【シルル紀の生物】クックソニア – 「最初の陸上植物」の名前は、一つの植物を指していない

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名前クックソニア(Cooksonia)。1937年にイギリスの植物学者ウィリアム・ヘンリー・ラングが、標本を集めたオーストラリアの植物学者イザベル・クックソンにちなんで名づけた。基準種は C. pertoni
分類陸上植物。維管束植物の最初期の仲間とされるが、属としてのまとまりは疑われている(本文参照)
時代シルル紀中期(ウェンロック世、約4億3200万年前)からデボン紀前期(約3億9300万年前)
発見地基準種はイングランドとウェールズの境界地方(ヘレフォードシャーのパートン採石場)。ほかにアイルランド、チェコ、ブラジル、中国など世界各地
大きさ高さ数cm。茎の太さは0.3〜3mmで、種類によって10倍の開きがある
体のつくり葉も根もない。細い茎が二股に数回分かれ、先端にそれぞれ胞子の袋をつける

クックソニアは、シルル紀の陸上に生えていた、高さ数センチの小さな植物です。葉も根もなく、二股に分かれる細い茎の先に胞子の袋をつけただけの姿で、図鑑では「最初の陸上植物」「最初の維管束植物」として紹介されることが多い生物です。ただし、この名前のもとにまとめられている化石は一つの植物ではなく、似た形をした複数の植物の寄せ集めであることが分かっています。

姿と暮らし

化石は、岩の面に貼りついた細い軸の圧痕として見つかります。軸は太さ1ミリ前後のものが多く、途中で二股に分かれ、それをもう一、二度くり返して、先端に胞子の袋(胞子嚢)をつけます。胞子嚢は軸の先が広がったラッパ形で、上に蓋があり、そこが開いて胞子を飛ばしました。葉はなく、根もありません。地面の下には横に這う茎があったと考えられていますが、化石には残っていません。

軸の表面には、気孔をもつものがあります。気孔は、現在の植物では空気を取り込んで光合成をするための穴ですが、クックソニアでは軸の先端近くに集まっており、胞子嚢に水を引き上げるための蒸散に使われたという見方もあります。軸の中心に水を運ぶ管(仮道管)が確認されたのは、1992年にイングランドとウェールズの境界地方のプリドリ世の地層から出た C. pertoni の1標本が最初で、これがクックソニアを維管束植物とみなす根拠になっています。ただし、管が確かめられた標本はごく一部です。

クックソニアが生えていたのは、川や海の近くの湿った低地です。同じ地層からは、胞子の化石や、軸だけの別の小さな植物、初期の節足動物の破片が一緒に出ます。茎の太さがとくに細いものは、支持組織と水を運ぶ組織で断面が埋まってしまい、光合成をする組織を置く余地がないため、自分で自分を養えず、化石に残っていない別の世代の体(配偶体)に依存していた可能性が指摘されています。この議論は2008年に出され、2018年にチェコから報告された最古のクックソニア(C. barrandei、約4億3200万年前)は、軸が太く、自立して光合成できた側に入ると判断されました。

一つの名前に、いくつもの植物

最初の標本は、1934年にイザベル・クックソンがイングランドとウェールズの境界地方で集めました。クックソンはオーストラリアの植物学者で、同じ年代の植物をオーストラリアでも研究しており、1935年にはラングとともにバラグワナチアを記載しています。ラングは1937年にこの標本を記載し、クックソンの名を属名にしました。

ラングが属の目印にしたのは、形です。葉のない細い軸が二股に分かれ、先端に短く幅の広い胞子嚢をつける。この条件に合う化石は、その後、世界各地のシルル紀からデボン紀前期の地層から次々に見つかり、クックソニアの名で報告されました。1980年にはアイルランドのウェンロック世の地層から、当時としては最古の記録が出ています。

形で集めた化石を細かく調べると、中身が揃わないことが分かってきました。同じ C. pertoni の形をした胞子嚢の中から、壁の構造が異なる数種類の胞子が見つかり、胞子の違いで亜種に分けられました。胞子が違うということは、別の植物だということです。水を運ぶ管が確かめられたのは、上に書いたとおり1標本だけで、ほかの「クックソニア」に管があったかどうかは分かっていません。軸の太さも、同じ属とは思えないほど種類ごとに開きがありました。

2010年、ベルギーのリエージュ大学のポール・ゴネズとフィリップ・ジェリエンヌは、クックソニアとして記載されてきた種をまとめて見直しました。ラングの原記載には基準標本の指定がなかったため、パートン採石場の標本を基準標本に定め、属の定義をラッパ形で蓋のある胞子嚢をもつものに絞りました。系統解析では、クックソニアとされてきた種は一つの系統にまとまらず、維管束植物の根元にあたるものから、ヒカゲノカズラ類の側に入るものまで、ばらばらの位置に散りました。この結果、属に残ったのは C. pertoni とブラジル産の C. paranensis の2種だけで、いくつかの種は別の属(アベルレムニアなど)に移され、残りは所属を保留とされました。

クックソニアという名前は、現在では「初期の陸上植物のうち、葉がなく、二股に分かれ、先に胞子嚢をつける姿のもの」という形の段階を指す言葉に近くなっています。「最初の陸上植物」として図鑑に描かれる一本の緑の軸は、実際には複数の系統の植物が同じ姿にたどり着いた結果を、一つの名前で呼んでいるものです。

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出典

  • Lang, W. H. (1937). On the plant-remains from the Downtonian of England and Wales. Philosophical Transactions of the Royal Society of London B 227, 245–291. https://doi.org/10.1098/rstb.1937.0004
  • Edwards, D. & Feehan, J. (1980). Records of Cooksonia-type sporangia from late Wenlock strata in Ireland. Nature 287, 41–42. https://doi.org/10.1038/287041a0
  • Edwards, D., Davies, K. L. & Axe, L. (1992). A vascular conducting strand in the early land plant Cooksonia. Nature 357, 683–685. https://doi.org/10.1038/357683a0
  • Boyce, C. K. (2008). How green was Cooksonia? The importance of size in understanding the early evolution of physiology in the vascular plant lineage. Paleobiology 34, 179–194. https://doi.org/10.1666/0094-8373(2008)034[0179:HGWCTI]2.0.CO;2
  • Gonez, P. & Gerrienne, P. (2010). A new definition and a lectotypification of the genus Cooksonia Lang 1937. International Journal of Plant Sciences 171, 199–215. https://doi.org/10.1086/648988
  • Libertín, M., Kvaček, J., Bek, J., Žárský, V. & Štorch, P. (2018). Sporophytes of polysporangiate land plants from the early Silurian period may have been photosynthetically autonomous. Nature Plants 4, 269–271. https://doi.org/10.1038/s41477-018-0140-y

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