太陽は生まれてすぐに惑星をひとつ飲み込んだのかもしれない

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太陽のことは、どの星よりもよく分かっています。質量も半径も年齢もはっきりしていて、内部の様子まで測られている。ところが、その太陽を計算で再現しようとすると、どうしても合わない場所がいくつか残ります。この食い違いが、太陽が生まれて間もないころに惑星をひとつ飲み込んだせいだとしたら——そんな計算結果が、2026年9月10日に英国王立天文学会の学術誌 Monthly Notices of the Royal Astronomical Society に掲載されました。トルコ・エゲ大学の Mutlu Yıldız(ユルドゥズ)氏による研究です。

太陽のモデルに残る三つの食い違い

太陽の内部は、直接のぞくことはできません。そのかわりに使われるのが日震学(にっしんがく)という方法です。太陽の表面は、内部を伝わる音波のせいで絶えず細かく振動しています。その振動を細かく調べると、内部を音がどのくらいの速さで伝わっているか、深さごとに読み取れます。地震の波から地球の内部を探るのと同じ考え方です。

この方法で分かっている太陽の姿と、恒星進化の標準的な計算モデルとを突き合わせると、うまく合わない点が長年知られています。ひとつは、対流層の深さ。太陽の外側では、熱いガスが煮え立つ鍋のように上下に入れ替わっていて、その層の底は太陽半径の約0.713倍の位置にあると測られています。モデルで計算すると、この底がもう少し浅い(外側の)位置に来てしまいます。

ふたつめは、対流層のすぐ下での音の速さです。ちょうど対流層の底の直下で、モデルの音速が観測より遅くなる。この「ずれの山」は、どの計算コードで作ったモデルにも共通して出ます。

そして三つめが、リチウムの少なさです。太陽が生まれたときの材料に含まれていたリチウムの量は、隕石の分析から推定できます。それと比べて、いまの太陽の表面にあるリチウムは100分の1以下しかありません。リチウムは高温に弱く、太陽の内部に運ばれると壊れてしまう元素なので、減ること自体は不思議ではないのですが、標準的なモデルではここまで減りません。

この三つは、それぞれ別々に説明が試みられてきました。不透明度の見積もりを変える、対流の混ざり方を変える、といった具合です。Yıldız 氏が考えたのは、三つがひとつの原因でまとめて説明できないか、という問いでした。

若い太陽と円盤のあいだの物質のやりとり

生まれたばかりの星のまわりには、ガスと塵でできた円盤が広がっています。原始惑星系円盤と呼ばれるもので、惑星はこの円盤の中で作られます。円盤と星のあいだでは、かなりの量の物質が行き来していると考えられています。

ここで大事なのは、惑星と円盤のガスとでは、化学組成がまるで違うことです。惑星は重い元素が濃く固まったもので、円盤に残るガスは逆に水素とヘリウムばかりになります。つまり、若い太陽に惑星がひとつ落ちれば、重い元素のかたまりが太陽の中に入ることになる。一方で、惑星ができたあとの「重い元素の抜けたガス」が太陽に降り積もれば、表面の組成はその分だけ薄まります。

Yıldız 氏は MESA という恒星進化の計算コードを使って、この二段階の降着を太陽の初期に組み込んだモデルを大量に作りました。重い元素の多い物質が落ちてくる段階と、そのあとに重い元素の少ないガスが降る段階です。そして、できあがった現在の太陽のモデルを、日震学の観測と表面の組成に照らして評価しました。同時に、不透明度、状態方程式、乱流による混合など、惑星の飲み込み以外の説明でどこまで合わせられるかも、ひとつずつ試しています。

計算が示した「地球の5〜10倍」という答え

結果は、惑星の飲み込みを入れたモデルが、三つの食い違いを同時に小さくするというものでした。対流層の底の位置、その直下の音速、表面の組成が、まとめて観測に近づきます。飲み込みを入れずに混合の強さなどを調整しただけのモデルでも改善はするのですが、途中までです。パラメータを増やして無理に合わせただけではないか、という点についても、モデルの複雑さと当てはまりの良さを天秤にかける統計の指標で確かめ、単なる自由度の増加では説明できないとしています。

そして、最も観測に合ったモデルが指す惑星の質量は、地球の約5.6倍。良い当てはまりを示したモデル群の範囲でみると、地球の5〜10倍に収まりました。地球より重く、海王星より軽い惑星は、スーパーアースと呼ばれます。Yıldız 氏自身、飲み込みが太陽の構造に影響することは予想していたものの、計算がここまで狭い質量の範囲に収束するとは思っていなかったと語っています。

