星の合体は0.4秒で終わるはずだった。X 線はそのあと10分近く光り続け、生まれたてのマグネターを指していた

中性子星どうしがぶつかると、ガンマ線の短い閃光が出ます。長くても2秒。金やプラチナのような重い元素はこういう衝突で作られる、というところまでは、2017年の重力波と光の同時観測以来、だいぶ固まってきました。ところが2025年7月4日に起きた...
生物

都市の海の魚は太っていて元気そうに見えた。遺伝子を丸ごと読むと、炎症を起こしていた

沖縄本島の海岸線は、手つかずのまま残っている部分が4割を切っています。それでも港や護岸のすぐそばのサンゴ礁には、鮮やかな青のルリスズメダイがふつうに泳いでいます。見た目は元気で、やせてもいない。では、この魚たちは本当に平気なのか。沖縄科学技...
化学・生命の起源

RNA の糖はホウ素に守られ、そのホウ素は糖が岩から溶かしていた。生命の材料どうしが支え合う「輪」が実在の鉱物で確かめられた

生命の始まりに RNA が先にあった、という「RNA ワールド」の考え方には、昔から弱点が一つあります。RNA の骨組みをなす糖、リボースがもろいことです。砂糖を鍋で熱すると茶色いカラメルになるように、リボースも熱やアルカリ性の水の中でこわ...
古生物学

スフィンクスと同じ岩から100年前に出たワニの頭骨は、名札が間違っていた。CT で調べ直して新属のガビアルになった

ギザの大スフィンクスは、その場所にあった石灰岩の岩盤を削り出して作られています。この石灰岩はモカッタム層と呼ばれ、約4,500万年前、中部始新世の浅い海の底に積もったものです。カイロの近くで同じ地層を掘れば、海の生き物の化石が出てきます。1...
生物

1,000頭を切ったゾウガメが18万頭。でも「倍になった」のではなく、見えなかった分を初めて数えた

インド洋のセーシェルに、アルダブラ環礁という島があります。ここにすむアルダブラゾウガメは、15世紀以降に立ち寄るようになった船乗りに食料として狩られ続け、19世紀には1,000頭を切るところまで減りました。1981年に厳正な自然保護区になり...
宇宙・天文

惑星どうしが砕け合う現場は、若い星の1%にしかなかった。ウェッブが集めた21件の塵が「月ができる瞬間」と重なった

月は、生まれたばかりの地球に火星くらいの大きさの天体がぶつかって、飛び散った破片が集まってできた、と考えられています。太陽ができてから1億年ほど後の出来事です。こういう「惑星どうしが砕け合う現場」は、ほかの若い星のまわりでも起きているはずで...
宇宙・天文

ひとりぼっちなのに星を作っていない銀河が3つ。高校生が公開データから見つけた「大きな銀河にはね返された銀河」の候補

星をほとんど作っていない矮小銀河は、ふつう大きな銀河のそばにいます。大きな銀河の近くを通ると、星の材料になるガスをはぎ取られて、新しい星が作れなくなるからです。逆に、まわりに何もない場所でひとりぼっちの矮小銀河は、ガスを奪う相手がいないので...
歴史・考古学

アレクサンドリアの大灯台を彫った青銅の印章指輪が、海に沈んだ王宮から出た。灯台を描いた指輪は初めて

古代の七不思議のひとつ、アレクサンドリアの大灯台(ファロス)は、紀元前3世紀にプトレマイオス朝の王が建て、高さは100メートルを超えていたとされます。1,000年以上立ち続けたあと、地震を重ねて14世紀に海へ崩れ落ち、今は港の底に石のブロッ...
歴史・考古学

島の人たちが掘り当てた6世紀の修道院は、小さな島の教会ではなかった。金と銀を鋳た坩堝が1,000点を超えて出た

スコットランド西岸、インナー・ヘブリディーズ諸島の小島リズモアには、6世紀に聖モルアグが開いたとされる修道院「リオス・モール」がありました。ただし長いあいだ、それは古い文献と島の言い伝えの中だけの存在で、どこにあったのかも分かっていませんで...
AI

