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| 名前 | パラサウロロフス(Parasaurolophus)。「サウロロフスに近いもの」の意味。サウロロフスは「トサカのあるトカゲ」 |
| 分類 | 恐竜 鳥脚類 ハドロサウルス科 ランベオサウルス亜科 |
| 時代 | 白亜紀後期カンパニアン(約7650万〜7350万年前) |
| 発見地 | カナダ(アルバータ州)、アメリカ(ニューメキシコ州・ユタ州) |
| 全長 | 推定7.5〜9.5m |
| 体重 | 推定2.6〜5t(推定法によって幅がある) |
| 頭骨の長さ | トサカを含めて約1.6m(P. walkeri の原記載標本) |
パラサウロロフスは、白亜紀後期の北アメリカにいた植物食恐竜で、カモノハシ恐竜と呼ばれるハドロサウルス類のなかまです。頭の後ろへ1m以上も伸びる管状のトサカが特徴で、その中には鼻から続く空気の通り道が折り返して通っています。このトサカが何のためにあったのかは、記載から100年のあいだに10を超える説が出され、現在は音を響かせる共鳴器だったとする考えが有力です。1997年には化石のCTデータから、その鳴き声を計算で再現する試みも行われました。
姿と暮らし
最初の化石は1920年、トロント大学の調査隊がカナダ・アルバータ州のレッドディア川沿いで見つけました。頭骨と胴体の大部分がそろい、尾の大半と膝から下の後ろ脚だけが欠けています。1922年にウィリアム・パークスが新属新種 Parasaurolophus walkeri として記載しました。種名は当時ロイヤル・オンタリオ博物館の理事長だったバイロン・エドマンド・ウォーカーにちなみます。この標本は今もロイヤル・オンタリオ博物館にあり、パラサウロロフスの骨格として最も完全なものです。
体つきはほかのハドロサウルス類と同じで、太い後ろ脚と、それより短い前脚を持ちます。ふだんは四足で歩き、速く走るときは後ろ脚だけで走ったと考えられています。口の前方は歯のないくちばしで、奥には何百本もの歯が列をなして束になった「歯のバッテリー」があり、すり減った歯の下から次の歯が順に生えてきました。植物をくちばしで噛み切り、奥歯ですりつぶして食べる仕組みです。
トサカは、ほかの恐竜ならば鼻の穴のあたりにある前上顎骨と鼻骨が、そのまま後方へ長く伸びてできています。鼻から入った空気はトサカの中の管を先端まで上がり、折り返して戻り、のどへ向かいます。トサカの表面にこの管が開く穴はありません。パークスは原記載のとき、首の背側の骨にある切れ込みに注目し、トサカの先端と背中が靭帯でつながっていた可能性を書いています。
種は3つが認められています。アルバータ州のダイナソーパーク層から出る P. walkeri、ニューメキシコ州カートランド層の P. tubicen(「ラッパ吹き」の意味。1931年にカール・ウィーマンが命名)、同州フルートランド層とユタ州カイパロウィッツ層の P. cyrtocristatus(「曲がったトサカ」の意味)です。P. cyrtocristatus のトサカは短く下へ強く曲がっているため、長いトサカの種のメスか若い個体ではないかという意見が1970年代から続いていました。2021年にゲイツらが新しい頭骨をもとに再検討し、トサカの形とは別に頭の後ろの骨に固有の特徴があることから、独立した種だと確かめています。
生きていた場所は、当時北アメリカを南北に貫いていた内海の西岸に広がる、川と氾濫原の低地です。アルバータ州の同じ地層からは、ヘルメット形のトサカを持つコリトサウルスやランベオサウルス、角竜のセントロサウルス、肉食恐竜ゴルゴサウルスの化石が出ています。トサカの形の違う何種類ものカモノハシ恐竜が、同じ土地で暮らしていました。
トサカは何のためにあったのか
管状のトサカの用途については、記載から半世紀のあいだに次々と説が出ました。1924年にオテニオ・アーベルは、戦うための武器だと考えました。ハドロサウルス類は水辺で暮らす半水生の動物だとする見方が当時は強く、1933年にアルフレッド・ローマーはトサカをシュノーケルだとしましたが、トサカの先端に穴がないことがこの説の難点です。1935年にチャールズ・スターンバーグは、潜ったときに水が肺に入らないようにする空気のたまりだとし、1945年にエドウィン・コルバートは、長く潜るための空気の貯蔵庫だとしました。1947年にはマルティン・ヴィルファルトが、動く鼻の管を取り付ける土台だとする案を出しています。
その後、においを感じる組織を広げるための空間(1960年代、ジョン・オストロム)、塩分を排出する腺の入れ場所(ハルシュカ・オスモルスカ)、茂みをかき分けるときに頭を守る板、脳を冷やす放熱器など、さまざまな説が加わりました。
音を出す道具だとする考えは、1931年にウィーマンが P. tubicen を命名したときに出ています。ウィーマンはトサカの中の管の形を、ハクチョウの気管が胸骨の中で折り返している構造になぞらえ、音を響かせる共鳴器だと考えました。この考えを計算で検討したのが、1981年のデイヴィッド・ワイシャンペルの論文です。ワイシャンペルは鼻腔の大きさと形を管楽器の管として扱い、ランベオサウルス亜科のトサカが共鳴に向いた構造であること、体の大きな成体は低い音、幼体は高い音を出したこと、成体の管から横に張り出した袋(側方憩室)が音の一部の成分を抑える働きをしたことを示しました。
