恐竜の話を読んでいると、三畳紀、ジュラ紀、白亜紀という言葉が当たり前のように出てきます。ただ、この「紀」が地球の歴史全体のどのあたりを指すのか、前後に何があったのかとなると、意外と全体像はつかみにくいものです。
この記事では、地球が生まれた約46億年前から現在までの時代区分を、ひとつずつ順番にたどります。それぞれの時代に何が起きたのかをおさえておくと、恐竜や化石のニュースを読むときの解像度がぐっと上がります。
地質年代の区分の仕組み
地球の歴史の時代区分は「地質年代」と呼ばれ、国際層序委員会(ICS)という組織が世界共通の年表として管理しています。大きな区分が「代(だい)」で、その中がさらに「紀(き)」に分かれる入れ子構造です。たとえばジュラ紀は、中生代という代の中のひとつの紀、という位置づけになります。
ここで面白いのは、この区切りが「何年ごと」といった機械的なものではないことです。区分の境目は、地層に残された化石の顔ぶれががらりと変わる場所に引かれています。つまり年表の区切りの多くは、生き物の大規模な入れ替わり——大量絶滅——の跡なのです。このことは、あとで各時代を見ていくとよく分かります。

先カンブリア時代(約46億年前〜約5億3900万年前)
地球誕生から約5億3900万年前までの、じつに40億年以上を占める長い時代です。地球の歴史の約9割はここに入りますが、硬い殻や骨を持つ生き物がまだいなかったため、化石がほとんど残っていません。それで細かい区分がしにくく、ひとまとめに「先カンブリア時代」と呼ばれています。
内訳は古いほうから、冥王代(めいおうだい)、太古代(始生代)、原生代の3つ。冥王代は地球がまだ溶けた岩の玉だったような時代で、太古代に最初の生命が海に現れます。原生代の終わりごろには、エディアカラ生物群と呼ばれる、やわらかい体の不思議な生き物たちが海に広がっていました。
古生代(約5億3900万年前〜約2億5200万年前)
硬い殻や骨を持つ生き物が一気に増え、化石が豊富に残るようになった時代です。ここから現在までを「顕生代(けんせいだい)=生き物の姿がはっきり見える時代」と呼び、古生代はその最初の章にあたります。6つの紀に分かれます。
カンブリア紀(約5億3900万年前〜約4億8700万年前)
「カンブリア爆発」の名で知られる、動物の体の基本設計が出そろった時代です。目を持ち、殻をまとい、泳ぎ回る動物たちが短期間に一斉に現れました。三葉虫が登場するのもこの時代です。