見たことのないポートにも近づき、一度も逃げなかった。「頭の中で未来を試してから動く」AI に、ISS へのドッキングを覚えさせた

先に書いておくと、この記事は AI の Claude を使って書いています。今回取り上げるのは別の会社や大学のモデルの話ですが、AI がどこまでできるかを扱う記事ですので、その点はお含みおきください。国際宇宙ステーション(ISS)に補給船や...
古生物学

【デボン紀の生物】プロトタキシーテス – 木でも海藻でもキノコでもなかった、高さ8メートルの柱

名前プロトタキシーテス(Prototaxites)。「最初のイチイ」の意味。1859年に針葉樹と考えて名づけられた。基準種は P. loganii分類所属不明。2001年以降は巨大な菌類とする説が有力だったが、2026年にスコットランド産の...
宇宙・天文

ビッグバンから30億年後の電波の閃光。地上では「空っぽ」に見えた場所に、ウェッブが母銀河を見つけた

高速電波バースト(FRB)は、宇宙のどこかから届く、長さ千分の数秒の電波の閃光です。2007年に最初の1つが見つかってから、これまでに数千個が記録されています。それでも「何が光らせているのか」はまだ決まっていません。一瞬で終わるうえ、空のど...
生物

大型犬が早く老いる理由は「跳ぶ遺伝子」の抑えが外れることかもしれない。894頭の血液で作ったイヌの老化時計

哺乳類をまたいで比べると、ふつうは体の大きい種ほど長生きです。ネズミは2〜3年、イヌは十数年、ゾウは60年以上、ヒトは80年を超えます。ところがイヌの中だけで比べると、この関係が逆転します。アイリッシュ・ウルフハウンドやグレートデーンのよう...
生物

マウス1匹の「全細胞の家系図」を、DNA に日記を書かせて読んだ。1983年の線虫から43年、哺乳類で初めて

1個の受精卵が分裂をくり返して体ができあがる。その過程で「どの細胞がどの細胞から生まれたか」を1個も漏らさず記録した動物は、これまで1種類しかありませんでした。体長1mm の線虫 Caenorhabditis elegans です。1983...
宇宙・天文

星は相棒を「飲み込む」だけではなかった。褐色矮星を何十億年もかけて食べ続ける星が、300光年先で見つかった

星のそばを回る惑星や褐色矮星の最期は、たいてい「飲み込まれる」と語られます。約50億年後に太陽が赤色巨星にふくらむと、地球はその中にのまれて蒸発する。星と小さな相棒が近づきすぎたときの結末は、どの教科書でもだいたいそう書かれています。ところ...
宇宙・天文

太陽風の「S 字のねじれ」は太陽の表面で生まれていた。ソーラー・オービターが中を通り抜けて、粒子の「指紋」から突き止めた

太陽からは、電気を帯びた粒子の流れ「太陽風」が絶えず吹き出しています。その中を通る磁力線は、ときどき S 字のように急に折り返します。この折り返しは「スイッチバック」と呼ばれ、NASA のパーカー・ソーラー・プローブが太陽のそばで数え切れな...
生物

同じ電気を帯びて反発するはずの DNA が、溝と溝をかみ合わせて並んでいた。20年前の「ジッパー」説を顕微鏡が裏づけた

細胞の核の中には、全部つなぐと約2mになる DNA が、直径わずか数マイクロメートルの空間に押し込まれています。ここには、昔からの小さな謎がありました。DNA はどの分子も同じ負の電気を帯びていて、互いに反発するはずなのに、どうしてそこまで...
テクノロジー

電池を積まず、足の裏の「皮膚」で床から電気を取る。金属の上を100万歩歩いたマイクロロボット

がれきのすき間に入って生存者を探す、原子炉の配管の奥を点検する。数ミリから数センチの小さなロボットには、そんな仕事が期待されています。ところが、いちばん地味なところで足止めされてきました。電池です。重さ1.7g のマイクロロボットを市販の電...
テクノロジー

飛行機から落として、カエデの種のように回って着水し、そのまま帆船になる。部品を足さずに空と海をまたいだロボット

海のどこかで油が流れ出た、嵐が急に発達している。そんなとき、現場の海面にすぐ観測機器を置きたくても、船で行くには時間がかかり、飛行機から落とす使い捨ての観測ブイは長くは働けません。空から降ろせて、着水したあとは長く海面にとどまって動き回れる...