血中ビタミンCと脳の関係——日本の高齢者2000人超を調べた研究

医学・健康
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血液中のビタミンCが少ない人ほど、脳の灰白質(かいはくしつ=神経細胞が集まっている部分)が少なめで、記憶や注意に関わる脳のネットワークのつながりも弱い傾向があった。日本の高齢者2000人以上を調べた研究で、そんな関連が報告されました。

気になる話ですが、先に大事なところを。これは「ビタミンCを摂れば脳に効く」と示した研究ではありません。血液中のビタミンCの量と、脳の状態とのあいだに“関連が見えた”という段階のものです。掲載先はオープンアクセスの医学誌PLOS One、査読を経た論文で、2026年6月10日に公開されました。

ビタミンCと脳をめぐる背景

ビタミンCは、体のサビつき(酸化)を抑える代表的な抗酸化物質です。あまり知られていませんが、脳の中ではとくに大切に扱われていて、脳や脊髄をひたす液(脳脊髄液)の中の濃度は、血液中の2倍以上あることが報告されています。それだけ脳がビタミンCを必要としている、ということです。

これまでにも、ビタミンCを多くとる食生活の人ほど、加齢にともなう物忘れや認知機能の低下が起きにくい、という関連は報告されてきました。ただ、その多くは「食事でどれだけとっているか」を尋ねる調べ方でした。実際に血液を測ったビタミンCの量が、脳そのものの“作り”やネットワークとどう関係するのかを直接見た研究は、ほとんどありませんでした。今回の研究は、そこを大きな人数で確かめようとしたものです。

見えてきた関連

研究チームは2044人分の脳MRIと血液を分析しました。すると、血液中のビタミンCが少ない人ほど、頭の大きさで補正した灰白質の割合が小さく、記憶や注意などに関わる脳の領域のまとまり(デフォルト・モード・ネットワーク=ぼんやりしているときにも働く脳のつながり)の結びつきも弱い、という傾向がはっきり出ました。

この関連は、年齢や持病、生活習慣といった“他に効きそうな要因”をまとめて差し引いたあとでも残りました。つまり、それらでは説明しきれないかたちで、ビタミンCの量と脳の状態が結びついていた、ということです。

ただし、ここは冷静に見ておきたいところ。関連の強さそのものは、統計的にははっきりしていても、大きくはありません。論文自身も、ビタミンC一つで脳の作りが決まるわけではなく、血圧や血糖といった他の生活習慣要因と同じくらい“小さめ”の効き方だと書いています。さらに、ビタミンCの量は、簡単な認知機能テスト(MMSE)の点数とは直接には結びつきませんでした。結びついていたのはあくまで脳の構造やネットワークの側で、それらが結果として認知機能と関係している、という間接的な話です。

2000人超を調べた方法

調査の舞台は、青森県弘前市の岩木地区で続けられている大規模な健康調査です。参加したのは64歳を超える2044人で、年齢の中心は69歳、およそ6割が女性でした。全員が同じ3テスラMRIで脳を撮影し、あわせて一晩の絶食後に採血して、血液中のビタミンC(アスコルビン酸)を測っています。

脳の画像は、専用ソフトで灰白質・白質・頭蓋内の体積を計算し、頭の大きさの個人差を補正したうえで比較しました。ネットワークのつながりは、脳の構造の“共通した揺らぎ方”をもとに割り出しています。年齢・性別・学歴・認知機能テストの点数・糖尿病・高血圧・脂質異常・喫煙・飲酒・運動習慣を差し引いたうえでの分析なので、単純な思いつきの相関ではありません。

食事と健やかな脳の老化

ヒトは体の中でビタミンCを作れず、食べ物からとるしかありません。かんきつ類やいちご、トマト、じゃがいも、緑の葉物野菜などが供給源です。今回のような関連が今後の研究でも確かめられれば、ふだんの食事が、脳の老いかたにゆるやかに関わっている一つの手がかりになるかもしれません。

とはいえ、そう身構える話でもありません。日々の野菜や果物からビタミンCが足りている人にとっては、当たり前の食生活を続けることが、まわりまわって脳にもよさそう、というくらいの受け止めがちょうどよさそうです。

解釈上の留意点

この研究はある一時点で全員をまとめて調べた横断研究(おうだんけんきゅう)です。写真を一枚撮ったようなもので、どちらが原因でどちらが結果か、時間の前後を追えません。ビタミンCが脳を守ったのか、健康な脳の人がたまたまビタミンCの多い暮らしをしていたのか、あるいは別の要因が両方に効いていたのか——そこは、この調べ方では区別できません。

血液の測定が、一人につき一回きりだった点も研究チームは認めています。ビタミンCの量は日々ゆらぐため、一回の値だけでその人の“ふだんの状態”を言い切るのは難しく、関連はむしろ控えめに出ている可能性があります。参加者が比較的教育歴の高い日本の高齢者にかたよっている点、食事全体の量や体格(BMI)までは踏み込めていない点も、結果を広く当てはめるうえでの限界として挙げられています。

もう一つ、フェアに触れておきたいのは資金の背景です。血液中のビタミンCの測定は、野菜飲料などを手がける企業(カゴメ)が担い、同社は研究費の一部も提供しています。著者のうち2名は同社の社員です。論文には「会社は研究の設計・分析・公表の判断には関わっていない」と明記されており、日本医療研究開発機構(AMED)の助成も受けていますが、こうした関係があること自体は知っておくと読み方が落ち着きます。

派手な結論をうたっていないぶん、「これを飲めば脳に効く」といったサプリ寄りの情報とは、きちんと距離を置いて読める研究です。研究チーム自身、次はもっと多様な人たちで、時間を追って確かめる必要がある、と締めくくっています。

出典・もっと知りたい人へ

元論文(PLOS One、オープンアクセス・査読済み):Nagaya H, et al. (2026) “Plasma vitamin C levels are associated with brain structural networks on MRI: A large cohort study.” PLOS One 21(6): e0348504. 論文ページを開く

やさしい解説(英語):Scientists discover a surprising link between vitamin C and brain health(ScienceDaily)

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