AIに奪われやすい仕事、立て直しにくい層の86%が女性——米シンクタンクの分析

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「AIに置き換えられやすい仕事」を職業ごとに調べていくと、その影響がとくに重くのしかかりそうな人たちの約86%が女性だった——。米シンクタンクのブルッキングス研究所と、AIの社会的影響を研究する GovAI(Centre for the Governance of AI)が、こんな分析を公表しました。

ただ、この研究で面白いのは、女性に偏っていたという結果そのものよりも、「AIにさらされている仕事=危ない仕事」という、これまで当たり前のように使われてきた見方を、一度立ち止まって見直した点にあります。

これまでのAI影響度評価の見落とし

AIがどの仕事に影響するかを測る研究は、これまでもたくさんありました。その多くは「さらされ度(exposure)」、つまりその仕事の作業がどれだけAIで置き換えられそうかを点数にするものです。翻訳や文章作成、事務処理のように、言葉を扱う机仕事ほど高く出ます。

ところが研究チームは、ここに大事な視点が抜けていると指摘します。同じように仕事の一部がAIに置き換わっても、別の仕事へすぐ移って立て直せる人もいれば、なかなか次が見つからない人もいる。その「立て直す力」=適応力(adaptive capacity)を、さらされ度とは別に測らないと、本当に困る人を見誤ってしまう、というわけです。

四つのグループに分かれた働き手

「さらされ度が高いか低いか」と「適応力が高いか低いか」を組み合わせると、働き手は大きく四つに分かれます。

まず、AIにさらされていても適応力が高い人たち。弁護士やソフトウェア開発者、ファイナンシャルマネージャーなどがここに入ります。仕事の一部がAIに置き換わっても、給与や貯蓄に余裕があり、応用の利くスキルや人脈を持っているので、比較的立て直しやすい。

次に、そもそもAIにさらされにくく、しかも適応力も高い職業。歯科医や消防士、医師、客室乗務員などです。手や体を使う対面の仕事は、机仕事ほど簡単には置き換わりません。

三つ目は、立て直しはしにくいけれど、そもそもAIに置き換えられにくい職業。精肉や清掃などがこのグループにあたります。

問題は四つ目です。AIにさらされていて、しかも適応力も低い人たち。秘書やコールセンターの担当、一般事務、通訳・翻訳などが並びます。分析の中で、もっとも自動化されやすいと出たのは通訳・翻訳でした。

立て直しにくい層に偏る女性

数で見てみます。AIにもっともさらされている職業で働く人は、米国で約3,710万人。このうち約2,650万人、つまり7割ほどは、適応力も平均より高いグループに入っていました。仮にAIに仕事を奪われても、比較的立て直しやすい人が多数派だ、という落ち着いた話でもあります。

一方で、さらされ度が高く適応力が低い「いちばん厳しい」層は約610万人。これは、すでに失業している人(米国で約730万人)に近い規模です。そして、この610万人の約86%が女性でした。仕事の中身は事務・管理に集中していて、こうした職種は昔から女性の比率が高い、という背景があります。

つまり、AIの影響は社会に均等に降ってくるわけではなく、もともと立て直しの選択肢が少ない人へ偏りやすい——それが、この分析がいちばん伝えたかったことでした。

適応力の測り方

では「適応力」はどうやって点数にしたのでしょうか。研究チームは主に四つの要素を組み合わせています。貯蓄などの金銭的な余裕(しばらく収入が途切れても持ちこたえられるか)、スキルの応用しやすさ(伸びている職種へ移れるか)、地元にどれだけ求人があるか、そして年齢(高齢になるほど転職のハードルが上がる)です。男女の比率は、Lightcast という労働市場データを使って算出しています。

困りやすい人が集まる地域

厳しい立場に置かれやすい人は、地域にも偏りがありました。大学町や州都といった、比較的小さな都市圏に多く、とくに米国内陸の山岳部西部や中西部で目立つといいます。事務の仕事が、その地域の雇用に占める割合が高いことが背景にあるとされています。

分析が示す政策上のヒント

研究チームの主張はシンプルです。「AIにさらされている仕事ほど大きな打撃を受ける」と単純に考えると、支援の的を外しかねない。むしろ目を向けるべきは、立て直す力が弱い層だ、と。限られた支援の資源を、いちばん困る人へ届けるための“地図”を作った、という位置づけです。

これは米国のデータをもとにした分析なので、そのまま日本に当てはまるわけではありません。ただ、事務・管理の仕事に女性が多いという構図は日本にも重なる部分があり、「AIの影響は、職種だけでなく、誰がその職種に多いかによっても偏りうる」という視点は、考えるヒントになりそうです。

解釈上の留意点

読むうえでの補助線をいくつか。まず、この分析の土台になっているのは全米経済研究所(NBER)の作業論文(ワーキングペーパー)で、正式な査読を経た段階のものではありません。

また「さらされ度」は、あくまで「その作業がAIで置き換えられそうか」という推計であって、実際にその仕事がなくなると決まったわけではありません。現時点では、AIが米国の雇用全体に与えている影響は限定的だ、という見方もあります。数字は「これから起こりうること」を見積もった地図であって、確定した未来ではない——その前提で受け止めるのがよさそうです。

出典・もっと知りたい人へ

分析の解説(ブルッキングス研究所・英語・無料で読めます):
Measuring US workers’ capacity to adapt to AI-driven job displacement

関連報道(The Register・英語):
Female-dominated careers among most exposed to AI disruption

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