地上からレーザーを当てて、飛んでいるドローンを充電する——そんな技術の「受け取る側」で、大きな前進がありました。中国民航大学の研究チームが開発した受光装置が、届いたレーザーのエネルギーの38.49%を電気に変換したと報告したのです。同じ条件で動くこの種の装置としては最高水準の数字で、論文は2026年7月29日付でCell Pressの学術誌「Matter & Light」に掲載されました。
効率を押し上げた仕掛けがおもしろいので、順を追って見ていきます。
バッテリーというドローン共通の弱点
農地の見回り、橋やダムの点検、災害現場の捜索。ドローンの活躍の場は広がり続けていますが、どれだけ高性能になっても、バッテリーが切れたら降りるしかないという弱点だけは共通しています。現場によっては、着陸してバッテリーを交換すること自体が危険だったり、そもそも不可能だったりします。
そこで前から研究されてきたのが、地上からレーザー光を当てて空中で給電するという方法です。2023年には中国の西北工業大学が、レーザーで電力を受け取りながら飛び続けるクアッドコプターを実証しています。原理としては可能——それは示されました。ただ、受け取ったレーザーを電気に変える効率が低く、実用にはほど遠い状態でした。今年に入って別の研究チームが、長距離への送電や飛行中のドローンの追尾といった「送る側」の課題を前進させており、残る大きな壁のひとつが「受け取る側」の効率だったわけです。
立ちはだかった80〜90℃の熱
今回のチームが受光装置の心臓部に使ったのは、ペロブスカイトのレーザー電池です。太陽電池が日光を電気に変えるのと同じ理屈で、こちらはレーザーの光に合わせて設計してあります。
問題は熱でした。強いレーザーを当て続けると装置はどんどん熱くなり、サーモカメラで測ると80〜90℃に達していたといいます。責任著者のJianhua Han氏は、予想をはるかに超える温度で、熱の蓄積が想像以上に深刻な問題だと思い知らされた、と振り返っています。熱くなるほど変換効率は落ち、いずれは機体そのものを傷めかねません。レーザーを強くすれば電力は増えるのに、強くするほど熱で効率が落ちる——このジレンマが、レーザー給電の受け取る側に立ちはだかっていました。
捨てていた熱を電気に変える二段構え
チームの答えは、熱を排除するのではなく、熱でも発電してしまうことでした。
ペロブスカイトのレーザー電池の下に、熱電素子——温度差から電気を生み出す部品——を重ねた二段構えの装置にしたのです。一段目のレーザー電池が光から電気を作り、そこで生まれる「廃熱」を二段目の熱電素子が拾って、追加の電気に変える。従来なら捨てるだけだった熱が、効率の上乗せ分になります。
ただし、熱電素子が働くには条件があります。熱い側と冷たい側の温度差が大きいほど発電できるので、装置全体が均一に熱くなってしまっては意味がありません。そこでチームは、装置の中にSb₂Se₃(セレン化アンチモン)のナノ結晶を組み込みました。このナノ結晶は熱を伝えにくい性質があり、熱の流れをせき止める壁として働きます。熱の通り道を制御することで、熱電素子が使える温度差を保ち、長時間レーザーを当て続けても性能が落ちにくくなりました。

プロペラの風を冷却に使う翼の設計
もうひとつの工夫が、機体側にあります。チームは受光装置をドローンの模型の翼の下に取り付け、翼に空気の通り道を彫り込みました。プロペラが回ると下向きの風が生まれ、その風が翼の通り道を抜けて、熱電素子の冷たい側の面を冷やします。
冷却ファンもポンプも追加していません。飛ぶために回すプロペラの風が、そのまま冷却装置を兼ねる。冷えれば温度差が広がって熱電素子の発電も増えるので、飛ぶこと自体が効率を押し上げる設計になっています。実際に緑色レーザーを当てる実験では、装置が生み出した電気で模型のプロペラを回すことに成功し、その風でさらに装置が冷える、という循環が確認されました。冒頭の38.49%という変換効率は、この状態で記録された数字です。
Han氏は、これまでの研究の多くが材料や素子そのものに注目してきたのに対し、自分たちは装置をどう機体に組み込み、飛行中にどう冷やすかという航空機側の視点で考えた、材料科学だけでなくエンジニアリングの問題として捉えた、と説明しています。
残された課題
注意しておきたいのは、この装置はまだ一度も飛んでいないことです。実験はあくまで静止したドローン模型で行われたもので、「空中での充電に成功した」わけではありません。次の段階は、軽量ドローンに搭載しての屋外飛行試験だとチームは述べています。
また、送信側のレーザーの出力や届く距離、実際に飛行時間がどれだけ延びるのかは、今回の発表には含まれていません。動き回るドローンをレーザーで正確に追い続ける技術や、レーザーを空に向けて撃つことの安全性の確保も、チーム自身が今後の課題として挙げています。
Han氏は今回の成果を「光で航空機に燃料を補給する」可能性を示したものと位置づけつつ、1を100にするには多くのエンジニアリング上の課題を解く必要がある、と冷静に語っています。捨てていた熱で発電し、飛ぶ風で自分を冷やす——足し算ではなく再利用で効率を稼いだこの受光装置が、空の上でも同じ数字を出せるのか。屋外試験の続報を待ちたいところです。


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