AIに1回聞くと電気と水はどれだけ減るのか——数字で見えてきた節電のツボ

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AIに1回質問すると、電気と水はどれくらい使われるのか。長いあいだ「かなり使っているらしい」という漠然とした話しかなかったこのテーマに、具体的な数字が出てきています。Googleが公表した値によれば、AIアシスタントのGeminiに標準的な長さの文章で1回質問すると、消費電力は0.24ワット時、水は0.26ミリリットル、二酸化炭素の排出は0.03グラム相当。電力はテレビを9秒見るより少なく、水は5滴ぶんです。

この数字だけ見ると、拍子抜けするほど小さい。ところが話はそこで終わりません。科学メディアのLive Scienceが2026年8月に掲載した記事(Knowable Magazine発)では、この「1回ぶんの数字」を出発点に、規模の問題と、私たち使う側にできる工夫が整理されています。読んでいくと、節電のツボが直感とはだいぶ違う場所にあることが分かってきます。

AIに1回聞いたときの消費量

まず数字の出どころから。Googleは2025年8月に、Geminiへの1回の質問(テキスト)にかかる電力・水・二酸化炭素を自社で測定した技術論文を公開しました。それによると、標準的な長さのテキスト質問1回あたりの中央値は、電力0.24ワット時、水0.26ミリリットル、二酸化炭素換算0.03グラム。ガソリン車を1.6キロ走らせると約400グラムの二酸化炭素が出ることを考えると、1回ぶんは確かにささやかです。

ここで押さえておきたい点が2つあります。ひとつは、この数字が第三者の検証を経たものではないこと。Googleが自社のインフラを自分で測った値で、論文も査読を受けていません。もうひとつは、あくまで「Geminiの値」であること。AIのモデルは種類によって消費量の桁が違うので、AI全般がこの水準というわけではありません。実際、OpenAIのサム・アルトマンCEOは、ChatGPTの平均的な質問1回あたりを約0.34ワット時と述べていて、モデルや測り方で数字は変わります。

Googleはあわせて、直近1年でGeminiの1回あたりの消費電力が33分の1になったとも報告しています。ただしこれは前年の自社との比較で、効率化が急速に進んでいることを示す数字ではあっても、いま絶対的に省エネだという意味ではありません。

1日数十億回という規模

1回が小さくても、回数が桁外れなら話は変わります。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの計算機科学者イヴァナ・ドロブニャク氏は、OpenAIが2025年に公表した利用状況をもとに、ChatGPTへの質問は1日あたりおよそ32億件にのぼると推定しています。

データセンター全体で見ると、国際エネルギー機関(IEA)の集計で、世界の消費電力は年間414テラワット時。これは世界の電力使用量の約1.5%にあたります。しかも伸び方が変わってきていて、それまで年12%だった増加率が、2025年には17%に跳ね上がりました。IEAは2030年までにデータセンターの電力需要が倍以上になると見込んでいます。なお、この414テラワット時にはAI以外の用途——動画配信やクラウドサービス全般——も含まれているので、全部がAIの消費というわけではありません。それでも、伸びを牽引しているのが生成AIであることは各所で指摘されています。

では、使う側にできることはあるのか。記事では専門家たちが4つの工夫を挙げています。

専門家が挙げる4つの工夫

1つめは、簡単な用事にAIを使わないこと。オーストリアのヨハネス・ケプラー大学でAIを研究するギュンター・クランバウアー氏は、「ChatGPTに『今日は何を着ればいい?』『天気はどう?』と聞くのは、スーパーへの買い物にコンコルドで行くようなもの」と表現しています。AIは画像処理用のプロセッサ(GPU)を使って膨大な計算をするため、ウェブ検索やメールのような軽い処理よりずっと電気を食うのです。天気を知りたいだけなら、普通の検索で十分です。検索エンジンが勝手に付けてくるAI要約も、探している記事があるだけなら切ってしまってよい、とコーネル・テックのウディット・グプタ氏は言います。

