中身が同じスマートグラス2機種、片方だけ壊さず開いた——差は接着剤だった

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スマートグラスは、壊れたらそこで終わり。バッテリーが劣化しても交換できず、そのまま電子ごみになる——この分野を追いかけていると、そんな分解レポートばかり目にします。メーカー側の説明はいつも同じで、「小さくて、部品が詰まっていて、防水も必要だから、開けられる構造にはできない」というものです。

ところが最近、修理情報サイトのiFixitが中国市場向けのスマートグラス2機種を分解したところ、この説明を揺るがす結果が出ました。技術系メディアのHackadayが2026年8月9日に紹介した内容をもとに、何が分かったのかを見ていきます。

「小さいから直せない」とされてきたスマートグラス

まず前提から。スマートグラスの修理性については、これまで厳しい評価が続いてきました。iFixitはMetaとRay-Banのディスプレイ付きスマートグラスも過去に分解していますが、筐体は接着剤で固められ、開けるには熱で温めながらこじ開けるしかなく、内蔵バッテリーを無傷で取り出すのはほぼ不可能、という結果でした。Oakley×Metaのモデルでも同様で、ヒンジのネジを外しても中は接着剤とリボンケーブルだらけで、分解はほぼ一方通行の作業になると報告されています。

眼鏡のフレームという細い空間に、チップ、カメラ、スピーカー、プロジェクタ、そしてバッテリーを詰め込むのですから、隙間なく接着して組み上げるしかない——そう言われれば、なんとなく納得してしまう説明ではあります。内蔵のリチウムイオン電池は使わなくても年数で劣化していくので、この作りのままだと、電池が寿命を迎えた時点で本体ごと捨てるしかありません。

中身がほぼ同じ2機種の分解

今回iFixitが分解したのは、中国のRokidのグラスと、アリババ系のAIブランドQuarkのグラスの2機種です(Hackadayの記事では具体的な型番までは示されていません)。

興味深いのは、この2機種の中身がよく似ていたことです。頭脳にあたるSoCはどちらもQualcommのSnapdragon AR1 Gen 1。ストレージは32GBのeMMC。映像はマイクロLEDのプロジェクタで映し出します。電源の作りも共通で、フレームに内蔵したバッテリーに加えて、クリップで外付けするバッテリーパックを併用する二段構えです。ちなみにSnapdragon AR1 Gen 1は、MetaとRay-Banのスマートグラスにも使われているチップです。つまり中身だけ見れば、この2機種は海外の主力製品ともそう変わらない、同じ世代の製品といえます。

接着剤ひとつで正反対になった分解結果

ところが、開けてみると2機種の運命は正反対でした。

Quarkのグラスは、MetaやRay-Banのモデルと大差ない作りでした。熱で温めて工具でこじ開けるしかなく、かなり破壊的な作業になります。一方のRokidのグラスは、ごく軽い接着剤しか使われておらず、壊さずに開けることができました。それだけでなく、内部の部品配置も整理されていて、バッテリーを含めて中まで手が届く、整備しやすい構造になっていたのです。この作りは本体だけでなく、外付けのバッテリーモジュールにまで一貫していました。

同じチップ、同じストレージ、同じ表示方式、似た形の製品。それなのに、片方は壊さないと開かず、片方は普通に開いて中まで整備できる。この対照実験のような結果が示しているのは、スマートグラスが修理できないのは小型化の宿命ではなく、メーカーが設計の段階で選んだ結果だ、ということです。「小さいから無理」という説明に対しては、反例が1つあれば十分。Rokidのグラスがまさにその反例になりました。

EUの規則の「例外」に投げかける疑問

この分解結果は、単なる製品比較にとどまらない意味を持っています。Hackadayの記事が接続しているのが、EUの電池規則の話です。

EUの電池規則では、2027年から機器のバッテリーを使用者が交換できるようにすることが求められます。ところが欧州委員会は2026年7月14日、この取り外し義務に6カテゴリの例外を追加すると発表しました。スマートウォッチ、フィットネストラッカー、ワイヤレスイヤホンといったウェアラブル機器の多くが対象から外れます。小さくて防水が必要な機器に交換式バッテリーを義務づけるのは酷だ、という理屈です。

しかしRokidのグラスの分解結果を見ると、この理屈は怪しくなってきます。眼鏡という、ウェアラブルの中でも特に細くて余裕のない形状ですら、壊さずに開けてバッテリーに手が届く設計は成立していたからです。Hackadayの筆者も、この分解結果や過去のPixel Watch 4、Fairbudsの分解例を踏まえれば、こうしたウェアラブルにも使用者が交換できるバッテリーを義務づけるのは十分妥当に思える、と論じています。

残っている不明点

とはいえ、今回の話には限界もあります。壊さずに開けられることと、実際にバッテリー交換が手順として確立していることは別の話で、交換用バッテリーが部品として入手できるのか、何年後まで供給されるのかは分かっていません。分解しやすい設計でも、交換部品が手に入らなければ結局は直せないままです。また、2機種とも中国市場向けの製品で、価格や日本からの入手性についても今回の記事からは分かりません。iFixitが製品に付けることのある修理しやすさのスコアも、今回は示されていません。

それでも、「スマートグラスは構造上、修理できるようには作れない」という前提が崩れたことの意味は小さくないはずです。捨てるときのことまで考えて設計するかどうかは、メーカーの選択次第。その選択の違いが、製品の寿命をそのまま左右していきます。修理する権利をめぐる議論は、これからも続いていきそうです。

出典・参考リンク

この記事は、以下の記事と発表をもとに書いています(いずれも別タブで開きます)。

The Chinese Smart Glasses Proving That Smart Glasses Can Be Repairable(Hackaday・2026年8月9日)
iFixitによる分解動画(YouTube)
欧州委員会:携帯型電池の取り外し義務への例外追加の発表(2026年7月14日)

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