転がって逃げるヘビは、体を車輪にしながら頭だけ前を向いていた。東邦大・京大が動画で解いた「転がり運動」

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ボルネオ島の落ち葉の下に住む小さなヘビが、驚くと体を丸めて車輪のように転がって逃げます。ハダカメヘビ属(Pseudorabdion)のヘビで、全長は30cm に満たない種が多い仲間です。この転がる逃げ方は2023年に初めて学術誌に記録されましたが、どうやって転がっているのかは分かっていませんでした。東邦大学の小島陽介、京都大学の西川完途らの研究グループは、現地で撮った動画を解析して、その仕組みを明らかにしました。論文は2026年10月19日に Current Biology に載り、京都大学が10月20日に研究ニュースを出しています。

13匹すべてが転がった

研究グループは、マレーシア・サラワク州のクバ国立公園で、ハダカメヘビ属のヘビを13匹集めました。内訳は P. saravacense が11匹、P. longiceps と P. collaris が1匹ずつです。比較のために、同じように落ち葉の下に住む近縁のカラマリア属(Calamaria)のヘビも6匹用意しました。

実験は単純です。細長いレーストラックの端にヘビを置き、軽くつついて動かし、その様子をカメラで撮ります。ハダカメヘビ属の13匹は全部が転がりました。カラマリア属の6匹は1匹も転がらず、ふつうに蛇行して進みました。転がったときの最高速度は、同じヘビが蛇行するときの約4倍でした。幅の狭いトラックの上でも、転がりながらまっすぐ安定して進みます。

西川は京都大学の研究ニュースで、この行動はサラワク州での生物相の基礎調査の途中で偶然見つけたもので、既存の仮説を確かめる研究ではなく、素朴な疑問から始まった新しい発見だと話しています。

転がって逃げるヘビは、体を車輪にしながら頭だけ前を向いていた。東邦大・京大が動画で解いた「転がり運動」

車輪なのに、頭はぶれない

動画を細かく見ていくと、ヘビは体全体をひとつの輪にして回しているのではありませんでした。まず体を強く曲げて輪に近い形を作り、尾で地面を蹴って一瞬だけ宙に浮きます。空中で体は S 字の弓なりになり、その弓の片側を振り下ろして地面に打ちつけます。次は反対側です。体の左右を交互に地面に当てながら、後ろ半分を大きく回転させて前へ進んでいきます。車軸のある車輪とは違う、体の各部分を順番に回す転がり方です。

ここで研究グループが注目したのが頭です。体の後ろ半分がこれだけ大きく回っているのに、頭は常に進行方向を向き、地面からの高さもほとんど変わりません。目や舌といった感覚器官が付いた頭を安定させたまま、残りの体だけを回しているわけです。論文の題名にある「頭の安定化」はこのことを指しています。頭を安定させる巧みな体の制御が、速くて制御された転がりを支えていると研究グループは考えています。

転がって逃げるヘビは、体を車輪にしながら頭だけ前を向いていた。東邦大・京大が動画で解いた「転がり運動」

形だけでは分からない動き

ヘビの体は、見た目には蛇行して進むための形をしています。それでも、体の使い方しだいで、形からは予想できない動きができる。研究グループはこの研究を、動物の運動能力を体の形だけから推し量ることの難しさを示す例だとしています。

分かっていないことも残っています。なぜこの属だけが転がるようになったのか、どのくらいの距離を転がり続けられるのか、体の構造や神経の制御に他のヘビと違うところがあるのかは、今回の論文では扱われていません。Smithsonian Magazine の取材に応じたブラウン大学の Jessica Tingle は、この研究には関わっていませんが、転がりの仕組みを初めて分解して見せた点を評価しています。落ち葉の下の小さなヘビが、ヘビの動き方の教科書に新しい1項目を足したことになります。

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