1日は24時間だと思って暮らしていますが、地球の自転はきっちり一定ではありません。数十年の単位で見ると、1日の長さは数ミリ秒のあいだを行ったり来たりしています。1ミリ秒は1000分の1秒なので、腕時計では絶対に気づけない量です。それでも地球の向きを遠い天体と比べて測っている人たちには、はっきり見えているゆらぎです。
このゆらぎの原因が地球の中心にある「核」だということは、30年以上前からわかっていました。核とその外側の岩石(マントル)が回転の勢いをやり取りしているのだろう、というところまでは計算で示せていたのです。ただ、核がどうやってマントルを押したり引いたりしているのか、その力の正体は決まっていませんでした。
2026年9月23日にNatureで発表された研究が、この問いにひとつの答えを出しました。カナダ・アルバータ大学のHuifeng ZhangさんとMathieu Dumberryさんの論文です。結論を先に言うと、主役は重力で、しかも足元の深いところで力の綱引きが起きていました。
地球の中心にある鉄の球
地球を切って中を見ると、外側から地殻、マントル、核の順に重なっています。核は火星と同じくらいの大きさで、ほとんどが鉄です。ただし一枚岩ではなく、二層に分かれています。外側の「外核」は溶けた液体の金属で、たえず流れています。その内側にある「内核」は固体の鉄の球で、半径は約1,220km、月より少し小さい程度です。
この内核は、液体の外核に浮かんでいるような状態なので、地球全体とは別の速さで回ることができます。地震の波が内核を通り抜けるときの変化を長年記録することで、内核が地球のほかの部分に対してどのくらい速く、あるいは遅く回っているかが少しずつわかってきました。2023年に発表された記録によると、内核は1960年代からしばらくマントルよりわずかに速く回っていて、2010年ごろを境に、今度はマントルより遅く回るようになっています。

上の図のように、液体の外核と固体の内核は境目のある別のものです。ここに、1日の長さを変えうる力が3種類考えられていました。
核がマントルを押す3つの力
1つめは、外核の流れが核とマントルの境目の凸凹にぶつかる力です。川の水が岩にぶつかって岩を押すのと同じで、境目に出っ張りがあれば流れがそれを横から押します。論文では「地形的トルク」と呼ばれています。トルクは回転を速めたり遅らせたりする、ひねる向きの力のことです。
2つめは、電磁気の力です。外核の液体金属が流れることで地球の磁場が作られていますが、その磁場はマントルの底にある電気を通しやすい層にも及びます。流れと磁場が絡むと、マントルを引きずる力が生まれます。
3つめが重力です。マントルの底には、まわりより重い部分と軽い部分がまだらに分布しています。内核も完全な球ではなく、わずかに楕円にゆがんでいます。内核の重い部分とマントルの重い部分は引き合うので、両者の向きがずれると、元の向きに戻そうとする力がはたらきます。
どれも理屈の上ではありえて、どれも単独では観測をうまく説明できずにいました。電磁気の力は磁場の観測から計算できるのですが、そこから予想した1日の長さの変化は、実際の変化とおおむね逆向きになってしまいます。凸凹の力は、正直に計算すると実際の100倍も大きくなってしまい、計算のやり方自体が疑われていました。重力の力は、内核がどれだけずれているかの記録がなければ計算できず、その記録がそろったのがここ数年のことでした。
綱引きの勝者は重力だった
ZhangさんとDumberryさんは、この3つの力をまとめて計算するモデルを組みました。内核の回転の記録と、磁場の変化から復元した外核の流れの記録を入力して、1964年から2019年までの1日の長さの変化を再現できるかを試したのです。
結果は、重力の力を主役にしたときだけ、変化の大きさとタイミングの両方が合いました。しかも面白いのは、残りの2つの力が消えたわけではなかったことです。電磁気の力と凸凹の力は、重力と逆の向きにはたらいていました。重力が1日を長くしようとするとき、ほかの2つは短くしようと引っ張っている。この綱引きの差し引きが、私たちの1日の長さに出ていたわけです。Zhangさんは、結果が出るまで3つの力が競い合っているとは思っていなかったと話しています。
一番よく合う条件では、重力の力は電磁気の力の1倍から2倍ほどで、勝ってはいるものの圧勝ではありません。大きな力どうしがほぼ釣り合っていて、そのわずかな差が地球の自転を変えている、という絵になります。
この綱引きは、内核の向きが2010年ごろに反転したことも同じ枠組みで説明します。外核の流れは平均すると西向きで、内核を西向きに引きずってマントルとの向きをずらします。ずれが大きくなると重力が内核を東向きに引き戻す。この押し引きが70年ほどの周期で繰り返され、その途中で内核の回転の向きが切り替わって見える、という流れです。論文の計算では、この周期の前半(1967年ごろを中心とする35年間)と後半(2002年ごろを中心とする35年間)で、外核の流れの向きが内核の近くと遠くで入れ替わっていました。
内核はゆっくり形を変えている
計算をうまく合わせるには、もうひとつ条件が必要でした。内核が固い剛体ではなく、10年ほどの時間をかけて形を変える程度には軟らかい、という条件です。
内核がずれると重力が引き戻すと書きましたが、内核の表面がゆっくり流動できるなら、出っ張りの位置そのものが数年かけて元の場所に戻ってしまいます。すると力が最大になるタイミングが、内核の回転が最も進んだ2010年ごろではなく、2000年ごろまで前倒しになります。観測とぴったり合ったのはこの前倒しがある場合でした。論文が導いた内核のねばりけは、実験室で高圧の鉄を測った結果とも一致しています。
ずれの角度はごく小さく、1度から2度以内です。内核の出っ張りの高さも、赤道まわりで山から谷まで11mから29mと見積もられました。半径1,220kmの球にとって数十mの出っ張りは、ほとんど真球と言ってよい量です。それでもこの程度のゆがみが1度ずれるだけで、地球の1日を数ミリ秒動かすには十分な力が生まれます。