2つめは、小さくて用途を絞ったモデルへの切り替え。翻訳や要約のような決まった作業なら、何でもできる巨大モデルは要りません。ドロブニャク氏がUNESCOと2025年に発表した研究では、翻訳・要約などの作業を大規模モデル(MetaのLlama 3.1)から専用の小型モデルに置き換えたところ、消費エネルギーは15分の1から50分の1になり、しかも出来上がりの品質はむしろ良くなりました。切り替えによる削減効果は全体で90%にのぼり、この研究で試した中では最も強力な節電策だったといいます。グプタ氏の言葉を借りれば、「メールの手直しに1兆パラメータのモデルは要らない」。ただし、こうした小型モデルは使い勝手の面で見劣りすることが多い、と記事は但し書きしています。Hugging Faceのようなプラットフォームで無料公開されてはいるものの、誰でも今日から気軽に、とはいかないのが現状です。

3つめは、長い返事を求めないこと。そして4つめは、画像や動画の生成を絞ること。この2つには共通する原理があって、そこがこの記事のいちばん面白いところです。

節電のカギを握る「返事の長さ」

直感的には、長い質問文を送るほど電気を食いそうな気がします。ところが実測の結果は逆でした。ドロブニャク氏らのUNESCOの研究では、AIへの指示で出力を半分に減らすと消費エネルギーは約50%減ったのに対し、質問文のほうを半分に短くしても、削減効果はわずか5%だったのです。

つまり、電力を決めているのは「聞く量」ではなく「しゃべらせる量」。ChatGPTのようなチャットAIの中身である大規模言語モデルは、返事の単語を1つ生み出すたびに、質問文とそこまでに書いた文章をまるごとモデルに通して膨大な計算をやり直します。返事が長くなるほど、この計算が積み重なっていく仕組みです。ドロブニャク氏は「エネルギー消費を最も左右するのは出力のサイズ」だと述べていて、サンフランシスコ市と共同でまとめたAI利用者向けの節電ガイドでも、「箇条書き5つまで」のように出力量を指定することを勧めています。

同じ原理は、モードの選び方にも効きます。ミシガン大学のモシャラフ・チョウドリー氏が公開モデルの電力を測定したところ、アリババクラウドのモデルQwenのあるバージョンは、じっくり考えながら答える「推論モード」だと、通常の会話モードに比べて約10倍の量の文章を出力し、そのぶん電力消費も大きく増えていました。難しい問題のときだけ推論モードを使い、普段は標準モードにしておく——それだけでも差が出ます。

画像や動画の生成が文章より桁違いに電気を食うのも、結局は同じ理屈です。何百万というピクセルを、画像全体を処理し直しながら何度も繰り返し描いていくため、計算量が跳ね上がります。ドロブニャク氏の勧めは、まず低い解像度で試して、方向性が合っていたら解像度を上げること。ゼロから生成するより既存の画像を編集するほうが軽いこと、複数枚作るなら別々に頼まず1回のやり取りにまとめるほうが効率的なことも挙げられています。ちなみにPew Research Centerの調査では、アメリカの13〜17歳の約4割がAIでの画像・動画の作成や編集を使っているそうで、この用途はもう特別なものではなくなっています。

個人の工夫と企業の責任

ここまで読んで、「そこまで気を使う意味があるのか」と思った人もいるかもしれません。実は記事自身が、その点に正直です。こうした個人の行動は多くの面で「バケツの一滴」にすぎない、と専門家たちも認めています。AIの環境負荷を本当に減らす責任の大半は、省エネなアルゴリズムと効率のよいハードウェアを作る企業の側にあります。

それでも、とドロブニャク氏は言います。「個人の選択は無意味ではないし、人々が思っている以上に効果の大きいものもある」。目的に合った道具を選べる利用者は、実際に違いを生み出せる、と。天気は検索で調べ、返事の長さを指定し、画像は低解像度で試してから仕上げる——どれも使い勝手をほとんど損なわない工夫です。

個人的には、「1回0.24ワット時」という具体的な数字が出てきたこと自体に意味があると感じます。これまでAIの環境負荷の話は、「ものすごく使っているらしい」と「大したことないらしい」が根拠なくぶつかりがちでした。自社測定で査読前という限界はあるにせよ、数字があれば、何がどれだけ効くのかを冷静に比べられます。今後、他社からも同じ土俵の数字が出てくれば、モデル選びの基準に「消費電力」が加わる日も来るかもしれません。

出典

元記事:Using AI has an environmental impact — here are 4 ways you can minimize it(Live Science / Knowable Magazine)

Geminiの消費量の一次発表:Measuring the environmental impact of AI inference(Google Cloud Blog)/技術論文(査読前):Measuring the environmental impact of delivering AI at Google Scale(arXiv)

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