コレステロールを下げる薬を飲んでいるのに、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールがなかなか目標まで下がらない。そういう人は珍しくありません。そんな「薬が効きにくいタイプ」の人を対象にした臨床試験で、既存の薬と、まだ承認されていない新しい錠剤を組み合わせたところ、LDLコレステロールをほぼ半分まで下げられた、という結果が出ました。クリーブランド・クリニックが中心になって進めた試験で、医学誌The Lancetに発表されています。
下がりにくい悪玉コレステロール
LDLコレステロール(low-density lipoprotein=低密度リポタンパク質、いわゆる「悪玉」)が血液中に多すぎると、動脈の壁にたまってプラークと呼ばれる固まりを作り、血管を狭くしていきます。これが進むと、心臓発作や脳卒中のリスクが上がります。だからLDLを下げることは、心臓や血管の病気を防ぐうえで大きな意味を持ちます。
下げる薬の代表がスタチンで、多くの人ではこれでうまくコントロールできます。ただ、高いままで下がりきらない人が一定数いるのも事実です。原因は食事や体重、喫煙、加齢などさまざまで、生まれつきの体質が関わることもあります。スタチンに加えて何種類かの薬を重ねても目標値に届かない、という難しいケースが現場には存在します。今回の試験は、まさにそういう人たちに向けたものです。
配合でLDLが約半分に
試験に参加したのは、スタチンを含むできる限りの治療を受けてもなお、LDLコレステロールが70 mg/dLを超えていた407人。心臓や血管の病気のリスクが高い人たちです。この人たちを、新薬オビセトラピブ(obicetrapib)と既存薬エゼチミブ(ezetimibe)を一錠にまとめた配合薬のグループ、それぞれの薬を単独で飲むグループ、見た目をそろえた偽薬(プラセボ)のグループに分けて比べました。
84日(約3か月)後、配合薬のグループはプラセボと比べてLDLコレステロールが48.6%下がっていました。ほぼ半分です。オビセトラピブを単独で飲んだ場合の低下は31.7%だったので、二つを組み合わせたほうが、どちらか一方だけよりもしっかり下がったことになります。重い副作用も目立たず、おおむね問題なく使えたとされています。つまり、片方ずつでは届かなかったところに、組み合わせることで手が届いた、というのがこの試験の中身です。
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仕組みの違う薬を重ねる発想
なぜ組み合わせると効くのか。鍵は、それぞれの薬が別々の経路でLDLを減らしている点にあります。スタチンは肝臓でコレステロールが作られるのを抑えます。エゼチミブは腸でコレステロールが吸収されるのを抑えます。そして新薬オビセトラピブは、CETP(コレステリルエステル転送タンパク質)という、善玉のHDLから悪玉側のリポタンパク質へコレステロールを移し替える働きを持つタンパク質をブロックします。これによってLDL側に渡るコレステロールが減り、さらに肝臓がLDLを回収する働きも高まると考えられています。
作る・吸収する・移し替える、という別々の入り口をそれぞれふさぐので、仕組みの違う薬は互いの効果を打ち消さず、重ねて使える。だから一つでは足りない人でも、合わせ技で大きく下げられる見込みが出てくる、というわけです。
期待はできるが、まだ試験の段階
薬が効きにくいタイプの人に新しい選択肢が増えるかもしれない、という意味で、関心を集めやすい結果です。ただ、いくつか押さえておきたい点があります。
まず、オビセトラピブはこの記事の時点でまだ承認されていない薬で、誰でも処方してもらえるわけではありません。実際に使えるようになるかどうかは、各国の規制当局の判断を待つ段階です。そして今回わかったのは「LDLの数値が下がった」ことであって、「心臓発作や脳卒中そのものが減った」ことではありません。LDLを下げる治療は心臓や血管の病気を防ぐ助けになると考えられていますが、この配合薬が実際にそうした重い病気を減らせるかどうかは、別に進められている試験の結果を見ないと確かなことは言えません。なお、この試験は新薬を開発する製薬会社(NewAmsterdam Pharma)の資金で行われています。
下がりにくいコレステロールに悩む人にとって、選択肢が広がる方向の研究であるのは確かです。そのうえで、結果が出そろうのを落ち着いて待つのがちょうどいい距離感だと思います。
出典
研究の発表内容は、以下の一次情報で確認できます。


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