ChatGPTが「際どい話」を始める前に、OpenAIがあなたの年齢を推定する

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ChatGPTで成人向けのやり取りが解禁される――その手前で、OpenAIがあなたの年齢を「推定」する仕組みを動かし始めました。生年月日の自己申告に頼るのをやめ、使い方のクセから「この人は18歳未満かどうか」を機械が見分ける、という方式です。未成年を守るための安全策であると同時に、年齢確認を入り口にしたデータの扱いという論点も、同じ場所に立ち上がります。

成人向け解禁の前に立つ年齢の壁

背景にあるのは、OpenAIが進めてきた方針の転換です。同社のサム・アルトマンCEOは、年齢を確認できた成人ユーザーに対しては、性的な内容を含むより際どいやり取りも認めていく考えを示してきました。アプリ部門の責任者は、いわゆる「アダルトモード」が2026年の早い時期に入るとの見通しを語っています。

ただ、ChatGPTは週あたり約8億人が使う規模のサービスで、その中には当然、未成年も相当数います。さらにOpenAIはチャット内の広告も始めており、子ども向けの広告には別のルールがあります。「大人には大人の使い方を許しつつ、未成年はそこから切り分ける」必要が出てきた。その仕分けの中心に置かれたのが、今回の年齢推定です。

年齢を見分ける三つのやり方

まず言葉の整理から。年齢をめぐる仕組みには、似ているようで別物の三つがあります。

  • 年齢確認(verification):運転免許証やパスポートなど、公的な書類で確かめる。
  • 年齢推測(estimation):顔写真などの生体情報から、見た目で見積もる。
  • 年齢推定(prediction/inference):その人にまつわる事実を手がかりに、結論を導く。

OpenAIが新しく入れたのは、三つめの「推定」です。アカウントを作ってからどれくらい経っているか、何時ごろ使うことが多いか、ふだんの使い方のパターン、そして自己申告の年齢――こうした行動とアカウントまわりの信号を組み合わせて、「18歳未満らしいか」を判断します。会話で扱う話題も手がかりのひとつとされています。書類も顔写真も最初は求めず、ふるまいから当てにいく、というのがこの方式の特徴です。

注意したいのは、これが申告した生年月日の「上書き」になりうる点です。アカウント作成時に18歳以上と入力していても、推定モデルが未成年と見れば、未成年向けの扱いが適用されることがあります。

未成年と判断されると変わること

未成年と推定されたアカウントには、より安全寄りの「ティーン向け体験」が当てられます。性的なやり取りや過激な暴力表現、自傷に関わる話題などが抑えられ、広告も表示されません。とはいえアカウントが止まるわけではなく、調べものや学習、作成といったふだんの使い方はそのまま続けられます。

OpenAIは、年齢に確信が持てない、あるいは情報が足りない場合は、安全な側に倒して未成年向けの扱いを選ぶとしています。判断に迷ったら厳しいほうに寄せる、という設計です。

誤判定されたときの確認手順

「自分は大人なのに未成年扱いされた」場合は、年齢確認に進めば外せます。ここで登場するのが、OpenAIが組む外部の本人確認サービス「Persona(ペルソナ)」です。スマホやウェブカメラでその場の自撮りを撮るか、政府発行の身分証をアップロードする。Personaが顔と身分証を照合し、生年月日を確かめる流れです。

プライバシー面の設計としては、OpenAI側は身分証そのものを受け取らず、受け取るのは生年月日か年齢の推定結果だけだとされています。Personaは確認後、アップロードされた身分証や自撮りを7日以内に削除するといいます。逆に、最初から自分でPersonaの確認を済ませておけば、以後はアカウントに年齢推定そのものが走らなくなる、という選び方もできます。

導入を急ぐ事情

そもそも、なぜここまでして年齢を見分けようとするのか。理由は大きく二つあります。

一つは、安全をめぐる圧力です。ChatGPTを含むチャットボットは、利用者の自殺に関連したとされる訴訟や、議会での公聴会の対象になってきました。OpenAIは米連邦取引委員会(FTC)の調査も受けています。未成年保護を「掲げるだけ」で済ませられない状況にある、ということです。

もう一つは、収益です。広告と成人向けの機能は、どちらも「未成年には届けてはいけない」もの。これを両立させるには、利用者を年齢で仕分ける土台がいる。つまり今回の年齢推定は、安全策であると同時に、新しい商売を回すための前提でもある。この二面性が、今回の話のいちばんの読みどころです。

精度と公平性をめぐる懸念

当然、慎重論も出ています。電子フロンティア財団(EFF)の担当者は、推定を外したときの負担が利用者側に降りかかる点を問題にしています。誤って未成年と判定されれば、その人は「自分は大人だ」と示すために、別の会社へ自分の情報を差し出すことになるからです。同じ局面を、OpenAIにとっては年齢推定モデルをさらに鍛える機会と見ることもできる、という指摘も添えられています。

そもそも、ふるまいから年齢を当てる精度には限界があります。オーストラリアで行われた年齢確認技術の試験では、誤差18か月以内で当てられたのは全体の85%ほどでした。米国立標準技術研究所(NIST)の2024年の調査でも、18歳に近づくほど判定は難しくなり、17歳と18歳の見分けはほぼ当て推量だと指摘されています。ブラウザ開発元のMozillaは、年齢を確かめる技術は数多くあるものの、有効性・使いやすさ・プライバシー・安全のあいだの根本的な緊張は解けていない、との見方を示しています。

回避のしやすさも残ります。話題が手がかりの一つである以上、新しいアカウントで高齢者らしい話題を重ねてから際どい要求をする、といった抜け道は想像がつきます。結局、規則を守る人ほど誤判定の手間を被り、すり抜けたい人はすり抜ける――年齢ゲートにつきまとう、おなじみの非対称がここにもあります。

つまり、未成年保護という建前と、広告・成人向け機能という収益、そして「ふるまいで年齢は本当に当たるのか」という技術の限界。この三つが同じテーブルに乗っているのが、ChatGPTの年齢推定です。生成AIがこれだけ生活に入り込んだいま、年齢の「壁」をどう設計するかは、他社にも遅かれ早かれ回ってくる問いになりそうです。

出典・参考

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