1997年には、サンディア国立研究所の計算機科学者カール・ディーガートと、ニューメキシコ自然史科学博物館の古生物学者トム・ウィリアムソンが、化石からその音を再現しました。もとになったのは1995年にニューメキシコ州ファーミントン近郊で見つかった P. tubicen の頭骨で、トサカの長さは約1.4mあります。頭骨を3mm間隔で約350枚CT撮影し、密度の差から骨と岩を区別してトサカの内部を立体化すると、それまで言われていたトロンボーンのような単純な折り返しの管ではなく、管の本数が多く、内部に別の部屋もあることが分かりました。この形に空気を通したときの固有振動数を計算した結果は、音程を変えられる低いうなり声でした。研究者らは個体ごとに声が違っていた可能性が高いとし、鳥の声に近かったかもしれないと述べています。
その後の研究も、この見方を補強しています。2009年にデイヴィッド・エヴァンスらがランベオサウルス亜科の頭骨をCTで調べたところ、脳の嗅球は小さく、においの説には不利でした。一方で内耳の蝸牛にあたる部分は長く伸びていて、低い音を聞くことに重きを置いた耳だと解釈されています。トサカが低い声を出し、耳が低い声を聞く向きに整っていた、という組み合わせです。
2013年にはユタ州カイパロウィッツ層から見つかった幼体の全身骨格が記載されました。全長約2.5mで、成体の4分の1ほどしかなく、死んだときの年齢は1歳前後と推定されています。この個体のトサカは管ではなく、頭の上に低く盛り上がった半円形でした。近縁のコリトサウルスでは頭骨が成体の半分ほどの大きさになってからトサカが伸び始めるのに対し、パラサウロロフスは4分の1に達する前から伸び始めていたことになります。管の短い幼体の声が高かったというワイシャンペルの推定とも、矛盾しない形です。
トサカの用途が1つに決まったわけではありません。目立つ形と大きさからして、仲間を見分けたり相手に見せたりする視覚的な役目も同時に担っていたと考えられています。現在の定説を一言でまとめると、鳴き声を響かせ、姿でも見せる、仲間どうしのやりとりの道具だったということになります。




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出典
Weishampel, D. B. (1981). Acoustic analyses of potential vocalization in lambeosaurine dinosaurs (Reptilia: Ornithischia). Paleobiology, 7(2), 252–261. https://doi.org/10.1017/S0094837300004036
Sandia National Laboratories (1997年12月5日). Scientists Use Digital Paleontology to Produce Voice of Parasaurolophus Dinosaur. https://newsreleases.sandia.gov/scientists-use-digital-paleontology-to-produce-voice-of-parasaurolophus-dinosaur/
Evans, D. C., Ridgely, R., & Witmer, L. M. (2009). Endocranial anatomy of lambeosaurine hadrosaurids (Dinosauria: Ornithischia): A sensorineural perspective on cranial crest function. The Anatomical Record, 292(9), 1315–1337. https://doi.org/10.1002/ar.20984
Farke, A. A., Chok, D. J., Herrero, A., Scolieri, B., & Werning, S. (2013). Ontogeny in the tube-crested dinosaur Parasaurolophus (Hadrosauridae) and heterochrony in hadrosaurids. PeerJ, 1, e182. https://doi.org/10.7717/peerj.182
Gates, T. A., Evans, D. C., & Sertich, J. J. W. (2021). Description and rediagnosis of the crested hadrosaurid (Ornithopoda) dinosaur Parasaurolophus cyrtocristatus on the basis of new cranial remains. PeerJ, 9, e10669. https://doi.org/10.7717/peerj.10669


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