中性子星は、太陽の8〜12倍ほどの重さの星が超新星爆発を起こしたあとに残る、直径20キロメートルほどの芯です。その中には、1秒間に数百回も自転しながら、灯台のように規則正しく電波を放つものがあります。ミリ秒パルサーと呼ばれるこの天体は、宇宙でいちばん正確な時計のひとつとして、重力波の探索や一般相対性理論の検証に使われています。
ただし、生まれたときからそんなに速く回っていたわけではありません。相棒の星からガスを奪い、そのガスが持ち込む回転の勢いで加速されて、ようやくミリ秒の速さになります。「リサイクル」と呼ばれるこの過程で、ガスを吸い取られた相棒の星は外側を失い、白色矮星という小さな燃えかすになります。
イタリアのボローニャ大学などのチームが、このリサイクルを終えた「直後」にある連星を見つけました。球状星団 NGC 362 にあるミリ秒パルサー NGC 362D の相棒で、知られている中では最も若い白色矮星です。2026年9月の Astronomy & Astrophysics のレター誌に報告されています。
電波で見つけ、ハッブルの古い画像で相棒を探す
NGC 362 は、南天の小マゼラン雲の近くに見える球状星団です。星が密集した星団の中心部は、星どうしが近づきやすく、パルサーと別の星が組になる場所として知られています。NGC 362D は、南アフリカの MeerKAT 電波望遠鏡によるパルサー探査で最近見つかったミリ秒パルサーで、相棒の星と0.17日、約4時間で互いのまわりを回っています。
電波では相棒の正体は分かりません。チームは、ハッブル宇宙望遠鏡が2006年から2016年にかけてこの星団を撮った画像を掘り返しました。近紫外線から赤い光まで9種類のフィルターで撮られた複数の時期の画像の中から、パルサーの位置と0.02秒角、ほとんど重なる場所に、1つの星を見つけます。
太陽の0.18倍、まだ冷えはじめていない
その星の明るさと色を進化のモデルと比べると、質量が太陽の0.18倍しかない、ヘリウムの白色矮星だと分かりました。白色矮星にしてはかなり軽く、ガスを相棒に吸い取られて芯だけになった星の典型です。
見どころは、この白色矮星が「冷えはじめる前」の段階にあることです。ガスの供給を終えた星は、すぐに冷えて暗くなるわけではありません。表面に残ったわずかな水素がくすぶり、しばらく明るいまま過ごしてから、本格的に冷えていきます。この質量の星ではこの段階が約8億7,000万年続くと計算されていて、観測された明るさと温度からさかのぼると、ガスの供給が止まったのはおよそ6億年前です。宇宙の時間感覚では「ついさっき」で、ミリ秒パルサーの相棒の白色矮星として、これまで知られている中で最も若いことになります。

紫外線が足りない
さらに、この星には奇妙なところがありました。9つのフィルターで測った明るさを並べると、波長が短くなるほど、モデルの予想より暗いのです。いちばん青いフィルターといちばん赤いフィルターのあいだで、ずれは約0.8等級。何かが星の光を、青い側ほど強く吸っている形です。
チームはこれを、星のまわりに残った物質による減光と解釈しています。ガスの供給を終えたときに放り出された物質か、表面でくすぶる水素が時おり起こすフラッシュで吹き出した物質が、まだ星を薄く包んでいて、紫外線を遮っているというのです。ミリ秒パルサーの相棒の白色矮星で、こうした波長依存のずれが見つかったのは初めてです。
若いパルサーの「見分け方」が変わるかもしれない
この結果には、ほかの連星の見方を変える含みがあります。相棒を包む残り物の物質は、電波や可視光に、標準的な進化のモデルでは予想されない信号を作りえます。その信号は、相棒がまだふつうの星である連星(ガスをやり取りしている最中の、いわば「リサイクル中」の連星)に似て見えることがあります。
つまり、これまで「まだリサイクルの途中」と分類されていた若いミリ秒パルサーの中に、実はリサイクルを終えて残り物に包まれているだけの白色矮星を持つものが混じっているかもしれません。NGC 362D は、その見分け方を確かめるための試験台になります。
ミリ秒パルサーの時計としての精度を使い切るには、相棒のまわりに何があって、連星がどんな歴史をたどってきたかを知る必要があります。筆頭著者のグレタ・エットーレは、だからこそこうした系の環境と進化の復元が欠かせない、と述べています。NGC 362D は、その復元を「終わった直後」の時点でできる、いまのところ唯一の例です。
出典
- Ettorre, G. et al. (2026). The youngest white dwarf companion to a millisecond pulsar: Insights from NGC 362D. Astronomy & Astrophysics. https://doi.org/10.1051/0004-6361/202662038
- 同論文のプレプリント(arXiv、全文無料): https://arxiv.org/abs/2609.05608
- Space.com (2026-10-02). Dead star orbiting a neutron star ‘cosmic lighthouse’ is at a rarely seen stage of its afterlife. https://www.space.com/astronomy/stars/dead-star-orbiting-a-neutron-star-cosmic-lighthouse-is-at-a-rarely-seen-stage-of-its-afterlife


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