オルドビス紀(約4億8700万年前〜約4億4300万年前)
海の生き物がさらに多様になり、サンゴ礁のような生態系も発達しました。ただし末期には地球が急激に寒冷化し、海の生き物の多くが姿を消す大量絶滅が起きます。「五大絶滅」と呼ばれる大きな絶滅イベントの、最初のひとつです。
シルル紀(約4億4300万年前〜約4億1900万年前)
生命の歴史の大きな転機、植物の陸上進出が本格化した時代です。それまで岩だらけだった陸地に、初めて緑が広がり始めました。あごを持つ魚が現れたのもこのころです。
デボン紀(約4億1900万年前〜約3億5900万年前)
「魚の時代」と呼ばれるほど魚類が栄えた時代です。そしてその魚の中から、ヒレを足のように使って陸に上がる仲間——両生類の祖先が現れます。私たち陸上脊椎動物の歴史は、ここから始まりました。末期にはふたたび大量絶滅が起きています。
石炭紀(約3億5900万年前〜約2億9900万年前)
巨大なシダ植物の大森林が陸を覆った時代です。この森が埋もれてできたのが、名前の由来にもなった石炭です。当時は空気中の酸素濃度が現在より高く、翼を広げると70センチ近いトンボのような巨大昆虫が飛んでいました。爬虫類が登場したのもこの時代です。
ペルム紀(約2億9900万年前〜約2億5200万年前)
古い教科書では「二畳紀」とも呼ばれた、古生代最後の紀です。大陸がひとつに集まって超大陸パンゲアができました。そして末期、地球史上最大の大量絶滅が起きます。海の生物種の9割以上が消えたとされる規模で、古生代はここで幕を閉じました。原因としては、シベリアでの超巨大火山活動が有力視されています。
中生代(約2億5200万年前〜6600万年前)
恐竜の時代としておなじみの中生代は、3つの紀に分かれます。始まりも終わりも大量絶滅で区切られている、というのがポイントです。
三畳紀(約2億5200万年前〜約2億100万年前)
ペルム紀末の大絶滅でがら空きになった世界に、新しい顔ぶれが現れた時代です。最初の恐竜と、私たち哺乳類の祖先が、ほぼ同じ時代にそろって登場しました。ただしこの時点の恐竜はまだ脇役で、体も小さめです。末期にまた大量絶滅が起き、競争相手だった他の爬虫類グループの多くが姿を消しました。
ジュラ紀(約2億100万年前〜約1億4300万年前)
三畳紀末の絶滅を生き延びた恐竜が、空いた席を埋めるように大型化し、地上の主役に躍り出た時代です。首の長い巨大な竜脚類が闊歩(かっぽ)し、空には翼竜が飛び、「最初の鳥」として有名な始祖鳥が現れたのもジュラ紀の終わりごろです。
白亜紀(約1億4300万年前〜6600万年前)
恐竜の全盛期です。ティラノサウルスやトリケラトプスが生きていたのは、この白亜紀の一番最後の時期にあたります。花を咲かせる植物(被子植物)が広がったのもこの時代でした。そして6600万年前、直径10キロほどの小惑星がメキシコのユカタン半島沖に衝突し、鳥をのぞく恐竜は絶滅します。中生代もここで終わりました。
新生代(6600万年前〜現在)
恐竜なきあとの世界で、哺乳類が主役に躍り出た時代です。私たちはいまこの新生代を生きています。3つの紀に分かれます。
古第三紀(6600万年前〜約2300万年前)
小惑星衝突後の空白を、小さな哺乳類たちが埋めていった時代です。クジラの祖先が海に戻り、霊長類の祖先が樹上で暮らし始めるなど、現在の哺乳類につながる系統がほぼ出そろいました。
新第三紀(約2300万年前〜約258万年前)
気候が徐々に乾燥し、森が減って草原が広がった時代です。その草原に合わせてウマやゾウの仲間が進化し、アフリカでは類人猿から分かれた初期の人類が二本足で歩き始めました。
第四紀(約258万年前〜現在)
氷期と間氷期(氷期の合間の温暖な時期)を何度も繰り返してきた、寒暖の激しい時代です。マンモスのような氷期の動物たちが栄え、そしてホモ・サピエンスが現れました。地質年代の上では、現在もこの第四紀のただ中にあります。
いまも動き続ける境界の年代
ここまで並べてきた「〜億年前」という数字は、じつは固定されたものではありません。岩石の年代測定の精度が上がるたびに、ICSの年表は改訂され続けています。たとえば白亜紀の始まりは、少し前まで「約1億4500万年前」とされていましたが、最新の年表では約1億4300万年前に見直されました。カンブリア紀の始まりも、5億4100万年前から5億3900万年前へと動いています。
日本に関わる話題もあります。第四紀の中の一区分に、2020年、千葉県の地層をもとに「チバニアン(千葉時代)」という名前が正式についたのです。約77万4000年前から約12万9000年前までの時代で、地質年代の名前に日本の地名が採用されたのはこれが初めてでした。46億年の年表は完成品ではなく、いまも書き換えられ続けている現在進行形の地図なのです。
出典
国際層序委員会(ICS)の最新の国際年代層序表は、stratigraphy.orgで公開されています。本文中の境界年代はこのチャート(2024年12月版)に基づいています。


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