この記事には広告(Amazon アソシエイトのリンク)を含みます。
砂糖を減らしたいが、甘いものはやめたくない。この当たり前の願いに、タンパク質で応えようという研究があります。ブラゼインは、西アフリカの果実から見つかった小さなタンパク質で、重さあたり砂糖の500〜2,000倍甘く、体の中ではふつうのタンパク質と同じように消化されます。ロシアの連邦栄養・バイオテクノロジー・食品安全研究センター(モスクワ)の Vasily A. Isakov さんらは、このブラゼインで甘みをつけたアイスクリームを101人に食べてもらい、食後の血糖の上がり方を砂糖入りと比べました。結果は、血糖の山がおよそ半分。2026年10月号の Clinical Nutrition ESPEN に載った無作為化試験です。
果実の甘さを、真菌に作らせる
ブラゼインは、中央アフリカから西アフリカにかけて生える低木の赤い果実に含まれる甘味タンパク質です。アミノ酸54個ほどの小さな分子で、熱に強く80℃まで壊れず、酸性からアルカリ性まで幅広い条件で甘さを保ちます。この性質のおかげで、焼き菓子にも冷たいデザートにも使えます。果実から取り出すのは割に合わないので、いまは遺伝子を組み込んだ真菌(カビの仲間)に作らせる方法が主流です。
甘味料としての特徴は、砂糖のようにカロリーや血糖に直接響かないことと、人工甘味料のように後味や安全性の議論を抱えていないことですが、人での臨床データはほとんどありませんでした。マウスの実験で砂糖の代わりになりそうだという結果はあっても、人が実際に食べたときの血糖の動きを測った試験はなかったのです。

101人が、3種類のアイスクリームを3日に分けて食べる
試験に参加したのは、肝臓に脂肪がたまる「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」と診断された成人101人です。平均54.6歳、76%が女性で、44%は2型糖尿病も持っていました。砂糖を減らすことが治療の柱のひとつになる人たちです。
設計は二重盲検の3期クロスオーバー試験です。つまり、同じ人が別々の日に3種類のアイスクリームを全部食べ、本人も試験の担当者もどれがどれか分からない状態で比べます。3種類は、砂糖14グラムで甘みをつけたもの、ブラゼイン(0.014%)で甘みをつけたもの、ブラゼインに食物繊維イヌリン4グラムを足したもので、いずれもバニラ味で1回100グラム。血糖は、腕につけた持続血糖測定器(CGM)で食後150分まで追いました。
血糖の山が、半分になった
砂糖入りを食べたあとの血糖の上昇量(曲線の下の面積で表した値)は、ブラゼイン入りでは52%低く、ブラゼインとイヌリン入りでは48%低くなりました。食後30分から135分にかけて、ブラゼインの2種類は一貫して砂糖入りより低い血糖で推移し、2種類どうしの差はありませんでした。糖尿病のある人とない人で血糖の動き方は違いましたが、どちらの群でもブラゼイン入りのほうが砂糖入りより低い結果でした。食べる順番による持ち越しの影響は見られず、重い副作用の報告もありません。
ただし、読み方に注意が要ります。砂糖は甘さだけでなく、アイスクリームの「かさ」ととろみも作っています。砂糖を抜いた2種類は、そのぶん別の材料で組み立て直されているので、血糖の差が甘味料の違いだけによるものだとは言い切れません。著者らは補助的な解析で、炭水化物の総量の違いだけでは差を説明できないことを確かめていますが、ブラゼインそのものの効果と配合全体の効果は分けられていない、というのが正直なところです。

1食の反応から、その先へ
この試験が見たのは、1食分のアイスクリームに対する150分の反応です。ブラゼインのデザートを食べ続けたときに肝臓の脂肪や体重、腸内細菌、食行動が変わるかどうかは、まだ分かっていません。参加者が全員 MASLD の患者で、肥満の人も多かったという偏りもあります。著者らは、砂糖入りのデザートをブラゼイン入りに置き換え続けることで持続的な利益があるかを確かめる、長期の試験が必要だと書いています。
それでも、アイスクリームという題材の選び方には意味があります。甘い菓子や飲み物は世界中の食生活に深く組み込まれていて、「食べるな」という指導は守られにくい。甘さを残したまま血糖の山を削れるなら、我慢とは別の道になります。試験は ClinicalTrials.gov に NCT06724913 として登録され、著者らは利益相反がないと申告しています。資金源の記載は要旨にはなく、ブラゼインの供給元も含めて、本文で確かめる必要があります。
関連する商品
この記事に関連する本や商品は、Amazon で探せます。
上のリンクから購入されると、このブログに紹介料が入ることがあります。
出典
- Isakov, V. A., Pilipenko, V. I., Goncharov, A. A., Sasunova, A. (2026) “Effect of sucrose-free brazzein-sweetened ice cream on continuously monitored glycemic response in patients with metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease: A randomized controlled double-blind crossover trial.” Clinical Nutrition ESPEN 75, 105066. https://doi.org/10.1016/j.clnesp.2026.105066(要旨は PubMed で読める)
- ScienceAlert “A Protein 2,000 Times Sweeter Than Sugar Halved Ice Cream’s Blood Sugar Response”(2026年10月10日)https://www.sciencealert.com/a-protein-2000-times-sweeter-than-sugar-halved-ice-creams-blood-sugar-response


コメント