折り紙は、一枚の平らな紙を折るだけで立体を組み上げる。その発想を3Dプリントに持ち込んだ技術が、アメリカのオークリッジ国立研究所(ORNL)から出てきた。素材を薄く積み重ねていく従来のプリントに「折りたたみ」を掛け合わせることで、これまで作りにくかった形を、しかも安く速く仕上げようという試みだ。日本の伝統的な遊びが、最先端のものづくりのヒントになっている。

従来の複合材づくりの壁
軽くて丈夫な複合材(炭素繊維などを組み合わせた材料)は、航空機や自動車の部品で重宝されている。ただ、作るには専用の金型(かたどりの型)が欠かせない。この型がとにかく高くつくうえ、設計から製造にこぎつけるまでの準備も長い。形を少し変えたいだけでも新しい型を起こす必要があり、そこが複合材製造の悩みどころだった。丈夫な部品は作れるが、小回りが利かない。
平面から折り出す立体
ORNLのやり方は、この金型を丸ごと省いてしまう。鍵になるのが「フラット・トゥ・フォルダブル(平らな状態から折りたためる)」という考え方だ。まず部品を平らなパネルとしてプリントし、あとから設計された折り目に沿って畳むと、狙った立体ができあがる。まさに折り紙で、平面のまま刷ってから最後に立ち上げる。
この方式だと、型を使わないぶん、これまでの積層プリントでは難しかった複雑な形にも手が届く。しかもプリンター本体より大きな構造物すら作れるという。平らなうちに刷ってから折るので、機械のサイズに造形物が縛られにくいわけだ。
素材を一体化させる層構成
仕組みはいくつかの層でできている。土台になるのは、ナイロンやガラス繊維、樹脂をしみ込ませた繊維といった高強度の布。その上に、接着役をつとめる層(熱可塑性ポリウレタン)を重ねる。さらにその上へ、補強材を3Dプリントで盛っていく。補強材には、軽さを狙うなら炭素繊維入りのABS樹脂、硬さや形の作り込みを重視するならスチレン系やエポキシ系の樹脂、と目的に応じて使い分ける。
ポイントは、これらの素材が分子レベルで結びつくように選ばれていること。開発を率いるORNLのスティーブン・グゾレク氏は、しっかり接着する組み合わせをあらかじめ材料科学の観点から選んだ、と説明している。おかげで、柔らかい布の部分と硬い補強の部分が、別々のパーツではなくひとつの部品として一体になる。折り目の位置や補強のパターンも最初から設計に織り込まれていて、平らな状態から目的の立体へと変形していく。
金型レスがもたらす効率化
効いてくるのは、やはりコストと時間だ。ORNLがある設計で試作したところ、従来の金型を使う複合材製造と比べて、製造時間をおよそ95%、コストをおよそ90%減らせたという。これは特定の設計を一つ試したときの結果なので、どんな部品でも同じだけ縮むと決まったわけではないが、金型をなくすことの効き目の大きさはうかがえる。
金型がいらなければ、型を保管しておく場所や手間も消える。平らなシート材の上に部品を直接プリントできるので、必要なときにすぐ刷って畳む、という身軽な作り方につながる。熱可塑性・熱硬化性のどちらの樹脂にも対応できる点も、使い道の広さを後押しする。
実用化までの距離
とはいえ、いまは研究所で実証された段階だ。ORNLはこの技術で特許を出願済みで、企業への技術提供(ライセンス)に向けた準備を進めている、としている。裏を返せば、身の回りの製品にこの作り方が降りてくるのはこれからで、量産の現場でどこまでスケールするかはまだ見えていない。折り紙の発想が本当に工場を変えるのか、答え合わせはこの先ということになる。
それでも、平らに刷って折るだけで丈夫な立体ができる、という筋道が現実の装置で示された意味は小さくない。型に縛られてきた複合材づくりに、別の入り口が一つ増えたことになる。
出典
Oak Ridge National Laboratory(ORNL)プレスリリース「Advanced 3D printing creates origami-inspired structures」(2026年6月15日)/New Atlas「Origami 3D printing method eliminates costly molds」(2026年7月1日)


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