ここで、もうひとつ別の謎がつながります。太陽系にはスーパーアースがない、という謎です。系外惑星の観測が進むにつれて、スーパーアースは宇宙でごくありふれた惑星だと分かってきました。ところが太陽系には一個もありません。この点については、10年前に別の研究者たちが「スーパーアースは水星の軌道より内側で作られたあと、円盤のガスに引きずられて内側へ移動し、若い太陽に落ちたのではないか」という筋書きを提案していました。

ただ、その研究は「落ちる道筋はある」と示しただけで、実際に落ちたかどうかは問うていません。今回の研究は、その続きにあたります。もし本当に落ちたのなら、太陽の内部にいまも痕跡が残っているはずで、それは観測できるはずだ、という主張です。

落ちた惑星はどこへ行ったのか

惑星が太陽に落ちると、すぐに溶けてなくなりそうに思えます。ところが論文では、その過程についても大まかな見積もりをしています。岩石でできたスーパーアースは密度が高く、太陽の外側の対流層はそれに比べるとずっと薄い。そのため、惑星は対流層を通り抜けるあいだ、ほとんど質量を失わずに沈んでいけると計算されました。潮汐でばらばらになる条件や、空気抵抗のような力で削られる量を見積もっても、対流層を突き抜けるのは可能だとしています。

惑星が止まるのは、まわりのガスの密度が自分の密度と同じくらいになる深さです。それがちょうど、対流層の底のすぐ下にあたります。惑星はそこで溶けて、重い元素のかたまりとして局所的に残る。モデルでは、太陽の質量の外側3〜4パーセントにあたる領域に、この重い元素の層ができます。層があると光が通りにくくなり、その場所の温度や密度の分布が変わって、音速のずれも対流層の底の位置も、観測に近い側へ動くのです。

リチウムの話も、この深さと関わります。他の星では、惑星を飲み込んだ証拠として「表面のリチウムが多すぎる」ことが手がかりになる場合があります。惑星の材料が星の表面に混ざれば、リチウムが増えるからです。太陽の場合は逆で、少なすぎることが問題でした。今回のモデルでは、落ちてきた物質がリチウムに乏しく、惑星の質量が地球の4.6〜5.8倍のときに、いまの太陽のリチウムの少なさが再現できるとしています。惑星が表面にとどまらず、対流層の下まで沈んでから溶けたことが効いています。

なお論文では、この仮想の惑星に Dev Dilek という呼び名を付けて話を進めています。まだ見つかっていないものに名前を付けて追いかける、という書きぶりです。

証拠はまだ計算の中

ここまでの話は、すべて計算です。太陽の中に惑星の残骸が見つかったわけではありません。「観測と合わない点が、惑星を飲み込んだと仮定すると合うようになる」というのが正確なところで、Yıldız 氏も、太陽が惑星を飲み込んだと決定的に証明するのは難しいかもしれないと認めています。飲み込みのときに惑星がどう壊れ、どの深さにどの成分が溶けるかといった細かい過程は、今回の一次元の計算では扱えておらず、今後の課題として残されています。

それでも、この研究のいちばんの主張は、痕跡が「消えていない」と言い切った点にあります。惑星が対流層の下に沈んで溶けたのなら、そこにできた重い元素の層は、対流でかき混ぜられることなく、数十億年たったいまも残っている。その層が音速や対流層の深さに残す特徴は、日震学などの観測で独立に確かめられるはずだ、というのです。次の一手は、その指紋を実際に探しにいくことだと Yıldız 氏は述べています。

地球のすぐ近くにある、いちばんよく分かっているはずの星が、生まれてすぐに惑星をひとつ食べていて、その証拠をいまも内側に隠しているかもしれない。計算の段階とはいえ、太陽の見え方が少し変わる話です。

出典

論文:M. Yıldız, “Planetary engulfment as a solution to solar-model discrepancies and its implications for planetary systems”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, 2026年9月10日公開(オープンアクセス)
https://doi.org/10.1093/mnras/stag1527

英国王立天文学会(RAS)プレスリリース:”‘Fingerprints’ inside the Sun could reveal if it once swallowed a planet”(2026年9月10日)
https://ras.ac.uk/news-and-press/research-highlights/fingerprints-inside-sun-could-reveal-if-it-once-swallowed-planet

解説記事:Space.com “The sun may once have swallowed a super-Earth planet and could still be hiding the evidence”(2026年9月11日、Robert Lea)
https://www.space.com/astronomy/sun/the-sun-may-once-have-swallowed-a-super-earth-planet-and-could-still-be-hiding-the-evidence

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