【カンブリア紀の生物】ユンナノズーン – 30年で分類が5回変わり、まだ決まらない

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名前ユンナノズーン(Yunnanozoon lividum)。「雲南の動物」の意味。種名の lividum は「鉛色の」で、化石の色にちなむ
分類左右相称動物。系統上の位置は未確定(脊椎動物の祖先筋、脊索動物の祖先筋など複数の説がある)
時代カンブリア紀前期(約5億1800万年前)
発見地中国・雲南省 澄江(チェンジャン)
全長2〜6cm
体重1g前後(同じ大きさの魚型の動物からの概算)

ユンナノズーンは、カンブリア紀前期の海にいた、体長数センチの魚のような姿をした動物です。1991年に中国・澄江の地層から記載されて以来、脊索動物、半索動物、脊椎動物の祖先筋、さらに古い系統と、研究者によって分類がそのつど変わってきました。2022年には「最古の脊椎動物の仲間」とする論文が発表されましたが、翌年には反論が出て、正体は今も決まっていません。

姿と暮らし

体は紡錘形で、横から押しつぶされたように薄く、幅より高さのほうがあります。背中側には四角い節が前後に並んだ帯があり、いちばん前の節だけ三角形をしています。体の前半には、頭の左右に7対の糸状の弓(アーチ)が並んでいます。これがのちに大きな議論の的になる構造です。弓の上は袋のようなものに覆われ、袋のあいだには外へ開く穴があります。体の後半には管状の構造が走り、体の中ほどには4対の丸い構造が並びます。管は消化管、丸い構造は生殖腺と考えられていますが、確定はしていません。

暮らし方は、7対の弓で水をこして餌をとる濾過食だったとする説が有力です。口から水を取り込み、弓で細かい粒子を集めたあと、体の横の穴から水を吐き出す。現生のナメクジウオやヤツメウナギの幼生に近い食べ方です。目ははっきりせず、速く泳ぎ回る捕食者だったとは考えられていません。

ユンナノズーンが見つかる澄江の地層は、約5億1800万年前の海底に泥が積もったものです。同じ地層からは、当時の頂点捕食者アノマロカリス、最古級の魚とされるミロクンミンギアやハイコウイクチス、多数の三葉虫や節足動物が出ています。澄江は軟らかい体の組織まで化石に残ることで知られ、ユンナノズーンも筋肉や内臓の痕跡が炭素の薄い膜として岩の上に残っています。分類の議論がここまで長引いたのは、この膜の見え方が標本ごと、研究者ごとに違って読めるからです。

30年で分類が5回変わった

1991年の記載論文では、ユンナノズーンは「分類不明の動物」として登録されました。転機は1993年で、ポーランドの古生物学者イエジ・ジク(Jerzy Dzik)が南京で新しい標本を調べ、脊索、鰓の弓、節ごとに並ぶ生殖腺を見出しました。この観察をもとに1995年、陳均遠(Chen Jun-Yuan)らが『ネイチャー』に「カンブリア紀前期の脊索動物の可能性」として発表します。ナメクジウオに近い頭索動物という位置づけで、当時知られていた脊索動物の化石としては最古でした。

ところが翌1996年、舒徳干(Shu Degan)らが同じ『ネイチャー』に反論を載せます。ユンナノズーンは脊索動物ではなく、ギボシムシに近い半索動物だという主張でした。脊索とされた構造は消化管の一部、鰓の弓とされた構造は別のものと読み替えたのです。同じ化石を見て、まったく別の門に置く2つの論文が、1年のあいだに同じ雑誌に並びました。

1999年には、陳均遠らが澄江の近くの海口(ハイコウ)から305点の標本を集め、ハイコウエラ(Haikouella)という新属を『ネイチャー』に記載します。心臓、背側と腹側の大動脈、脳をもつ神経索、目らしき構造まで見つけたとして、頭蓋をもつ脊椎動物に近い動物だと位置づけました。ユンナノズーンとよく似ているが別種で、こちらのほうが脊椎動物の特徴を多くもつ、という筋立てです。

2003年には、舒徳干らが『サイエンス』でハイコウエラの第2の種を記載し、脊索動物らしい構造はどの標本にも見当たらなかったとしたうえで、ユンナノズーンとハイコウエラをまとめて、脊索動物より前に分かれた古い系統(新口動物の幹)に置きました。ここまでで、頭索動物、半索動物、脊椎動物に近い動物、新口動物の幹、と4つの位置づけが提案されたことになります。

