アンドロメダ銀河で星の誕生が減速中、しかも近年加速——容疑者はすぐ隣にいた

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私たちの天の川銀河のいちばん近くにある大型の銀河、アンドロメダ銀河(M31)で、新しい星が生まれるペースが落ち続けていることが分かった。ハッブル宇宙望遠鏡のデータを使ってワシントン大学などの研究チームが調べたもので、減速は過去5億年にわたって続き、しかも直近の4,000万年でさらに急になっているという。論文は2026年7月27日付で天文学の専門誌The Astrophysical Journalに掲載された。

アンドロメダ銀河は地球から約250万光年の距離にあり、空の暗い場所なら肉眼でも見える。天の川銀河と同じくらいの規模の渦巻銀河で、いわば宇宙のお隣さんだ。この近さのおかげで、銀河の中の星を一つひとつ調べられる、数少ない相手でもある。

星を2億個数えるという方法

今回の研究のやり方は、力技といっていい。研究チームは、ハッブルがアンドロメダを撮影した2つの大規模サーベイ(PHATとPHAST)のデータを組み合わせ、銀河の円盤の約3分の2をカバーする範囲で、およそ2億個の星を個別に測定した。

なぜそこまでするのか。共著者でワシントン大学の天文学者ベン・ウィリアムズ氏は、星は「銀河がどう作られてきたかの化石記録」だからだと説明する。そして、アンドロメダの距離でこの作業をやれるだけの解像度を、十分な広さにわたって出せる望遠鏡は、ハッブルしかないという。

星には、色から年齢の見当をつけられるという性質がある。重い星は青白く輝くが短命で、軽い星は赤っぽく長生きする。だから、青い星が多く残っている場所は最近まで星が生まれていた場所、赤い星ばかりの場所は星作りがとうに終わった場所、と読み取れる。チームはアンドロメダの画像を一辺300光年のマス目に区切り、マス目ごとに星の色の内訳から「いつ、どれだけ星が生まれたか」の履歴を復元していった。銀河全体の家計簿を、マス目単位でさかのぼって付け直したようなものだ。

年に太陽1個分から0.2個分への減速

復元された履歴から出てきた数字は、はっきりしていた。星が生まれるペースは「1年あたり太陽何個分の材料が星になったか」で測るのだが、5億年前のアンドロメダは年におよそ太陽1個分のペースで星を作っていた。それが4,000万年前にはおよそ半分に落ち、現在はおよそ太陽0.2個分にまで下がっている。5億年かけて半分になったあと、直近の4,000万年でさらに半分以下——つまり、落ち方が近年になって加速している。

場所ごとの内訳を見ると、最近の星作りの多くは、銀河の中心から約32,000光年のところに広がるリング状の領域に集中していた。そして今回測られた減速の大部分は、このリングの活動が衰えたことによるものだった。

意外なことに、原因は「材料切れ」ではなさそうだという。星の材料になるガスや塵が急に減った形跡は見つからず、むしろ、かつての活発な時期のあとの自然な鎮静化とみられる。アンドロメダは約20億年前、別の銀河との相互作用か合体がきっかけとみられる星形成の大きなブーストを経験したことが以前の研究で分かっている。筆頭著者でワシントン大学のトビン・ウェイナー氏は、マラソンを走り終えたあとには一息つく必要があるのと同じだ、と表現している。

すぐ隣にいた容疑者M32

ただ、話はそこで終わらなかった。研究チームがもうひとつ調べていたのが、アンドロメダのすぐそばにいる小さな伴銀河(ともに動く子分の銀河)、M32の影響だ。M32は空の上での見かけの位置で、アンドロメダから約16,000光年しか離れていない。銀河の間隔としては、ほとんど密着といっていい近さだ。

そこで、M32に近い側の領域の星形成の履歴を調べてみると、他の領域と比べて星形成が余計に落ち込んでいる兆候が見つかった。しかも、その落ち込みの始まりはおよそ6,000万年前までさかのぼれるという。この「いつから落ち始めたか」という時刻の情報は、M32がアンドロメダの円盤といつ接触したのかを逆算する手がかりになりうる。つまり、星の色から復元した履歴が、隣の銀河との「事件」の起きた時期を絞り込む証拠になるかもしれないのだ。

とはいえ、研究チームは慎重だ。ウェイナー氏は、星形成の低下がM32のせいだと明言することはできない、としたうえで、「でもすぐそこにいるわけで、間違いなく最有力の容疑者だ」と述べている。あくまで容疑者であって、犯人と断定されたわけではない。

残された不確かさと次の望遠鏡

断定できない理由のひとつは、M32の正確な位置が分かっていないことにある。約16,000光年というのはあくまで天球上に投影した見かけの隔たりで、奥行き方向を含めた3次元の位置はまだ不確かだ。そのため、そもそも過去にアンドロメダの円盤と接触したのか、したとすればいつなのかは、はっきりしていない。M32側の落ち込みが偶然の一致である可能性も、今の段階では消しきれない。

チームは今後、ハッブルのデータに地上望遠鏡の観測を組み合わせて、アンドロメダの歴史をさらに掘り下げる計画だ。さらに、NASAの次世代機ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡が、早ければ2026年8月30日に打ち上げられる予定になっている。ローマンは近赤外線で、一度にハッブルの100倍以上の広さを撮影できる。すでにアンドロメダの円盤全体と周囲のハローを撮る観測プログラムが承認されており、数億個規模の星の測定が可能になる見込みだ。円盤の3分の2にとどまった今回の地図が銀河全体に広がれば、隣の銀河に何が起きたのか——そして起きつつあるのか——の答えに、また一歩近づくことになりそうだ。

出典

研究論文(Wainer et al., 2026, The Astrophysical Journal, 1006, 195):https://doi.org/10.3847/1538-4357/ae6db9

NASA(プレスリリース):NASA’s Hubble Shows Star Formation in Andromeda Galaxy Winding Down

Universe Today:Hubble Reveals that Star Formation is Slowing Down in the Andromeda Galaxy

Space.com:The Andromeda galaxy may be getting bullied by a smaller galactic neighbor, scientists find

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