宇宙には、わずか2分足らずで1回転している、けっこう大きな岩があるそうです。直径はおよそ700メートル。そんな巨大な石ころが、コマのようにくるくる回っている——そんな天体が見つかった、という話です。
主役は「2025 MN45」という小惑星
今回の主役は、2025 MN45(エムエヌ・よんじゅうご)と名付けられた小惑星です。火星と木星のあいだに広がる「小惑星帯(しょうわくせいたい)」、つまり無数の岩がぐるぐる回っているエリアにいます。
大きさは直径およそ710メートル。東京スカイツリー(634メートル)より、ひとまわり大きいくらいの岩のかたまり、とイメージするとわかりやすいかもしれません。
この小惑星のすごいところは、その自転の速さです。たった1.88分——秒に直すと113秒ほどで、くるりと1回転してしまいます。直径500メートルを超える小惑星としては、これまで観測された中で最速だそうです。

本当はバラバラに飛び散ってもおかしくない
「速く回っているだけでしょ?」と思うかもしれませんが、面白いのはここからです。
小惑星の多くは、ひとつの大きな岩というより、小さな石やかけらが重力でゆるくくっついただけの「がれきの山」のような状態です。英語では rubble pile(ラブルパイル=がれきの山)と呼ばれます。こういう天体は、あまり速く回すと遠心力でバラバラに飛び散ってしまいます。
小惑星帯では、だいたい2.2時間より速く回ると壊れ始める、という目安があります。ところが2025 MN45は、その「壊れる速さ」の目安をはるかに超えて、わずか2分弱で回っている。ざっと計算すると、70倍ほど速い、ということになります。
つまり、この小惑星はがれきの山ではなく、かなり頑丈な一枚岩に近い——そう考えないと、こんな速さで回りながら形を保てない、というわけです。研究チームの見積もりでは、固い岩なみの強度が必要だといいます。
どうやって見つけた?
見つけたのは、南米チリにある「ベラ・C・ルービン天文台」。世界最大級のカメラを積んだ新しい天文台で、2025年の春に観測を始めたばかりです。
2025年の4月から5月にかけて、たった7晩ぶんの観測データの中から、2025 MN45を含めておよそ1900個もの新しい小惑星が見つかりました。そのうち19個が「やけに速く回るもの」で、2025 MN45はその記録保持者だった、という流れです。この成果は2026年1月、査読を経た論文として天文学の専門誌に発表されました。
だから何がうれしいの?
自転の速さは、その小惑星が「中身のぎっしり詰まった硬い岩なのか」「ゆるいがれきの山なのか」を教えてくれる手がかりになります。2025 MN45のように極端に速いものは、はるか昔に大きな天体どうしがぶつかって砕けたとき、その硬い芯の部分が飛び散ってできたかけら——という可能性も指摘されています。小さな岩ひとつから、太陽系の荒っぽい過去をのぞける、というわけです。
ルービン天文台はこれから10年がかりで南の空を毎晩撮りつづける予定で、こうした速く回る小惑星はもっとたくさん見つかると期待されています。今回はその、ほんの手始めの一個。これからどんな“変わり者”が出てくるのか、ちょっと楽しみな話です。


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