へびつかい座の方向、約450光年先にある若い星のまわりで、生まれて100万年もたっていない惑星が確認されました。名前は Elias 2-24 b(エライアス 2-24 b)。これまでに見つかった惑星のなかで最も若く、しかもまだ完成していません。まわりのガスと塵(ちり)を取り込みながら、いまも大きくなっている途中です。
論文は2026年9月16日、天文学の専門誌 The Astrophysical Journal Letters に掲載されました。筆頭著者は、チリのディエゴ・ポルタレス大学の博士課程に在籍する Andrea Bernardi 氏です。
100万年に満たない惑星の若さ
太陽系ができたのは約46億年前です。Elias 2-24 b の年齢は、その4600分の1にも届きません。人の一生を80年とすると、生後1週間たらずの赤ちゃんにあたります。
共著者の Lucas Cieza 氏(ディエゴ・ポルタレス大学教授)によると、これまでの最年少記録は、PDS 70 という星を回る2つの惑星と、WISPIT 2 という星を回る2つの惑星が並んでいて、どれも500万歳を超えていました。300万歳や200万歳と見積もられた天体の報告もありますが、Elias 2-24 b はそれと比べても半分以下の若さです。
惑星そのものは巨大なガス惑星です。重さは、NASAの発表では木星と同じくらい、Live Science の記事では木星の2〜4倍と紹介されていて、まだ幅があります。中心の星からの距離は、地球と太陽の距離の55倍。太陽系でいえば、いちばん外側の海王星の2倍近く遠いところを回っています。
ここまで若い惑星がこれまで見つからなかったのには理由があります。確認済みの系外惑星は6000個を超えますが、その多くは、惑星が星の手前を横切るときのわずかな減光を捉える方法で見つかったものです。この方法は、惑星がまだ塵の中に埋もれていたり、星から遠く離れていたりすると使えません。結果として、見つかっている惑星の大半は、数十億歳で、星のすぐ近くを回るものに偏っています。Cieza 氏は、生まれたての惑星について「いまの私たちにはほとんど見えていない」と話しています。
円盤の隙間と、10年越しの確認
生まれたばかりの星のまわりには、ガスと塵でできた円盤が広がっています。原始惑星系円盤と呼ばれ、惑星はこの中で作られます。
Elias 2-24 の円盤に隙間があることは、およそ10年前、チリにある電波望遠鏡 ALMA(アルマ)の観測で分かっていました。Cieza 氏らが2017年に報告したものです。円盤の中を惑星が回ると、通り道の物質が掃き寄せられて、溝のような隙間ができます。だから隙間は「そこに惑星がいる」しるしだと考えられてきましたが、肝心の惑星は見えていませんでした。
その後、ヨーロッパ南天天文台の VLT(超大型望遠鏡)が、隙間の中にかすかな光の点を捉えます。ただ、それが本当に惑星なのかは決着がつきませんでした。
今回の決め手になったのは、ハワイのケック望遠鏡が過去に撮っていたデータです。2018年、現在は同大学教授の Alice Zurlo 氏が、ケックの近赤外線カメラ NIRC2 でこの星を観測していました。このときも微弱な信号は写っていたものの、惑星と言い切れるほどの証拠にはなりませんでした。
Bernardi 氏は、公開されているケックの観測アーカイブからこのデータを取り出し、新しい画像処理の手法で解析し直しました。使われた観測装置はコロナグラフといって、中心の星のまぶしい光だけを隠し、そのすぐそばにある暗い天体を見えるようにするものです。チームは、隙間や模様のある円盤をもつ7つの若い星のデータを調べ、Elias 2-24 で惑星らしい信号を見つけました。さらに2020年のケックのデータにも同じ光の点が写っていました。
複数の時期の画像を並べると、光の点の動きが追えます。その動きは、たまたま背後に写り込んだ遠くの星とも、画像処理で生じた偽の像とも合わず、星のまわりを回る惑星の動きと一致しました。Bernardi 氏は、隙間を掘っているのが惑星なら惑星は隙間の中にいるはずで、実際にそこにいた、と説明しています。

