はやぶさ2、7月5日に小惑星トリフネへ超至近フライバイ——中心から1キロ、秒速5キロのすれ違い

宇宙・天文
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リュウグウの砂を地球へ届けた日本の探査機はやぶさ2が、7月5日、また別の小惑星のすぐそばを猛スピードでかすめていきます。狙う相手は「トリフネ」。中心からわずか1キロほどの距離まで近づく、このクラスの探査機としては過去最接近級のフライバイ(接近通過)です。

試料帰還後も続く拡張ミッション

はやぶさ2は2014年に打ち上げられ、2018年に小惑星リュウグウへ到着しました。表面に人工クレーターを作るなどの成果を挙げ、2020年には試料の入ったカプセルを地球へ送り届けています。本来の目的は、ここでひと通り達成済みです。

ただ、機体にはまだイオンエンジンの燃料が残っていました。そこで「拡張ミッション」として飛行を続け、最終的には2031年、直径11メートルしかない極小の小惑星1998 KY26を目指しています。これは人類がこれまで訪れたどの小惑星よりも小さく、うまくいけば着陸も狙うという、それ自体が挑戦的な計画です。今回のトリフネは、その長い旅の途中で立ち寄る相手にあたります。

目的地・小惑星トリフネ

トリフネは地球の近くを回る小惑星(地球接近天体)で、仮符号は2001 CC21。日本神話の「天鳥船(あめのとりふね)」にちなんだ名前で、鳥のように速く、岩のように安定して進む船、という意味が込められています。高速ですれ違う今回の運用を無事にこなせるように、という願いを重ねた命名です。

大きさは直径450〜500メートルほどと見られますが、確かな値はまだ分かっていません。細長い形らしいという地上観測の結果はあるものの、単体の岩のかたまりなのか、小石や岩が緩く集まった「瓦礫(がれき)の寄せ集め」なのか、2つの天体がくっついた形なのかも、近づいてみるまでは判然としない状態です。

選ばれた当初、トリフネはリュウグウ(炭素を多く含むC型)とは違う、観測例の少ない「L型」と考えられていました。ところがその後の地上からの観測では、初代はやぶさが訪れたイトカワと同じ「S型」(岩石質)らしいという結果も出ています。どちらにせよ、近くで直接調べたデータは貴重で、地球に近い小惑星の多様性を知る手がかりになります。

至近1キロ・秒速5キロの通過

JAXAの計画では、はやぶさ2はトリフネの中心からおよそ1キロのところを、秒速約5キロ(時速にすると約1万8000キロ)で通り抜けます。日本時間の7月5日夕方ごろ、地球からはるか遠い、3億キロを超える深宇宙で起きる出来事です。

この速さだと、形がはっきり見えるほど近い距離にいられるのは、ほんの数秒。その短い間に、搭載カメラで10枚ほどの画像を撮ることを見込んでいます。すれ違いざまの撮影なので、観測できるのはトリフネの片面だけです。しかも通過中は地上から操作する余裕がなく、露出などの設定はあらかじめ機体に入れておく必要があります。一発勝負に近い観測です。

高速接近が持つ意味

なぜそこまで近づくのか。ひとつは、精密な軌道誘導の技術を実証するためです。探査機を狙った場所へ正確に導く力は、小惑星に意図的にぶつけて軌道を変える――いわば地球を小惑星衝突から守る「プラネタリーディフェンス」の技術につながります。2022年にNASAのDART探査機が小惑星に体当たりして軌道を変えた、あの流れの延長線上にある話です。

もうひとつは、予行演習としての価値です。もし将来、地球に衝突しかねない小惑星が新たに見つかったら、限られた準備時間で素早く近づき、大きさや成分、自転の様子を調べて対応を決めなければなりません。本来は別の目的で作られた探査機を使い、あまり素性の分からない相手へ短時間で接近して情報をとる――今回のフライバイは、そのリハーサルにもなります。

残された不確かさと留意点

見どころが多い一方で、リスクの高い運用でもあります。はやぶさ2の科学チームに加わる、欧州のHera計画主任研究者パトリック・ミシェル氏は、もともと想定していなかった運用である点と、相手の大きさすらよく分かっていない点を挙げて、難しさを率直に認めています。秒速5キロの世界では、わずかな軌道のずれが大きな失敗につながりかねません。

それでも、新しい小惑星に近づくたびに研究者は驚かされてきた、とミシェル氏は言います。今回もまた、小惑星という“動物園”に見たことのない一匹が加わるかもしれない――そんな期待のかかる数秒間が、7月5日にやってきます。

出典

JAXA「小惑星探査機『はやぶさ2』による小惑星『トリフネ』フライバイの時刻決定」
JAXA はやぶさ2プロジェクト「小惑星2001 CC21の名前が『トリフネ』と決まりました」
Impress Watch「『はやぶさ2』、7月に小惑星へ高速接近 1km以下まで近づき秒速5kmで通過」
アストロアーツ「地球帰還後の『はやぶさ2』は2031年に小惑星1998 KY26へ」
Space.com「Japanese probe set for super-close flyby on July 5」

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