2015年、Cong Pei-Yunらがユンナノズーン類の標本を総合的に見直し、別属とされてきたハイコウエラの2種は、鰓の弓の数も丸い構造の数もユンナノズーンと同じで、「咽頭の歯」とされた構造も別のものの残骸だったとして、すべて同一種 Yunnanozoon lividum にまとめました。分類上の位置については、左右相称動物という以上には決められないと結論しています。

そして2022年、Tian Qingyiらが新たに採集した127点の標本に、X線マイクロトモグラフィー、走査型と透過型の電子顕微鏡、ラマン分光、元素マッピングを組み合わせて『サイエンス』に発表しました。7対の弓の内部に細胞性の軟骨があり、その細胞のまわりを12ナノメートル間隔の微細な繊維が埋めている、というのが中心の主張です。細胞性軟骨と繊維状の細胞外基質の組み合わせは、それまで脊椎動物にしかないと考えられてきた特徴でした。系統解析の結果、ユンナノズーンは現生の脊椎動物すべてより前に分かれた、最古の「幹脊椎動物」だと結論しています。弓どうしが背側と腹側の棒でつながって籠のような形になっている点も、現生のヤツメウナギやヌタウナギの咽頭骨格と共通するとしました。

この論文は「最古の脊椎動物の親戚」として世界的に報道されました。しかし2023年7月、『サイエンス』に2本の反論が同時に掲載されます。1本は、1996年に半索動物説を出した舒徳干を含むHe Kaiyueらのグループによるもので、8000点を超える標本を調べた結果として、細胞性軟骨も繊維もその存在自体を否定しました。もう1本はZhang Xi-guangとブライアン・プラット(Brian R. Pratt)によるもので、電子顕微鏡で見えた繊維は5億年前の組織ではなく、現代の有機物による汚染の可能性が高いと指摘しています。Tianらは同じ号で追加の証拠を示して反論を退けましたが、双方の主張は平行線のままです。

2024年には、バージェス頁岩のピカイアを再解釈した研究のなかで、ユンナノズーンを脊椎動物ではなく、脊索動物になる手前の幹の位置に置く系統樹も示されました。現時点で、ユンナノズーンを「最古の脊椎動物の仲間」と言い切れる段階にはなく、脊索動物に近い何かだという範囲で意見が揺れています。1991年から数えて30年あまり、同じ産地の同じ化石をめぐって、頭索動物、半索動物、脊椎動物に近い動物、新口動物の幹、幹脊椎動物と5つの答えが出され、そのどれも定説になっていません。

出典

Hou, Ramsköld & Bergström (1991) Composition and preservation of the Chengjiang fauna. Zoologica Scripta. https://doi.org/10.1111/j.1463-6409.1991.tb00303.x

Chen et al. (1995) A possible Early Cambrian chordate. Nature. https://doi.org/10.1038/377720a0

Chen, Huang & Li (1999) An early Cambrian craniate-like chordate. Nature. https://www.nature.com/articles/990080

Shu et al. (2003) A new species of yunnanozoan with implications for deuterostome evolution. Science. https://doi.org/10.1126/science.1079846

Cong et al. (2015) New data on the palaeobiology of the enigmatic yunnanozoans from the Chengjiang Biota. Palaeontology. https://doi.org/10.1111/pala.12117

Tian et al. (2022) Ultrastructure reveals ancestral vertebrate pharyngeal skeleton in yunnanozoans. Science. https://doi.org/10.1126/science.abm2708

He et al. (2023) Comment on “Ultrastructure reveals ancestral vertebrate pharyngeal skeleton in yunnanozoans”. Science. https://doi.org/10.1126/science.ade9707

Zhang & Pratt (2023) Comment on “Ultrastructure reveals ancestral vertebrate pharyngeal skeleton in yunnanozoans”. Science. https://doi.org/10.1126/science.adf1472

Tian et al. (2023) Response to Comments. Science. https://doi.org/10.1126/science.adf3363

Mussini et al. (2024) A new interpretation of Pikaia reveals the origins of the chordate body plan. Current Biology. https://doi.org/10.1016/j.cub.2024.05.026

中国科学院南京地質古生物研究所 プレスリリース(2022年7月) https://english.nigpas.cas.cn/rh/rp/202207/t20220704_307593.html

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