理論の時間割に収まらない成長の速さ
この発見でいちばん厄介なのは、最年少という記録そのものではありません。理論の上では、まだ惑星ができているはずのない時期と場所に、惑星がいたことです。
巨大ガス惑星のでき方として最も有力なのは、コア集積モデルと呼ばれる考え方です。まず塵や氷が集まって固い芯ができ、その芯が十分に重くなると、まわりのガスを一気に引き寄せて巨大な惑星になる、という筋書きです。NASAの解説によれば、現在のモデルでは、木星の位置(地球と太陽の距離の約5倍)で木星サイズの惑星を作るのに約500万年かかります。星から遠いほど材料がまばらで、公転もゆっくりになるので、もっと時間がかかります。
ところが Elias 2-24 b がいるのは、木星の約10倍も遠い場所です。そこに、100万年たらずで木星級の惑星ができている。計算が合いません。隙間が見つかった当初に「惑星のしわざ」と断定できなかったのも、こんなに早く、こんなに遠くで惑星ができるとは考えにくかったからでした。
今回の確認で、円盤の隙間と惑星の結びつきは、以前よりずっと確かなものになりました。チームの解析では、Elias 2-24 b はコア集積モデルの中の、ガスを急速に集めて大気をまとう短い段階にあるとされています。つまり、筋書きそのものは観測と合っています。合わないのは、かかる時間です。
Cieza 氏は、500万歳だったこれまでの記録保持者でさえ、惑星形成のモデルで説明するのに苦労していたと述べています。そのうえで、Elias 2-24 b は、いまある最良のモデルにも何か重要な過程が抜け落ちていることを示している、と話しました。Zurlo 氏も、この惑星はちょうど、理論が質量や明るさをうまく予測できない段階にあると指摘しています。今後、軌道の動きから質量を直接絞り込めれば、若い惑星の進化モデルを調整し直す材料になります。

46億年前の太陽系を知る手がかり
太陽系は46億歳なので、どうやってできたかは、いま残っているものから逆算して復元するしかありません。Elias 2-24 のような系なら、その過程を進行中のまま観察できます。Cieza 氏はこの系を、太陽系のような惑星系のずっと若い姿だと表現しています。中心の星の重さも、太陽とほぼ同じです。
チームは今後、惑星の光を波長ごとに分ける分光観測などで、大気や温度、質量、ガスを取り込む勢いを調べたいとしています。
Bernardi 氏によれば、Elias 2-24 b は、いまの望遠鏡で検出できる限界ぎりぎりの天体でした。ケック、ALMA、VLT のどれかひとつだけでは確認できなかった、とも語っています。この限界を押し広げると期待されているのが、8月30日に打ち上げられたNASAのナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡です。より高性能なコロナグラフを積んでいて、星にもっと近い軌道を回る、本当の意味で木星に似た惑星まで狙えるとされています。
育っている最中の惑星がいくつも見つかるようになれば、「100万年で巨大惑星ができる」ことが例外なのか、それともよくあることなのかが分かってきます。モデルのどこが足りないのかを突き止める作業は、そこから本格的に始まります。
出典
Bernardi, A., Zurlo, A., Cieza, L. A., ほか「Searching for Embedded Protoplanets with the Keck/NIRC2 Vortex Coronagraph: Confirmation of a Core-accretion Planet in the Narrow Gap of the Elias 2-24 Disk」The Astrophysical Journal Letters, 1009(1), L3(2026年)
https://doi.org/10.3847/2041-8213/ae9bb6
W. M. ケック天文台のプレスリリース(2026年9月16日)
Youngest Exoplanet Yet Discovered Found Hiding in Keck Observatory Data
NASAの解説記事(2026年9月16日)
Newfound ‘Baby’ Planet Smashes Record for Youngest Known World
Live Science(2026年9月17日)
This million-year-old ‘baby planet’ is the youngest world scientists have ever discovered


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