太陽系の外にある惑星、系外惑星は、これまでに何千個も見つかっています。ただ、そのほとんどは惑星そのものを見たわけではありません。恒星の前を惑星が横切ってわずかに暗くなる瞬間や、惑星に引っぱられて恒星がふらつく動きから、「そこに惑星があるはずだ」と割り出したものです。望遠鏡で直接写し取れた惑星はごく一部で、それも光の点として写っているだけです。
どの方法も、光を手がかりにしている点では同じです。その惑星が自分で出している電波を、はっきり「惑星のもの」と突き止めた例は、これまでありませんでした。
2026年9月、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターとオレゴン大学のチームが、がか座ベータ星bという惑星から届いた電波を捉えたとする論文をarXivに公開しました。筆頭著者はケビン・オルティス・セバリョス氏。まだ査読前の段階ですが、電波から惑星の磁場の強さまで割り出していて、系外惑星の磁場が直接測られたのはこれが初めてになります。
木星が出しているオーロラの電波
惑星が電波を出すと聞くと意外かもしれませんが、太陽系では珍しいことではありません。地球も木星も土星も、オーロラが光るのと同じ場所から電波を出しています。とくに木星は強く、1950年代に地上の電波望遠鏡で偶然見つかって以来、観測が続けられてきました。
仕組みはこうです。惑星の磁場に捕まった電子が、磁力線に沿ってらせんを描きながら極のほうへ落ちていきます。このとき電子の回転がそろうと、強い電波がまとめて放たれます。専門的には電子サイクロトロン・メーザー不安定性と呼ばれる現象です。
この電波には二つの特徴があります。ひとつは、電波の振動の向きがくるくる回る「円偏光」になっていること。もうひとつは、出てくる電波の周波数が、その場所の磁場の強さで決まっていることです。磁場が強いほど周波数が高くなり、その関係は物理の式でぴったり決まっています。つまり、どこまで高い周波数が出ているかを測れば、磁場の強さがわかります。
系外惑星の磁場は、光の観測ではまず見えません。一方で、磁場は大気が宇宙へ逃げていくのを防いだり、恒星から吹きつける粒子の風を受け止めたりと、惑星の環境を大きく左右します。惑星の内部がどうなっているかの手がかりにもなります。オーロラの電波は、それを外から測れるほとんど唯一の窓です。
がか座ベータ星bとMeerKATの観測
がか座ベータ星は、南天のがか座にある、太陽より熱くて大きい若い恒星です。地球からの距離は約64光年。年齢は2300万年ほどと、恒星としては生まれたばかりで、まわりにはちりの円盤が広がり、少なくとも三つの巨大惑星がまわっています。
今回の主役はそのうち最も重いがか座ベータ星bで、質量は木星の約12倍。2008年に直接撮像で見つかった惑星で、恒星から約10天文単位(太陽から土星くらいまでの距離)のところを、24年ほどかけて一周しています。自転はとても速く、8〜9時間で一回転します。下の画像は、この惑星の極でオーロラが光り、電波が出ている様子を描いた想像図です。

観測に使われたのは、南アフリカにある電波望遠鏡群MeerKAT(ミーアキャット)です。64基のパラボラアンテナを組み合わせて、一台の巨大な望遠鏡のように使います。チームは2025年2月、2025年5月、2026年2月、2026年5月の4回、この星系を観測しました。最初の観測は、褐色矮星や系外惑星の電波をまとめて探す調査の一環でした。そこで信号が見つかったため、追加の観測時間を得て、周波数を変えながら確かめていったという経緯です。

