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鉄を作ると、必ず「かす」が出ます。鉄鉱石やスクラップを溶かして鋼にするとき、不純物が浮いて固まったものが製鋼スラグです。ケイ素や金属の酸化物の塊で、硬くて角張っていて、量が多い。世界中の製鉄所から毎年大量に出て、その処分が長年の課題になっています。
この硬くて角張った性質は、道路の骨材としては悪くありません。砕石の代わりにアスファルトに混ぜる使い方は、すでに一部で行われています。中国の研究チームが今回調べたのは、その一歩先です。製鋼スラグを骨材にし、さらにエポキシ樹脂で改質したアスファルトで固めた、長持ちする舗装(SEAM)を都市の道路に広く使ったら、気候と健康と費用にどれだけ効くか。2026年9月24日の Communications Earth & Environment に、中国全土の都市道路を対象にした試算が出ています。
道路の排出の95%は、作ったあとに出る
この研究の土台にある考え方は、道路の環境負荷は建設時だけでは測れない、というものです。道路が傷むと、路面の凹凸で車の燃費が落ちます。補修工事をすれば渋滞が起き、加速と減速をくり返す車が余計に燃料を使います。チームが組んだライフサイクルのモデルでは、こうした「使っている間」の間接的な影響が、道路の排出の95%、費用の60%を占めていました。作るときの排出は、全体から見れば小さいのです。
だとすれば、道路の排出を減らすいちばん効く手は、傷みにくい道路を作って補修の回数を減らすことになります。SEAM の値打ちは、まさにそこにあります。
作るときは、むしろ悪い
ただし、SEAM は作るときの成績がよくありません。エポキシ改質アスファルトは通常のアスファルトの4〜5倍の値段で、材料費は通常の舗装の2〜6.5倍になります。工事後にふつうのアスファルトなら1日で通行を再開できるところ、SEAM は強度が出るまで7日間の養生が要り、そのあいだの渋滞がさらに排出を増やします。1回の寿命で比べると、SEAM の二酸化炭素排出は通常の舗装の約3倍、微小粒子状物質(PM2.5)の排出も3〜4倍、1平方メートルあたりの費用は3〜4.5倍です。
ここだけ見れば、使う理由はありません。話が変わるのは、寿命を入れたときです。

エポキシ35%で、寿命が6年から15年に
チームは、エポキシ樹脂の配合が20%、35%、50%の3種類の SEAM を比べました。曲げ疲労試験と構造の計算から見積もった寿命は、通常の舗装が6年、SEAM-20 が6年、SEAM-35 が15年、SEAM-50 が20年です。エポキシが少ないと樹脂の網目がつながらず耐久性が出ません。多すぎると費用ばかりかさみます。
寿命が延びると、建設時の排出と費用を長い年数で割れるうえ、傷んだ路面による燃費の悪化や補修の渋滞が減ります。1〜40年の寿命を仮定して計算すると、SEAM-20 は寿命が通常と同じなので元が取れません。SEAM-50 は排出をいちばん減らせますが、費用が高すぎて経済的な利点が薄れます。SEAM-35 がいちばん釣り合いがよく、二酸化炭素の削減は最大値の62%、PM2.5 の削減は34%を実現しながら、総費用は通常の舗装を下回りました。
中国の都市道路を全部置き換えたら
このモデルを中国全土の都市道路に広げ、既存のアスファルト舗装の25%、50%、75%、100%を SEAM に置き換える4つのシナリオを試算しました。段階的な導入と、そのあと15年の寿命を2回まわす期間で見ると、温室効果ガスの排出は19%、PM2.5 の排出は13%減り、量にして二酸化炭素換算で4億3,100万〜17億4,100万トン、PM2.5 で3億300万〜12億2,900万キログラムの削減になります。PM2.5 は心臓や肺の病気と結びついている汚染物質なので、チームはその削減から早死にの回避数も推計し、約3万2,000〜12万9,000人としています。経済的には3兆4,800億〜15兆100億元の純便益です。
導入のしかたも効きます。高速道路から優先して置き換えるより、道路の種類に応じて比例配分したほうが、渋滞による燃料消費を抑えながら材料を効率よく使えます。北京・チベット・海南のように地元に製鋼所が無い地域も、省をまたいでスラグを融通すれば恩恵を受けられるとしています。
これはモデルの話である
いちばん大事な注意点を最後に書きます。この研究は、実際の道路で30年にわたって排出を測ったものではありません。材料試験と交通データと道路網のデータを組み合わせた、モンテカルロ法による1万回の試算です。寿命の15年や20年は試験と計算から見積もった値で、実際の道路でそうなるかは、これから確かめることになります。試算の対象は中国で、道路の種類の構成(高速道路・幹線道路・二級道路が33対40対27)も中国の値を使っています。
それでも、この研究が示したことには一般性があります。道路の排出のほとんどは使っている間に出る。だから「作るときに汚い材料」でも、十分に長持ちすれば、総合では「作るときにきれいな材料」に勝てる。製鋼スラグは、その考え方を試す格好の材料だったわけです。日本でも製鋼スラグの道路利用は行われているので、ここで出た「エポキシ35%、寿命15年で損益が逆転する」という目安は、ほかの国の試算にも参考になりそうです。
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出典
- Zhang, Z. et al. (2026). Nationwide recycled steel slag pavements can stimulate sustainable urban transportation. Communications Earth & Environment 7, 762. https://doi.org/10.1038/s43247-026-04056-z
- ScienceAlert (2026-10-02). Scientists Discover a Genius Use For Leftover Steel Waste – And It Could Save Lives. https://www.sciencealert.com/scientists-discover-a-genius-use-for-leftover-steel-waste-and-it-could-save-lives


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