ユークリッド、天の川銀河の中心を史上最大・最詳細に撮影――6000万個超の星

宇宙・天文
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欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「ユークリッド」が、天の川銀河のいちばん混み合った中心部を撮影し、可視光ではこれまでで最大・最も詳細な一枚を作り上げました。写り込んだ星の数は6000万個超。撮影にかかった時間は、わずか26時間ほどです。

天の川銀河の「バルジ」とは

夜空に見える天の川は、私たちがいる円盤状の銀河を内側から眺めた姿です。その中心には、星がぎっしり詰まったふくらみがあります。これがバルジ(bulge)と呼ばれる領域で、だいたい100億個もの星がボールのように集まっているとされます。

ここは星が多すぎて、これまでの望遠鏡では一面が明るく溶け合ってしまい、星を一つひとつ見分けるのが難しい場所でした。まぶしさに目がくらんで、個々の星が埋もれてしまうわけです。今回ユークリッドは、その密集地帯で星を粒として描き分けることに成功しました。

6000万個の星と、51の惑星系

ESAが2026年6月24日に公開したこの画像には、6000万個を超える星に加えて、星のあいだに漂うガスの雲(星雲)や、若い星の集まり(星団)まで写っています。可視光で撮られた天の川中心部の画像としては、過去最大の高解像度写真です。

さらに、この一枚のなかには、すでに知られている51の惑星系が収まっています。系外惑星(太陽系の外にある惑星)の研究にとって、この領域を一望できる画像はそのまま「宝の地図」になります。つまり、ただ美しいだけの記念写真ではなく、惑星探しの基盤データとして使える点が、この画像の本当の価値です。

たった26時間で撮った一枚

意外なのは、撮影にかけた時間の短さです。ユークリッドは2025年3月23日、この中心部に向けて望遠鏡を9回少しずつずらしながら撮影し、合計でおよそ26時間――1日とちょっと――でこの巨大なモザイク画像を組み上げました。1回ぶんの撮影範囲だけでも、満月より広い空をカバーしています。

ユークリッドの可視光カメラの鋭さは、ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラに近い水準です。違いは「写せる広さ」で、1回の撮影でハッブルの約270倍もの広さを一度に収められます。地上の大型望遠鏡であるケック望遠鏡で同じ範囲を撮ろうとすれば、約2000時間かかる計算だといいます。短い観測時間で、これだけ広く・細かく写せるのがユークリッドの強みです。

なお、観測を安定させるため今回は可視光カメラだけを使っており、元の画像は白黒です。公開用に色を添えるため、地上にあるカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)のデータが重ねられています。

「重力レンズ」で惑星をあぶり出す

ESAがこの混雑地帯をあえて狙ったのには、はっきりした理由があります。マイクロレンズ(重力マイクロレンズ)という現象を使った惑星探しに、ここがうってつけだからです。

手前の星が、遠くの星のちょうど前を通りかかると、手前の星の重力が空間をゆがめ、遠くの星の光を一時的に明るく見せる――これがマイクロレンズです。もし手前の星に惑星がついていれば、その明るさの変化にごく小さな乱れが加わります。この乱れを手がかりに、惑星の存在を探り当てられます。

この方法は、過去20年で約300個の系外惑星を見つけてきた実績があり、そのほとんどが地上の望遠鏡による、銀河中心方向の観測でした。今回のユークリッドの画像は、その舞台を宇宙からまるごと押さえた、という位置づけになります。

未来の惑星探しの「過去の基準」になる

マイクロレンズで新しい惑星を見つけるには、ふつう同じ星を20日以上にわたって見張る必要があります。だから26時間の撮影だけで新しい惑星が次々見つかるわけではありません。では何の役に立つのか――答えは「時間の基準点」です。

ユークリッドは、これから近く打ち上げ予定のNASAの宇宙望遠鏡「ローマン」が惑星探しに使う領域を、この一枚でそっくり収めています。将来ローマンがこの空でマイクロレンズを捉えたとき、研究者は「星が重なる前はどう見えていたか」をユークリッドの画像でさかのぼって確認できます。星を一つひとつ見分けられるユークリッドなら、星の動く速さを測り、惑星の存在や重さまで確かめる足がかりになります。1回だけの観測ではできない芸当です。

ユークリッドはもともと、宇宙の大部分を占めるとされる暗黒物質や暗黒エネルギーの謎に挑むために、2023年に打ち上げられた望遠鏡です。本来は遠くの銀河を数十億個も観測する任務を持つ機体が、その実力を銀河系のいちばん明るい中心部にも向けられることを示した、というのが今回のニュースの面白さでもあります。

解釈上の留意点

この画像が撮影されたのは2025年3月で、公開が2026年6月という時間差があります。また、前述のとおり26時間の観測そのものから新しい惑星が見つかったわけではなく、今後の探索を支える基盤データだという点は押さえておくとよいでしょう。色についても、ユークリッドが可視光で捉えた情報に地上望遠鏡のデータを足して仕上げたものです。

出典

※高解像度の画像は、ESAの「ESASky」で拡大して見られます。

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