上の画像はイメージで、実際の MeerKAT の姿とは異なります。捉えられたのは、0.85〜3.5ギガヘルツの範囲で短時間に強まっては弱まる電波のバーストで、それが何度も繰り返していました。円偏光の割合は40〜70%と高く、バーストの合間にも弱い電波が出続けていました。オーロラの電波としてよく知られた特徴がそろっています。
恒星か惑星か、0.5秒角の見分け
ただし、電波が届いただけでは惑星のものとは言えません。恒星も電波を出すことがあり、実際にこれまでの研究では、惑星を持つ星系から電波が見つかっても、それが恒星から来たのか惑星から来たのか区別できませんでした。
がか座ベータ星bは、地球から見ると恒星から最大でも0.55秒角しか離れていません。1秒角は1度の3600分の1で、0.55秒角は数キロ先に置いた硬貨の幅ほどしかありません。電波望遠鏡の像はもともとぼやけやすいので、このわずかな差を見分けるのが勝負どころでした。
チームは、同じ視野に写っている遠くのクエーサー(非常に明るい銀河の中心核)9個と、位置が精密にわかっている電波源1個を目印にしました。これらの位置は別の観測で正確に決まっているので、それに合わせて電波画像の位置のずれやゆがみを補正できます。地上の大気の影響によるずれも別に見積もって、誤差に上乗せしました。
その結果、電波の出どころは惑星bの位置とよく重なり、恒星の位置とは統計的に4.4シグマの差、隣の惑星cとは4.8シグマの差で食い違いました。目印を1〜2個ずつ抜いて計算し直しても、55通りすべてで結果は惑星bのままでした。
恒星側の事情も、この結論を支えています。がか座ベータ星は磁場の弱い、静かな星で、過去の観測でも強い磁場は見つかっていません。論文は、この種の恒星が電波を出すとして知られているどの仕組みでも、今回の電波は説明できないと述べています。
受信機の上限に届いた電波と磁場の強さ
ここからが、この研究のいちばんおもしろいところです。
先ほど書いたとおり、オーロラの電波は周波数から磁場の強さがわかります。2026年5月の観測で捉えたバーストは、観測していた帯域の上端である3.5ギガヘルツまで届いていました。この周波数を出すには、少なくとも1.25キロガウス(1250ガウス)の磁場が要ります。
地球の磁場は地表で0.25〜0.65ガウスほどなので、その2000〜5000倍にあたります。木星と比べても差は大きく、木星のオーロラの電波は約40メガヘルツで途切れます。がか座ベータ星bの電波は、その90倍近い周波数まで出ていたことになります。
そして大事なのは、3.5ギガヘルツが「電波の限界」ではなく「受信機の限界」だったという点です。惑星の電波がどこで途切れるのかは、今回の観測ではわかっていません。1.25キロガウスは測れた値そのものではなく、「少なくともこれだけはある」という下限です。実際の磁場はもっと強いかもしれません。
それでも、この数字には意味があります。巨大惑星の磁場の強さは、太陽系の惑星や恒星のデータをもとにした理論で予測されてきました。がか座ベータ星bの明るさ・質量・大きさを当てはめると、表面の平均的な磁場は約1.2キロガウスになるはずでした。今回の下限値は、その予測とかみ合っています。太陽系の外の惑星で、この理論が実際の測定と突き合わされたのは初めてです。
電波の出方からも、惑星の姿が少しずつ見えてきます。2025年5月の観測では、1回目と3回目のバーストがおよそ8時間離れていました。これは惑星の自転周期にほぼ重なります。オーロラが極付近の決まった場所で光るなら、惑星が一回転するたびに地球の方向を向いて電波が強まるはずで、その表れかもしれません。電波の円偏光の回る向きが観測の回によって逆になっていたのも、磁場の向きと自転の関係で説明できるとされています。
論文はもう一つ、踏み込んだ見方も示しています。この星系からは以前から弱いX線が見つかっていて、恒星から出ていると考えられてきました。ところがこの恒星はX線を出す星と出さない星のちょうど境目くらいの温度で、今回の結果を踏まえると、そのX線も実は惑星bから来ているのではないか、というものです。ただしこれは論文自身が推測と断っている部分で、X線の観測では恒星と惑星を分けて見ることができていません。
オーロラを動かしているもの
では、何がこれだけの電波を生んでいるのか。チームが有力と見ているのは、惑星自身の速い自転です。
木星では、磁場とそこに捕まったガスが惑星といっしょに回ろうとしますが、遠くのほうはついていけずに遅れます。そのずれが電流を生み、電子を極へ送り込んでオーロラを光らせます。がか座ベータ星bは自転が速く、磁場も強いので、同じことがもっと激しく起きていると考えられます。
ほかの可能性も検討されています。恒星からの粒子の風が惑星の磁場にぶつかって電波を出すという説明は、計算すると実際の強さより1000倍ほど弱くなってしまいます。木星とその衛星イオのように、衛星が磁場をかき乱して電波を出すという説明も、エネルギーが足りません。そもそも、この惑星に土星より重い衛星がないことは別の観測でわかっています。
査読前の成果と次の候補
この研究は論文誌に投稿された段階で、まだ査読を通っていません。位置の見分けは慎重に検証されていますが、別のチームや別の望遠鏡による確認はこれからです。
それでも、系外惑星を「光で見る」だけでなく「電波で聞く」ことができると示した意味は大きいはずです。電波が自転に合わせて強まったり弱まったりするなら、観測を続けるうちに、磁場が自転軸に対してどれくらい傾いているかまで調べられるようになります。
チームによると、地球から約150光年以内に、同じ方法が使える直接撮像された巨大惑星が、ほかに五つの星系で七つあります。いまの望遠鏡では届きませんが、感度が5〜7倍になる次世代の電波望遠鏡なら検出できる範囲に入るとしています。
がか座ベータ星bが出していた電波は、受信機の目盛りを振り切っていました。その先にどこまで伸びているのかを確かめるのも、次の観測の仕事になりそうです。
出典
Kevin N. Ortiz Ceballos, Edo Berger, Yvette Cendes「Discovery of radio emission from the exoplanet β Pictoris b」arXiv:2609.16720(2026年9月15日公開・査読前)
https://arxiv.org/abs/2609.16720
ScienceAlert「Astronomers Detect Radio Signals Coming Directly From an Exoplanet For The First Time」(2026年9月22日、David Nield)
https://www.sciencealert.com/astronomers-detect-radio-signals-coming-directly-from-an-exoplanet-for-the-first-time


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