大型トラックの電動化には、乗用車とはくらべものにならない壁があります。電池が重すぎるのです。たとえばテスラの大型EVトラック「セミ」は、電池だけでおよそ6トンを積んでいると推定されています。トラックには積める総重量の上限があるので、電池が重いぶんだけ荷物が減ります。運んでお金をもらう車にとって、これはかなり痛い話です。
カナダ・ブリティッシュコロンビア州の小さな町ドナルドにある新興企業Edison Motors(エジソン・モーターズ)は、この問題に対して少し変わった答えを出しました。ディーゼルエンジンで発電して、その電気でモーターを回して走るトラックです。

電池のトラックが行けない場所がある
Edison Motorsが相手にしているのは、ふつうの高速道路輸送ではありません。林業のログトラック、油田の重量物運搬、クレーン車、除雪車。いわゆる「現場仕事」のトラックです。
こうした仕事には、電池だけのEVトラックが苦手な条件がそろっています。まず、仕事場が山奥や油田で、充電設備からはるか遠く離れています。次に、坂道で重い荷を引くため大きな力が要ります。そして先ほどの重量問題です。電池を6トン積めば、そのぶん丸太が積めません。
会社を立ち上げたChace Barber氏は、もともとトラック運転手です。「緑のトラック」を名乗る車が現場の仕事に耐えられない現実にうんざりして、自分たちで作ることにした——同社はそう説明しています。2023年には、北米で初めてとするディーゼル・エレクトリック方式の林業トラックを作り上げました。
答えは機関車と同じ仕組みだった
おもしろいのはここからです。Edison Motorsの出した答えは、新発明ではありませんでした。ディーゼル機関車が昔から使っている仕組み、そのままなのです。
仕組みはこうです。スカニア製のディーゼルエンジン(New Atlasによれば9リッター)を、いちばん効率のよい一定の回転数で回し続けて、発電機として使います。公式仕様では発電出力は最大500kW。その電気で110kWhのバッテリーを充電しながら、タイヤ側に組み込まれた電動アクスル「CDTL 5000」でトラックを走らせます。エンジンとタイヤは機械的につながっていません。エンジンの仕事は発電だけです。

この方式の利点は、電気とディーゼルのいいとこ取りができることです。発進や登り坂では、電気モーターならではの、踏んだ瞬間に立ち上がる大きな力が使えます。一方で航続距離と補給はディーゼルそのもの。山奥のスタンドで5分給油すれば、また走れます。充電網は要りません。
もうひとつ地味に大きいのが、大型トラック名物の18段マニュアルトランスミッションが要らなくなることです。エンジンが走行につながっていないので、複雑な変速機構そのものが消えます。
力の数字は現場仕事らしく豪快です。駆動軸を3つ持つトライドライブ構成では、最大出力2,400馬力、タイヤでのトルクは150,000 lb-ft(約203,000Nm)。ただしこれは最上位構成の最大値で、駆動軸1つの構成では800馬力です。またトルクの数字は、減速後のタイヤで発揮される値なので、エンジンのカタログトルクと同じ土俵の数字ではない点には注意が要ります。
ソフトウェアでロックしない、という設計思想
このトラックには、仕組み以外にもうひとつ特徴があります。徹底して「直せること」を優先した設計です。
部品はできるかぎり市販品を使い、パネルや内装はボルト留め。故障の診断や修理を専用ソフトウェアで囲い込むこともしていません。オーナーが自分で診断して、自分のレンチで直せることを前提にしています。計器類もアナログです。
近年の自動車は、メーカー専用の診断機がないと修理できず、部品交換にもソフトウェアの認証が要る方向へ進んでいます。山奥で壊れたら自分で直すしかない現場のトラックにとって、その方向は都合が悪い。元運転手が作る会社らしい割り切りです。スキッドプレート、雪を溶かすヒーター付きヘッドライト、40トンのウインチといった装備も、同じ発想から来ています。
ただし、まだ量産前
期待が持てる話ですが、現在地は正確に書いておきます。
Edison Motorsはまだ量産を始めていません。現在は林業・重量運搬・除雪向けに顧客ごとの個別製作を進めている段階で、量産型のトラックは2027年に最初の数台を作る計画です。2026年5月にはカナダの環境当局からハイブリッドトラック製造の承認を受け、個人投資家から資金を募りながら開発を続けています。
価格は、同等のディーゼルトラックよりおよそ25%高くなるとされています。そして肝心の燃費や排出ガスがどれだけ改善するのか、具体的な数字はまだ公表されていません。ディーゼルを燃やして走ることに変わりはないので、「環境にいい」と言い切れるかどうかは、実際の数字が出てから判断すべきところです。日本での販売予定も、いまのところありません。
それでも、この話が示していることは小さくないと思います。「電動化=電池を積む」だけが答えではなく、電池が向かない仕事には別の形の電動化がある。しかもその形は、機関車の中で何十年も走り続けてきた、実績のある仕組みでした。新しい技術を探すだけでなく、すでにある解を別の場所へ持ってくる。そういう工夫が刺さる領域は、まだ残っているようです。
出典・もっと知りたい人へ
この記事は、New Atlasの報道とEdison Motorsの公式情報をもとにまとめました。くわしく知りたい人は、下のリンクからどうぞ(いずれも新しいタブで開きます)。


コメント