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2026年9月13日の午後2時49分(米東部夏時間、日本時間では14日の未明)、フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地からスペースXのファルコン9が飛び立ちました。積み荷はルクセンブルクの衛星通信会社SESの通信衛星3機。それだけなら週に何度もあるいつもの打ち上げですが、この便はファルコン1、ファルコン9、ファルコンヘビーを合わせたファルコン系ロケットの通算700回目の飛行でした。
700回という数字だけでも大きいのですが、今回の打ち上げにはもうひとつ別の数字が並んでいます。使われた1段目ブースターは、これが29回目の飛行でした。この2つの数字を並べると、いまの再使用ロケットがどこまで来ているのかが、だいたい見えてきます。

SESの中軌道通信網を仕上げた便
今回の3機は、SESが運用する「O3b mPOWER」という衛星通信システムの11号機から13号機にあたります。O3b mPOWERは、高度約8,000kmの中軌道(MEO)を回る衛星で通信を中継する仕組みで、静止衛星より地球に近いぶん通信の遅れが小さく、低軌道の衛星群よりは少ない機数で広い範囲をまかなえるのが売りです。ボーイングが製造し、2022年12月の初号機から今回まで、13機すべてをファルコン9が運びました。
打ち上げの約9分後、1段目は大西洋に待機していたドローン船「A Shortfall of Gravitas」に着地。2段目はそのまま衛星を運び続け、打ち上げからおよそ33分半後に1機目を切り離し、7分おきに残り2機を放出して、14分ほどで3機の分離を終えました。衛星はこのあと自身の電気推進で高度を整え、試験を経て2027年半ばごろに商用サービスへ加わる予定です。すでに10機が稼働中で、これで初期構成の13機がそろったことになります。
1段目B1080は29回目の飛行
今回の1段目は「B1080」という機体番号のブースターで、飛んだのはこれで29回目です。過去の履歴を見ると、民間宇宙飛行士ミッションのAx-2とAx-3、欧州の宇宙望遠鏡ユークリッドの打ち上げ、国際宇宙ステーションへの補給便を2回、同じSESの通信衛星アストラ1P、それにスターリンク衛星の打ち上げ22回と、かなり幅広い仕事をこなしてきています。
29回という数字はファルコン9の中でも最多ではなく、記録は別のブースターがすでに30回台に乗せています。それでも、望遠鏡や有人ミッションのような一発勝負の便を運んだあとも、同じ機体が当たり前のように衛星の打ち上げに戻ってくる。この「当たり前」が、700回のうちのかなりの部分を支えています。
700回の始まりは、3回連続の失敗だった
ここで少し時計を戻します。ファルコン系の最初の1機、ファルコン1が初めて飛んだのは2006年3月でした。この小型ロケットは合計5回飛び、そのうち成功したのは2回だけ。最初の3回は続けて失敗しています。当時のスペースXは、次も落ちたら会社が続かないと言われるような状況で、4回目の飛行でようやく軌道に届きました。
そのファルコン1の役目を引き継いで、2010年にファルコン9が登場します。以来、ファルコン系700回のほとんどはこのファルコン9が飛んだもので、大型のファルコンヘビーは今のところ13回です。700回のうち680回あまりが「当初は5回しか飛べなかったロケットの後継機」によるものだと考えると、数字の重みが少し違って見えてきます。
そして700回のペースを決定的に変えたのが、1段目の回収と再使用です。1機を29回飛ばせるなら、ロケットを1本ずつ作る時代の何倍もの頻度で打ち上げられる。今回の便は、その仕組みが十数年かけてどこまで来たかを、ひとつの打ち上げで見せた形です。

今年だけで105回、そして次は
今回の打ち上げは、2026年に入ってからのファルコン9としては105回目、ファルコンヘビーの2回を合わせたスペースXの軌道ミッションとしては107回目でした。9月中旬の時点でこの数なので、単純に週2回以上のペースで飛んでいる計算になります。
一方で、スペースXは今年、次世代機スターシップの弾道飛行試験を2回行っていて、初めて軌道に乗せる3回目の試験に向けた準備を進めています。ファルコン9が700回の実績を積み上げている隣で、その次のロケットはまだ「初めて軌道へ」の段階にいる。この対比も、宇宙開発の現在地を分かりやすく表しています。
SESの衛星3機は、これから数か月かけて所定の軌道へ上がり、来年には通信網の一部として働き始める予定です。ファルコン9のほうは、この記事を書いている間にも次の便の準備が進んでいるはずです。
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