上の図は、液体の外核の流れの中で固体の内核が向きを変えている様子の想像図です。実際の出っ張りは絵にできないほど小さいので、形は誇張してあります。
足元の深部について見えてきたこと
1日の長さの話がここまで深部の話になったのは、綱引きの強さがマントルの底や内核の性質で決まるからです。研究チームは、計算がうまく合う条件から、地球深部について次のようなことが読み取れると述べています。
まず、マントルの底にある大陸サイズの「かたまり」の話です。地震波の速度が遅い巨大な領域がアフリカの下と太平洋の下にあることは知られていますが、その正体は決まっていません。今回の重力の力の大きさは、この領域が、まわりより組成が重いけれど温度が高いために浮きも沈みもしない状態になっている、という説と合っていました。また、マントル最下部の鉱物のねばりけが上の層よりずっと低い、という実験の結果とも整合しています。
次に、マントルの底に鉄を多く含む薄い層がある可能性です。電磁気の力の強さから逆算すると、核との境目に厚さ2kmほどの電気を通しやすい層があると考えるとちょうどよく、これは別の地震学的な観測とも合います。同時に、この層はそれより厚くはなれない、という上限もつけられました。
もうひとつ、平均して見ると内核は今も東向きに年0.12度ずつマントルより速く回っていて、外核の西向きの流れがここ9,000年続いているとすれば、そのあいだに内核はマントルに対してほぼ3周していることになります。1日の長さを説明するために組んだ計算が、内核の長い歴史まで示唆する形です。
まだ決まっていないこと
この研究の結論は、入力した内核の回転の記録と外核の流れの記録が正しいことを前提にしています。どちらも地震波と磁場から間接的に復元したもので、研究チーム自身も、モデルを変えると得られる数値が3割ほど動くと書いています。重力が主役という大筋は変わらないものの、細かい数値は今後の観測で見直される余地があります。
また、今回説明できたのは60年から70年のゆったりした変化で、10年から30年のより短い変化は別の話です。内核は10年ほどで形が戻ってしまうため、短い周期には重力の力が効きにくく、そちらは核とマントルの境目の力が担っているはずだと研究チームは考えています。ところが今の計算では、境目の力にそこまで大きな短周期の変動が出てきません。外核の流れの復元が粗いのか、境目の力の考え方に直すべき点があるのか、ここは宿題として残されています。70年周期が今後も繰り返すのかどうかも、記録が古くなるほど質が落ちるため、まだ言い切れません。
それでも、1日が数ミリ秒伸び縮みする理由が、5,000kmより深いところで起きている鉄の球とマントルの引き合いだった、というのは面白い話です。地球の一番深い部分は直接見ることができませんが、1日の長さという身近な量が、その姿を映す窓のひとつになっています。
出典
論文:Huifeng Zhang, Mathieu Dumberry, “Gravitational torque drives multidecadal variations in length of day”, Nature, 2026年9月23日(オープンアクセス)
https://doi.org/10.1038/s41586-026-10999-2
解説記事:James Dinneen, “Gravitational tug-of-war inside Earth is changing the length of our days”, Nature News, 2026年9月23日
https://www.nature.com/articles/d41586-026-03018-x
内核の回転の記録:Yi Yang, Xiaodong Song, “Multidecadal variation of the Earth’s inner-core rotation”, Nature Geoscience, 2023年
https://doi.org/10.1038/s41561-022-01112-z


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