ヒーターを入れ替えて1年延命。213億km先のボイジャー2号で実行された「ビッグバン」作戦

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NASAのジェット推進研究所(JPL)が2026年8月4日、深宇宙を飛行中の探査機ボイジャー2号で「ビッグバン」と名付けた電力のやりくりに成功したと発表しました。この操作で電力に余裕が生まれ、いま動いている3台の観測機器を少なくともあと1年、動かし続けられる見通しになったといいます。

ボイジャー2号は1977年の打ち上げからまもなく49年。地球からの距離は約213億kmで、指令の電波が届くまでに片道およそ20時間かかります。そんな遠さと古さの機械を、地上からの設定変更だけで延命させたという話です。

年に4ワットずつ減っていく電源

ボイジャーの電源は、太陽電池ではなく「放射性同位体熱電気転換器(RTG)」という装置です。積んでいるプルトニウムが崩壊するときに出る熱を電気に変える仕組みで、燃料が減るのに合わせて出力も落ちていきます。JPLによると、その減り方は1年あたり約4ワット。打ち上げから半世紀ちかく経ったいま、使える電力はぎりぎりのところまで来ています。

そこでミッションチームは、必須ではない装置を順番に止めて電力をひねり出してきました。ボイジャー2号と1号はそれぞれ10台の観測機器を積んでいますが、惑星探査を終えた段階で不要になったものはとうに止めてあり、さらに2024年以降は電力不足を理由に、両機とも観測機器を2台ずつ停止しています。ボイジャー2号でいま動いているのは、宇宙線サブシステム(CRS)・磁力計(MAG)・プラズマ波サブシステム(PWS)の3台だけです。

そしてJPLによれば、このままなら2026年末までに、ボイジャー2号はさらにもう1台の観測機器を止めなければならないところでした。

止めたのは観測機器ではなく、ヒーターだった

今回の「ビッグバン」で止めたのは、観測機器ではありません。The Registerの取材に対するNASA広報の説明によると、対象になったのはヒーター2つと、もう1つの装置。この装置はヒーターではないものの、出す余熱がちょうどよい場所にあり、近くの本来のヒーターより少ない電力で済むという理由で、代役として点けたままにしてあったものでした。

宇宙空間でヒーターは飾りではありません。電子機器を動作できる温度に保つだけでなく、姿勢を変えるためのスラスター燃料の配管を凍らせないという役目があります。配管が凍れば探査機は向きを変えられず、アンテナを地球に向けることもできなくなります。だからただ切るわけにはいかず、今回はこの3点を止めるのと同時に、機体を(とくに燃料配管を)温めるには足りるがより消費電力の少ない別の3点に切り替える、という入れ替えを一度に行いました。こうした入れ替え自体は過去にもあったものの、NASA広報によれば「たいていは1対1」で、3点同時のスワップは異例だといいます。

指令を送ってから結果が分かるまで、電波の往復だけで40時間ほど。手順を間違えれば取り返しがつかない相手に対して、この入れ替えは成功しました。浮いた電力のおかげで、2026年末に予定されていた観測機器の停止は少なくとも1年先送りになり、3台はそのまま観測を続けられます。

次はボイジャー1号の番

JPLのチームは、今後数か月のうちに、さらに遠くを飛ぶボイジャー1号にも同じ入れ替えを行う計画です。ボイジャー1号は2026年2月に電力が想定外に落ち込むトラブルがあり、4月には低エネルギー荷電粒子観測器(LECP)を停止して、動いている観測機器は2台になっています。The Registerによれば、1号側の「ビッグバン」がうまくいけば、このLECPを再び動かせる可能性もあるとのことです。

2027年には、両機とも打ち上げから50年を迎えます。電源の目減りは止められないので、いつかは通信が途絶える日が来ます。今回の操作は、その日を1年ぶん先へ押しやった、という話です。5年の設計寿命で作られた機械が、半世紀後もまだ「何を止めて何を残すか」を選べる状態にあること自体、当時の設計と、いまの運用チームの両方の仕事だと言えそうです。

出典

今回の操作の概要はJPLの公式ブログ「NASA Engineers Help Prolong Voyager 2’s Science Mission」(2026年8月4日)によります。ヒーター2つと代役の装置1つを入れ替えたという技術的な内訳は、NASA広報の説明を伝えたThe Registerの記事(2026年8月5日)を参照しました。観測機器の稼働状況はNASAのボイジャー公式ページ、地球からの距離と通信時間はCNNの記事(2026年8月6日)によります。距離は変わり続ける値なので、記事公開時点のおよその数字です。

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