61件のドローン通報、立件は1件——デンマーク警察の静かな訂正

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デンマークの警察管区のひとつが、昨年秋に「検証済み」と言い切ったドローンの目撃について、その判断を取り下げた。目撃報告があっただけでは、ドローンが本当に飛んでいたとは確認できない——南ユトランドの警察がそう認めた、という話だ。地元メディアのRADIO IIII(Radio4)が6月30日に報じ、テクノロジー系メディアのHackadayが拾ったことで広まった。

「検証済み」から「確認できない」へ

舞台になったのは、デンマーク・南ユトランド警察(Syd- og Sønderjyllands Politi)の管区。昨年9月24日の夜、エスビャウ、セナボー、そしてF-16やF-35の基地があるスクリュストロプの各空港・飛行場でドローンが目撃されたとして、警察は深夜2時20分にプレスリリースを出した。そこには「ドローン活動は検証済み(verificeret)」「ドローンは点灯した状態で飛行し、地上から目撃された」と書かれていた。機種は特定できていないが、安全に可能なら撃墜も検討する、とまで踏み込んだ内容だった。

それから9か月あまり。同警察のヘンリク・トラーネ警視は、当時の判断を後退させた。軍や市民、さらには自分たちの職員からも「ドローンを見た」という報告が相次いだのは事実だと認めたうえで、「今わかっているのは、目撃が一件あるというだけでは、安全上問題となるドローン飛行があったと確認するには足りない、ということだ」と語っている。かつて「検証済み」とした活動は、もはやそうは見なせない——というのが現在の見解だ。

61件の通報、立件は1件

南ユトランド警察は、9月24日から10月2日までに61件のドローン通報を調べた。その結果、警察が言うところの「安全上問題となる違法なドローン飛行」を裏づける証拠は、見つからなかった。

ただし、「何も飛んでいなかった」という話ではない。同じ9月24日には、飛行が許可されていない場所で業務目的のドローンを飛ばしていた人物が1人、立件されている。つまり、実際に飛んでいたドローンはあった。ただ、大騒動の引き金になったような、意図的で脅威になりうる飛行のほうは確認できなかった、ということになる。

もうひとつ押さえておきたいのは、今回訂正したのが南ユトランドの管区に限った話だという点だ。昨年9月22日にコペンハーゲン空港を数時間閉鎖させた一件などは、別の管区の話でこの訂正の対象ではない。デンマーク全体の騒動がまとめて否定された、というわけではない。

英国ガトウィックとの対比

この訂正が注目されたのは、過去に似た騒動を起こした国の対応と、あまりに対照的だからだ。

2018年12月、ロンドンのガトウィック空港が、ドローン目撃の報告を受けて3日近く閉鎖された。約1000便が欠航し、14万人に影響が出た。ところが18か月、80万ポンドをかけ、5つの警察組織が関わった捜査でも、犯人も、ドローンが飛んでいた物的証拠も出てこなかった。目撃は170件寄せられ、うち115件が「信頼できる」とされたが、写真も動画も1枚もない。近くに住むドローン愛好家の夫婦が逮捕され、2日後に無罪放免となった(のちに補償を受けている)。専門家のなかには「そもそもドローンはいなかったのでは」と見る人もいたが、警察は長く「悪意ある攻撃だった」という立場を崩さなかった。2024年になって開示された記録では、捜索にあたった警察航空隊が期間中ドローンを一度も確認していなかったことも明らかになっている。

非を認めず、情報公開の請求にも長く応じない——その英国の対応と比べると、デンマークの警察が比較的すみやかに「あれは確認できていなかった」と言い直したことの意味は大きい。目撃を真剣に受け止めるのは当然だとしても、過剰に反応して引っ込みがつかなくなるより、間違いを認めて訂正するほうが、次に本当の通報があったときに信頼される。

なぜ「見えてしまう」のか

夜空の遠くにある光を、人はうまく見立てられない。速く動く小さな光までの距離や大きさを、目測で正しくつかむのは難しい。ガトウィックの一件を追った報道でも、この「人の知覚の弱さ」が誤認の温床として指摘されている。

今回のデンマークでも、ドローン愛好家のコミュニティが、目撃のあった時刻に近くを通った航空機の飛行経路を洗い出し、「あの光は飛行機だったのでは」と照合を進めていた、とHackadayは伝えている。点灯して飛ぶ航空機の灯火は、条件しだいでドローンにも見えうる。真上を通る一機の光が、暗い空を背景にすると、まったく別のものに化けることがある。

訂正できることの価値

騒動そのものより、そのあとの身の処し方に、その組織の姿勢が出る。目撃をないがしろにはしないが、確認できていないことは「確認できていない」と言う。当たり前のようでいて、いったん大きく報じてしまった後にそれをやるのは難しい。南ユトランドの警察は、そのやりにくいほうを選んだ。ドローン目撃の騒ぎは各地で報じられ続けているだけに、この訂正が持つメッセージは、もう少し広く届いてほしいと思う。

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